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第3章
「空が綺麗」
しおりを挟むベッドで目覚めて、ルカに色々食べさせてもらった後、部屋を出て甲板に上がった。
「あ、おかえりー」
一番にリアがオレに気づいて、そう言う。
「お疲れー」
ゴウのセリフには、一瞬、お疲れって……と微妙なものを感じながら、とりあえずキースやアランの顔も見ながら、ただいまーと返した。
すっごく寝てた気がするんだけど、まだ空は少し明るくて。
薄暗くなり始め、というのか。紫やオレンジや黄色、たくさんの色が混ざった空を見上げながら、なんとなく、船の壁に寄りかかって座った。
「すっごいきれー、空」
言うと、リアが、そうだよね、と笑う。
昨日まで、天気良くなかったもんな。魔物のせいだったのかな。
初めて、こんなに、綺麗な空見れたなあ……と、ぼー--っとしてると。
遠くから、ほよほよとしたものが飛んでくる。
「あ。ミウだ」
リアも気づいて、クスクス笑う。
「ソラが居なくなってから、どっか行ってたのに。分かったのかな、戻ったの」
あ、居なくなってたんだ、なんて思いながら。
ゆっくり飛んで来て、オレの腕の中に入ってくるミウを、抱き締めた。
「どこ行ってたの?」
……聞いても、返事は返ってはこないのだけれど。
でも、嬉しそうな顔をして腕の中に居るから、もうとにかく可愛くてしょうがない。
「ルカは?」
聞かれて、「お酒取りに行っただけだから、すぐ来るよ」と答えたところに、ルカが現れた。
当たり前みたいに、オレの隣にきて、すぐ近くに座る。
「……どした?」
ううん、と首を振りつつ。
なんとなく、ふ、と笑んでしまう。
ミウが腕の中に居て、ルカが隣に居て、その周りに、皆が居て。
それにすごく慣れてる自分が、やっぱり今でも不思議。しかも、こんなでっかい船に乗って、海のどまんなかみたいなところに浮かんでる。
なんか皆、いつもより静か。
海のど真ん中の船の上に座ってると、空しか見えなくてかなり圧倒される。
なんとなく皆もそうみたいで。
静かで、穏やかな時間が流れる。
「……だんだん暗くなってきて、星も出てきたな……」
アランがそんな風に言って、ルカとオレに視線を向けた。
「お前ら昼食べてないし、早めに夕飯にする?」
「つーか、お前らも飲んでただけだろ?」
ルカが笑いながらそう言うと、まあそうだけど、とアランが笑う。
「誰かさんたちがなかなか帰ってこないからなんとなく、ここに居続けちゃったんだよなー?」
ゴウのセリフに、オレが詰まってると、ルカは苦笑い。
「意外と早かったろ?」
「早くはねーし」
ゴウに突っ込まれて、ルカは可笑しそうに笑ってる。
「ソラ、酒飲みたいか? もう飲んでもいいぞ」
とか言ってくる。もう飲んでもいいって……苦笑いになっちゃうけど。
「ごはん食べてからにする」
「悪酔いしそうか?」
「うん、なんかそんな気が……アラン、ご飯、そろそろつくる?」
「そうだな。何か作るか」
そう言われて、立ち上がる。
「作ってくるね」
ルカに言うと、ルカは、ん、と頷く。
「手伝おうか?」
リアがそう言うので、アランを見ると、アランはにっこり笑って。
「そんな大したもの作んねーから大丈夫。運んでほしい時、呼ぶ」
「ん、分かったー」
そのやり取りのあと、ミウをほわ、と空中に飛ばしてから、オレはアランと下に降りた。
「体平気なの?」
「……平気だってば」
「ルカって激しそうだもんなー」
クスクス笑われる。
……確かに。
……オレは男とは経験ないけど。……オレが男として女の子としてたよりは確実に大幅に、激しすぎる……。
…………オレとルカを比べるのがそもそも間違ってるのかな。
オレは草食系? でもまあちょっとは興味ある系……? なんだそれ。
……でもって、ルカは……超がつく肉食系、だよな……。
うん。
比べる対象にするのが間違ってる。うんうん。
「ぷ」
知らず頷いてると、アランが笑い出す。
「なに、激しいってことに頷いてンの?」
「ち、ちがうし!!」
いや、違うってこともないんだけど、今、オレはそれに頷いた訳じゃないしっっ!!
アランの前で、ブンブン手を振ってると、アランは面白そうに笑う。
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