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第3章

「ルカなのに」

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 この世界は、こうすべきって決まりがあんまりない気がする。
 自由だなあ……。
 ……やっぱり、ルカがトップにいるからか。トップの人間がこれだけアバウトで自由だと、こうなるのか。

 寄っかかったままの、ルカを、じっと見上げてると。ぷ、と笑いながら、ルカに顔をブニブニつぶされる。

 やめてよ、と戦ってる横で、アランが立ち上がった。

「町の皆、海の様子に気づいたかな」

 アランがそう言いながら少し歩いて、船の端から、静かな海を見下ろした。
 それから、町がある方を見て、目を細める。

「やっと漁に出れるな……」

 短い一言だったけれど、アランや町の人達の心がすごくこもってる気がして何も答えられなくて、その後ろ姿をじっと見つめていると。アランがくるっと振り返って、皆を順番に見つめていって、最後にルカのところで視線を止めた。

「……本当に、ありがとう。戦ってくれて」

 珍しく真剣なアランに、ルカも皆も、静かに顔を綻ばせる。

「……つっても、アランが船を出したから、来れたしな?」

 ルカの言葉に、オレがルカを見上げてると。

「あんな海に、船を出してくれて、感謝してる」

 ルカのその言葉を聞いて、心底びっくりしてるオレの前で、ルカとアランが、ニヤ、と笑い合ってる。

「まあ、かなり嫌々だったけどね」
「普通は出せないだろ、あんな海に。……お前だから、来れたしな」


 ……つか、ルカが、感謝してる、とか言ってる……!

 なんだなんだ、そんなこと、言えるの?

 しかも、いつもふざけてあってる、アランと。 

 なんだか、海が静かで、月も星も海もキラキラ綺麗な中、言葉までもとても綺麗に響いて、ちょっと感動しちゃうけど。……でもルカだし。ルカなのに。


「……で、お前は、何でそんなアホな顔してる訳?」

 不意にルカがオレの顔を両手で挟み、見下ろしてくる。

「だ……だって」
「だって?」

「ルカが、なんか、すごくまともなこと言ってて……」
「……はー? お前……」

「わー、ごめんー、ついー」

 不快そうな返事をしたルカに、オレが焦ってると、皆が笑い出した。

「ルカはたまにはちゃんと王子なんだよー、ソラ」
「そうそう、たまにはねー」
「だから皆ついてくってとこもあるしな」

 リアとキースとゴウが可笑しそうに笑いながら、そう言ってくる。

 そういわれれば……確かに、そんなシーンもちょこちょこ見てきてるような。

 ……あの、急遽参加した結婚式の時も、ルカ、カッコよかったっけ。
 ちゃんと、上の人……そんな感じがしたっけ。

「結婚式、綺麗だったなぁ……花びらがヒラヒラして」
「……ああいうの、好きか?」
「嫌いな人、居る? めちゃくちゃ綺麗だった」

 そう言うと、ルカはクスッと笑って、寄っかかってたオレを抱き上げながら立ち上がった。

「ソラ、来いよ」
「ん?」

 手を引かれて、そのまま、アランの隣まで。つまり、船の端まで連れられて、手すりに手をかける。

「何??」

 綺麗な海を見つめてから、隣のルカを見上げて聞くと、「よく見てろよ?」とルカが笑った。

「うん……?」

 頷いて、ルカを見つめる。


 オレの目の前で、ルカが手を上げて、呪文を唱えた瞬間。
 ヒュ、と風が鋭く駆け抜けていった。

 




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