上 下
257 / 299
第2章

誓い*ルカside 4/4

しおりを挟む
 
  
 ベッドの上で、開いた脚の間にソラがぺたんと座っていてなんとなくオレに寄りかかったまま。食べ物を近づけると、ぱく、と食べる。

「雛みたいだな……」
 クスクス笑いながら、頭を撫でると、ソラはちら、とオレを見る。

「……自分で食べてもいいなら食べるんだけど」
 なんて言いながら、むぅ、と口を尖らす。

「なんだそれ?」
「……ルカはオレに食べさせたいんでしょ?」
「まあ、そうだな」
「……そうだなって……良くわかんないけどさ」
 くす、とソラが笑う。

「人に食べさせてもらうなんて、もう長いこと無かったよ、オレ」
「だろうな」

「……何でルカはオレの口にぽいぽい入れてくるのか不思議なんだけど」
「――――……」

「慣れてきてる自分が怖い……」
 そんな風に言って笑うソラに、ふ、と苦笑い。

「他の奴に食わされるなよ」

 その言葉に、ソラは少し驚いた顔で、オレを見上げてくる。

「ある訳ないじゃん。ていうか、普通の人は、二十歳の男に、食べさせたりしないからね」
「――――……分かんねえだろ、そんなの」
「分かるってば……」

 オレは甘い実を自分の口に放り込んで、そのまま、ソラの腕を引いた。

「――――……」
 オレを見上げたソラに唇を重ねて、その実を、ソラの口に移す。

「ん、ン……?」
 中に何か入ってきたことを知ったソラが、不思議そうな声を出して、それを受け取った。少し唇を離すと、しゃり、と実を噛む音。
 そのまま、もう一度ソラの唇を塞いで、舌を絡める。

「……んん……、ふ……っ……?」

 口に入ってた実を、ごく、と飲み込みながら、ソラが少し問うようにオレを見上げてる。このまま続けないよね?とでも言いたいんだろうが。
 ソラの後頭部を手で押さえて、オレの方に引き寄せて、深く口づける。

「……っん、ぅ…………ん……ン……ッ」

 ……ソラの頭は小さい。手の平に収まる感じ。ふわふわした髪の毛に触れると、気持ちいい。キスをしていると、頭と一緒に触れてる項が、すぐに熱くなって、汗ばんでいく。

 ――――……可愛い。

「……っ……は……」

 そっと離すと、涙目のソラが、オレを見上げてくる。

「……オレとキスするの、好き?」
「――――……好きだけど……食べてる時はやだ」

 むっとしながら言ったのがそれ。
 好きだけど。に気を良くして、オレは、ソラの頭を撫でる。

「食べていいよ」
 トレイを差し出してソラの膝に乗せると、頷いてつまみ出す。しばらく黙って食べてたソラがやっと落ち着いたのか、ふとオレを振り返った。

「……なんかね、ルカ。オレ、寝て起きたらさ」
「ん」
「ほんとに倒せてよかったなって実感した」
「今実感したのか?」
 そう聞くと、ソラはオレを見上げて、苦笑い。

「うん、今。なんか……現実感、無くて。あの戦い、夢みたいでさ」
「――――……」

「寝て起きて、あ、もうあの魔物の心配しなくていいんだーと思って。実感した気がする」
「そんなに心配してたのか?」

「……だってさ、魔法も効きにくいし、どうやって倒すんだろうって。皆に何かあったらどうしようって、やっぱり、思うじゃん」
「――――……」

「でももう、良いんだって思って」
「まあ、まだ魔王が居るけどな」

 オレが言うと、ソラは、ふ、と苦笑い。

「そうなんだけどさ……とりあえず、良かった。海の上とかって戦いにくいだろうしさ」
「――――……ソラは、魔王も知ってるって言ってたよな」
「……え? あ。……うん。まあ。見たことはある」

 その言葉に色々考える。
 この世界の誰も、多分オレ達以外は魔王を見ていない。
 ソラは、作り物の世界で見たことがあると言ってた。

 ――――……つくりもの。ねえ。

 ……まあ。
 分かんねえこと考えても、しょうがねえな。


「ソラ」
「ん?」

「城に戻ったら、結婚式するか」
「えっ」

「考えとけ」
「えっ??? 本気????」


 死ぬほど驚いたみたいな顔してるのが可愛くて。
 その髪をまたよしよしと撫でる。


 ――――……どんな理由でソラがここに来たんだとしても。
 魔王さえ倒したら、側に居れることを最優先に考える。

 細かいことは、その都度、考えれば。
 ……まあそれでいいだろ。

 
 清々しいほど割り切ってる自分が、なんだか可笑しくて、クッと笑ってしまうと、ソラは自分が笑われてると思ったらしく、「からかってんの?」と怒り出す。


「結婚式、本気で言ってる」
「絶対嘘だ、笑ってるしー! びっくりして損したっていうか。オレまだ保留だしっ」

 ぷんぷん怒って、騒いでる。

「オレはもう決めてるし、本気だって」

 笑いながらソラを抱き締めて。
 また改めて、誓った。

 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...