252 / 299
第2章
「ずるいと思う」
しおりを挟むあの後、シャワーで綺麗に流してから、タオルでざっと拭かれて、抱き上げられた。
「ソラ」
散々感じさせられた体は、もう全部、ぽわぽわ上気してるみたいな感覚で。
頭はふわふわ浮いてるみたいな。
「ん……?」
ぼんやりと、オレを呼んだルカを見つめると。
一本立てた指をくるんと動かしながら、ルカが何か唱えた。……と思ったら。ふわりと吹いた温かい風が髪を包んで。風が通りすぎた時には、もうオレの髪の毛は乾いていた。
「……うわ。ほんとすごい……」
楽しすぎる。
「……オレ、その魔法使いたいなあ……」
「風と火の魔法どっちも使って、しかも燃やさないように加減して、だからなあ。相当難しいぞ?」
クスクス笑いながらルカが言う。
「そうなんだ……加減しないと、髪の毛、燃えちゃうの?」
「火だからな」
「あはは。チリチリんなったら面白いねー」
「笑いごとか?」
ルカが可笑しそうに笑いながら、オレを見る。
「あ、オレのはやだ。やるならルカの髪で、ちりちりを再現してよう」
「……ちりちりっつうか、燃えるぞ?」
「う。……怖いね、この魔法。ルカは失敗しないの?」
「しない」
可笑しそうに笑いながら、ルカがオレを見下ろす。
「失敗するかもしれないようなもの、お前にかける訳ないだろ」
あ、また。さらっと、そういう。
オレを大事にしてそうなことを、さらさらっと言っちゃうんだ、ルカは。あんまりそういうの言ってることは、自覚してない気がするけど。
抱き上げてたオレを、ベッドの上に、そっと降ろす。
タオルを一応巻いてたけど、オレもルカも全裸なので……正気に返ってる今は、結構恥ずかしい。
しかも今、真昼間だし。なんか余計、気持ち的に、恥ずかしいような……。
ルカもベッドの上に腰かける。
「……ルカは、髪、乾かさないの?」
「別にオレは気になんねえけど」
……濡れてるルカ、カッコいいからまあ。そのままでもいいけど。
とか、考えて、ハッと気づく。
何言ってんだ、オレってば。
相当、ルカのこと好きになってる気がしてきたような……。
うう。恥ずい。
「来いよ、ソラ」
腕を引かれて、抱き寄せられる。
「……また、するの?」
「ん……けど少し、休憩な。お前、飛びそうだから」
「飛びそう?」
「意識、飛びそう」
クスクス笑いながら、そんなことを言うルカに、ちゅ、と頬に口づけられた。後ろから腕が回されて、ルカの脚の上に座らされる。
「――――……」
密着感が、すごい。
「……なんかさ、ルカに言いたいことがあるんだけど、オレ」
そう言うと、まだ何も言ってないのに、ルカは、クッと笑い出す。
「何で笑うの」
「……また面白いこと言いそうだから」
「まだ分かんないじゃん!」
「……まあそうだな。いいぜ、言ってみな?」
言ってみな、とか言われちゃうとそんな大した話じゃないんだけど。
「なんかさぁ。シてる時さ?」
「ん」
「……オレばっかり、ぐちゃぐちゃで、なんか、すごく、嫌なんだけど」
そう言うと、ルカは、しばらく無言で。
何かを考えていたみたいなんだけど、ふ、と吹き出したみたいな笑い方をするので、キッと後ろを睨む。
「何で笑うの!」
「……だって、お前……確かにぐちゃぐちゃになってるなと思ったのと……」
「何??」
んー、とルカはまた少し考えてから。
「……ソラばっかりぐちゃぐちゃで、としたら、じゃあオレはなんだって感じな訳?」
「――――……なんか、ルカは……」
「ん、オレは?」
……何なんだろう。ルカはね。
…………とにかくオレは、ぐちゃぐちゃにされてるのは、よく分かるんだよ。涙すごいし、汗もすごいし、ずっとイってるみたいで、あっちもヤバいし……。
「ルカは、なんか……しれっとしてて。カッコイイまんまって言うかさ……」
「――――……」
「……多分、ルカはシてる時に覗かれても、別に困らないというかさ」
「――――……」
「オレは、絶対誰にも見られたくないもん、ぐちゃぐちゃだから」
「――――……」
「……だからさあ、ずるいと思うんだけど!」
ルカの返事がなかったけど、とりあえず全部言い終えるところまで、言ってみた。
すると。腕を掴まれたと思ったら、くるん、とひっくり返された。座ってるルカに抱き寄せられる、オレはルカの上に座らされて、ルカと真正面で向かい合った。
「――――……」
裸でこれは、結構恥ずかしい……。黙ってると、ルカの右手がオレの顎を掴んで、頬まで、ぶに、とつまむ。必然的に口がとんがってる感じにさせられる。
「オレが余裕で、しれっとして見えてんの?」
「……見えてるっていうか、そうでしょ? 見た目全然変わらないしさ、ルカはいつものルカのままでさ。ちょっと息が速い位? ずるいと思うんだよね」
喋りづらいけど、何とかそう言うと。ルカは、苦笑い。
「お前、自分がいっぱいいっぱいで、オレのことなんて、見てないんだろうな?」
ルカはクスクス笑って、そんな風に言う。
92
お気に入りに追加
4,705
あなたにおすすめの小説
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
異世界で騎士団寮長になりまして
円山ゆに
BL
⭐︎ 書籍発売‼︎2023年1月16日頃から順次出荷予定⭐︎溺愛系異世界ファンタジーB L⭐︎
天涯孤独の20歳、蒼太(そうた)は大の貧乏で節約の鬼。ある日、転がる500円玉を追いかけて迷い込んだ先は異世界・ライン王国だった。
王立第二騎士団団長レオナードと副団長のリアに助けられた蒼太は、彼らの提案で騎士団寮の寮長として雇われることに。
異世界で一から節約生活をしようと意気込む蒼太だったが、なんと寮長は騎士団団長と婚姻関係を結ぶ決まりがあるという。さらにレオナードとリアは同じ一人を生涯の伴侶とする契りを結んでいた。
「つ、つまり僕は二人と結婚するってこと?」
「「そういうこと」」
グイグイ迫ってくる二人のイケメン騎士に振り回されながらも寮長の仕事をこなす蒼太だったが、次第に二人に惹かれていく。
一方、王国の首都では不穏な空気が流れていた。
やがて明かされる寮長のもう一つの役割と、蒼太が異世界にきた理由とは。
二人の騎士に溺愛される節約男子の異世界ファンタジーB Lです!
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる