278 / 296
第3章
「生きてるって感じ」
しおりを挟む老若男女、関係なく。
とにかく楽しそう。
オレの世界にも飲み会とかはあったけど、それは友達同士とか、学校の何かの集まり、とかそういうのがほとんどで、こんな風に、町の人達で、なんて無かった。もしかしたら田舎だとあるのかなあ? オレそこそこ都会に住んでたから、正直、アパートなんて、隣の人の顔も良く分かんない。あの場所で会ったら、挨拶くらいしたけど、もしかして、別の場所で会ったら顔分かんないかも。その程度の付き合い。
別に悪いと思ってはいなかった。
皆自分の生活があって、時間もバラバラで、会わないし、しょうがない。……しょうがないとすら思ってなかった。そういうものだって。
こっちの世界に来て、なんだかすごく楽しそうに笑う人達を見てたら。
こういうのも、いいなあ、とすごく思う。
その中心にいつも、ルカ達が居て、なんだかすごいなあって思って。
まあでも、これを都会でやるっていうのがそもそも無理な話なのは分かってるけど。
こういう方が、生きてるって感じがするような。
こんな、どこなのかも良く分からない世界で、より生きてるって感じるとか、それもまた謎なのだけど。
「お兄さん、名前は?」
「ソラ」
蒼空、だけどね。本当は。水森 蒼空。みずもりそら。
苗字がない世界。言っても、変な顔をされるから言わないけど。二文字で名乗るのも慣れてきたなあ。
「ソラ、一緒に踊ろう?」
「え、踊れないけど」
「弾むだけでもいいよ?」
ダンスをしてた女の子に誘われて右手を取られて、どうしようと思っていると、隣にいたリアに、「いいねー行こう、ソラ」と左手を取られた。つまり、両腕、女の子に取られて、連れ去られる感じ。
踊るー?! 無理―! いやだいやだと言いながらも、女の子を振り解けないまま。
「ソラ、頑張れ」
「おおーいいぞー」
キースとゴウが、面白そうに笑いながら声をかけてくる。
で、ルカはというと。今回も一人、一番のおもてなし席に座らされてる。まあ、もういっぱいの人に囲まれて、次から次にと酌をされてる。
キースやゴウの周りにも、女の子たちがたくさん群がってるけど、やっぱりルカが一番人気。女の子だけじゃなくて、めちゃくちゃたくさん。まあ。王子だもんね……王子さまが町のために魔物退治して回ってくれてるんだもんな。
感謝もするし、人気もあって当然だよね。うんうん。
別にね、常に女の子たちがずーっとまとわりついてるからって、オレは別にむかむかなんてしないもんね。気にしないもんね。
とか言ってる自分も今、そういえば、女の子にひっぱられてて、何やらダンスなんか一緒にさせられてますけど。
はっ。これ、ルカ怒るかな?
と思ったけど、今はルカはオレの方は見てない気がする。大丈夫そうかな。と変な心配をしながら、少しテーブルから離れた、皆が踊ってるところに連れていかれる。
最初はダンスって何って思ってたけど、楽器に合わせて、体を動かすだけみたいで、少し頑張ってると、なんかそれっぽく見えてきたような?
「おーうまいじゃん、ソラ」
アランが戻ってきて、どうやらお魚を刺身にしてきたみたい。
でっかい刺身の皿を持って、オレの近くで足を止めた。
「あ、アラン、お帰りー」
「なんか酔っ払ってない?」
「え? そう?」
「飲んで踊ったら、まわるぞ? そんな強くないんだし」
「確かに。……そういえばちょっとお酒まわってるかも」
言われてみると、ふわふわしてるような気もする。
「やめといたら? んで、刺身食えよ、この魚うまいから」
「うん、食べるー。リア、抜けるねー」
楽しそうに踊ってるリアに言ってからそこを離れて、アランが刺身を置いたところに一緒に座った。
73
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる