262 / 296
第3章
「結界って」
しおりを挟む色々作ったものをみんなで甲板に運んで、テーブルもない地べたに置いて、直に座って、真っ黒な空の綺麗すぎる星を見ながら、食べる。景色がいいと、余計美味しい気がする。
日本に居たら、多分絶対やってなかったこと。オレ、船で海なんて出たことないし。ていうか、こんなに星、見えないし。……ほんと、ここ、綺麗。
……一番大きく違うのは。
もはやオレ、違和感全くなく、でっかいルカに寄りかかって座るのが定位置になってる気がすること。
こんなこと、日本で誰か男にやってたら、なんて言われるか。……っつか、絶対やらないけど。
こっちに来て、しばらくルカと過ごしていたら、大分マヒしてきてる。まあそもそも、ルカと一緒に寝て色んなことされてる時点で、もはやオレの中に、日本に居たオレとは、全然違うオレが居る訳なんだけど。
「……なんだ?」
オレが寄っかかっていても平気な顔して座ってて、ご機嫌な感じのルカを振り仰ぐと、笑いながら見下ろしてくる。
「なんでもない……」
「何だよ?」
前に戻した顔に触れられて、ルカの顔を振り仰がされる。
「……なんでもないってば。重くないのかなーって思っただけ」
「重くはない」
ふ、と笑いながら、頬にキスされる。
「……っ」
よく考えると、めちゃくちゃ恥ずかしいことをされてる気がして、頬にキスされたのを認識した瞬間、かあっと熱が顔に集まるのだけれど、周りの皆は、今更ほっぺにキスされてるくらいじゃ全然なんともないというか、とにかくスルーだし。キスし終えたルカも、またふっと瞳を緩めて、頬をなぞっただけで、手を離して普通の顔して、お酒とか飲んじゃってるし。
一人うろたえて赤くなってて、バカみたいな気がしてくる。
……いやでも、オレの方が普通だと思うのだけれど。
胸元の服をつまんでパタパタ風を起こして顔を冷ましていると、さっき、何かがよぎったのを思い出した。
オレを運んだ奴なんて、居るのだろうかってやつ。
……何かがよぎって、それからなんとなく気持ち悪くてしょうがない。
居るとしたら。神様ってやつかな……?
異世界に転生したって話、いっぱい読んどけばよかったな。そしたら、もっと何か、理由とか考え付いたような気がするのに。
手首の飾りを見て、これに結界かあ、と考える。
結界って、何にも感じないから、どうなってるのかとか全然分からない。
でも前に、ルカとオレが初めて会った日の夜、とんでもないことされて騒いでたオレの声を聞かないように結界張ったとか、皆も言ってたから……バリアみたいなものだよね、きっと。それくらいのものなら、結構張れる人居るみたいだけど……。
……ルカの張れる結界はすごく広い範囲だしいくつも張れるし。って感じみたいで。
すごいよなあ。勇者……。
「ねね、ルカ?」
「ん?」
「結界て、いつから張れたの?」
「……なんかソラ、結界にものすごい拘ってるか?」
クスクス笑いながら、ルカがアランと顔を見合わせてる。
だってなんか気になる。
オレを運んだ奴が居るなら、それから見えないように、とか言ってたけど、そんなの居るかも分かんないし結界がきくかも分かんないのに、ルカはオレと自分を繋げて一応隠してるみたいなこと言うし。そう考えるのが、すごく不思議。
……オレがやってたRPGにあった結界は、魔物から町を守れるっていうそういう設定だったはず。
魔物と、それを生み出せる、魔王だけ。
そもそも何、オレを運んだ奴って。異世界から来た奴なんか、あのゲーム、居たのかな? もしかしてオレが行かなかったところにそういうエピソードがあったとか……?
……んーでも、なんかオレ、そこまで設定とかちゃんと読んでないしー!
ああ、オレのバカ。
もっとちゃんと、色々読めば良かった。攻略サイトとかももっと使って、すみからすみまで……あ、でもオレ結構、回ったはず……??
……でもそもそも、こことゲームの世界は、ちょっと違うから、それやってても意味なかったかな……。うーん。分からないー……。
「なに悩んでんだよ?」
ルカがオレの悩んでる顔を見て、めちゃくちゃ面白そうに笑ってくる。
55
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる