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第3章

「ズルすぎる」

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 ちゅ。
 ゆっくり、ゆっくり、重ねる。
 触れるだけ。

 ルカは動かないけど。……触れてる唇が、ふ、と緩むのが分かる。
 なんか。……笑ってるし。

 少し離れて、微笑んでるルカの顔を見つめてから、そのまままた角度を変えて、重ねる。

 男にこんなキスしてること、日本に居た時のオレが知ったら、何て言うかなあ。
 頭おかしくなったのかーとか。慌てて言いそう……。
 少し笑ってしまいそうになったので、舌でぺろ、と唇に触れてみる。

 ルカの手が動こうとしたので、ちら、と顔を見る。

「動いちゃだめ」
 む、と少し睨むと、ルカは苦笑い。

 柔らかくキスして、離して、また重ねる。

 ルカのキスは、重なるとすぐ、激しくなっちゃうから。
 たまにはこういう方がいいな……。

 ルカの唇に触れるか触れないかのところで、す、と唇をなぞった。
 あ。
 なんかこれ、ぞく、とする。かも。少しだけ触れてる感が、なんか……。
 思った瞬間。

「……っん、……ッ」

 後頭部にルカの手がかかって、それに力がこもる。ルカに押し付けられるみたいにされて、深く舌が絡んでくる。そのまま体勢を変えられて、ルカに組み敷かれる。

 息、苦しいのだけど。
 ……なんか……ぞく、として、もっと、ちゃんとしたいかもと思った瞬間にこれだから。

 そう思ったの、バレたのかな。

「……ん、ふ…………」

 にしても。
 ……激しすぎ。

 やっと離れた唇が、首筋に触れると、ぞく、と震える体。

「……寝かせてやろうと思ってたんだけど」
「――――……」

「抱く」
 そんな風に短く言うと、ルカは邪魔そうに上の服を脱ぎ捨てた。

 寝かせてやろうと、思ってたんだ。
 ……だよね、今日、めちゃくちゃ、したもんね……。

 熱くて大きな手が、胸に直に入ってくる。

「……ルカって」
「ん?」

「……できない時、無いの?」
「なんだその質問」

 ものすごい苦笑して。

「無いな。とりあえずお前に関しては」
 と笑う。

 ……絶対嘘だ。
 別にオレじゃなくたって、絶対、いつでも誰とでも、できちゃう人だ。
 そういう欲すげー強いと思うし。はーやだやだ……。

「……何考えてんの、お前」

 クスクス笑いながら一度胸から手が離れて、代わりに脇に入ってきた手に体を引き上げられて、ぽふっと枕に頭を沈めさせられる。
 上にルカが居て、また、頬に触れ直すと。
 何だか、首の後ろ、ぞく、としたものが走る。

「別にオレ、いつも誰とでもシてた訳じゃねーぞ?」
「……」

「相手は選んでたし。……敵かもっつー、リスクも考えてたし」
「……それはそうなんだろうけど」

「ソラが相手だと、ただ気持ちいいしかねえから」
「――――……」

 ふ、と笑ってるルカを見上げて、ちょっと黙ってから。

「……オレ、のこと……他の世界の奴だから、信じられるから、なの?」
「ん?」
「オレだって、敵かもしんないじゃん……」
「ソラが?敵?」

 何を聞きたいんだか。 
 自分でも良く分かんないけど。そんな風に聞いてみていた。

 ……オレが、他の世界の奴だから、ルカが、安心して抱けるから。
 だから抱く?……だけ?とか。
  

「……ソラが敵なら……まあ、殺されてもいいかな」
「……つか、何それ」

「さあ。……今そう思っただけ」
「いいの?」

「良くはねえけど。お前が敵ならいいよ。殺されてやっても」
「……いいわけないじゃん。皆困るし」

 なんかあんまりな返答に、もともと何が聞きたかったかもわからないんだけど。
 ……なんか、じっと、ルカを見つめる。


「ソラならいいかな、と思っただけ」
「――――……よくないし」

 何だか泣きそうな気分になって、睨むと、ルカは、ふっと笑った。


「お前が、大事ってことだと思うけど?」
「……そんな言い方されても良く分かんないし……」

 むむ、と睨んでると、ルカは笑いながら、オレの顎を掴んだ。


「他の世界の奴が、何人来たって、少しもこんな風には思わねーよ」

 言いながら、なんだかもう胸がいっぱいになってるオレに、深く、唇を重ねてきた。


 なんかずるい。殺されてやってもいい、とか。ずるすぎ。

 絶対本気じゃないのは分かってる。
 なんだかんだ、魔王を倒すっていうのはちゃんとやるつもりなんだろうし。
 オレなんかにやられてる場合じゃないだろうしさ。そんなの分かってるけど。

 そう思いながらも。


「――――……ん……」


 ……あーあ。ずるい。ルカ。
 何も考えずに言う言葉が、ずるいんだよ。もう。



 ぎゅ、と抱きついた。








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