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第3章

「イチコロ」

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 オレが呆然と見守る中。
 風が波を吹き上げて、次々と噴水みたいに立ち上る。

「わ……」

 水の柱がいくつもできていって、どんどん大きく吹き上げられていく。白い水しぶきが、空を舞って、空中で踊る。
   
 もう圧巻。
    日本で噴水ショーとかを見たことあったけど、それは基本、下から上、だし。今は、風が自由に動いてるから、それとは全然違う。

 最後にめちゃくちゃ、大きな噴水が空高く立ち上って、それが落ちてきたら、すごい水しぶきが上がりそう、と思った瞬間。それが、シュパ、と音を立てて、粉々に。……雫というよりも、霧みたいな、すごく細かいものになって、それが、ぱらぱらと、舞う。

 肌に触れて、すこし涼しい程度。水と認識できないような感じの細かい霧みたいで、それによって、月がぼやけてすごく大きく見えて、星も同じく。
 なんだか、キラキラの霧の中で、光って見える。

「綺麗ー」

 リアが楽しそうに言う声に、はっと気づく。
 あんまりに見惚れてて、声も出なかった。

 キラキラは風に吹かれて、静かに消えた。


「――――……」

 うわー……と思う。
    なんか、びっくりしすぎて、それ以外の感想が出てこないままルカを見上げると。ルカは、ふ、と笑んだ。

「……好きか?」

 ……なんかすごく悔しい。
 カッコいいって思ってしまったし。

 …………ルカのくせに、やってることロマンチックすぎて。なんかよく分かんないけど、悔しい。
 ルカのくせに。エロエロなルカのくせに。

 ……と思うのだけど。

「……うん」

 思わず頷くと。
 ふ、とまた優しく笑う。

 ……胸。痛いんですけど。マジで。

 ずるくない? ……オレの人生で、もう絶対、こんなことしてくれる人、現れないじゃん。なんか、色々普通じゃ無さ過ぎて。……ほんとずるい。ルカ。

「いいなー今の。女の子とかにやったらイチコロだよね。オレも風の魔法、覚えよっかな?」

 アランが感心したように言ってて、皆が笑いだす。

「女じゃなくても、イチコロみてーだけど?」

 ゴウが言ったのを聞いて、少し後、「ん?」と振り返る。
 もしかしてオレのこと?とゴウと目が合うと、皆がまた笑い出して。


「もー、可愛いなぁ、ソラ」

 リアにも可笑しそうにクスクス笑われて。
 オレは、むくれながら、隣のずる過ぎる王子を、ちょっと睨むと。

「初めてやったけどな」

 そう言って、笑うルカ。

 ……オレに見せたのが初めてってこと?

 そんなダメ押しで、きゅんとする気持ちを押しつけてくるルカに、なんだかな、と。
 ちょっと照れくさすぎて、むむ、と見つめてしまう。






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