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第2章

「キスしたい」※

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 部屋に戻って、二人きりになると、ルカが少し雰囲気が違う、

「潮でベタベタしてるから、シャワー、浴びるぞ?」
「……ん」

 ルカは普通に話してる筈なのに。どうしてか、濡れたみたいな、声に聞こえる。
 ……熱っぽく、聞こえて。
 つられて、心臓が、鼓動が、どんどん速くなっていってしまう。

 バスルームで降ろされて、短パンをはいたままでシャワーが掛けられて、流される。確かに、ベタベタしてたから、すごくすっきり。

 シャワーを浴びたまま、ルカに抱き寄せられて、上向かされる。
 ちゅ、とキスされて、ふ、と笑われる。

「……なんかすげえ、お預けくらってた気分」
「…………っ」

 ……ていうか、昨日、したかんね。お預けなんて、してないに等しいからね。と、とっさに浮かぶのだけれど。

 でも、そう言われて少し考えると、オレだって、ルカとずっと、キスしたかったなとも思ったりする。

 ルカが魔物の中から戻ってきて、皆が先にキッチンの方に降りて行った時だって、オレはキスしたかったのに。
 その気になるからキスできないなんて、よく分からないことを言われて、キスしてもらえなかったし。

「……キスしたい」
「ソラ?」

「キス、してよ……」

 抱かれたいというよりは、まず、キスされたい。
 なんか、今、すごくそんな気分で、ルカを見上げた。

「……は。珍しいな」

 ルカはそう言うと、面白そうに瞳を細めて、オレの唇に、指で触れて、なぞる。

「何? キスしてほしかったのか?」
「うん」

「……したいなら、たまにはお前からしろよ」

 クス、と笑って、ルカがそんな風に言ってくる。

 たまにはって……。ああ、でも、そっか。してないか。
 ……言われた時しか、してない。今も結局言われてする感じだけど。

 ルカに唇を寄せて、触れ合わせる。唇を開いて、舌で、ルカの口に、触れる。
 唇の間で、少し笑うルカの手がオレの背に触れて、ぐい、と、引き寄せる。


「……ン……」

 ルカは、今は、受けるだけにしたみたい。

 舌が触れてるのは、気持ちいいけど。
 いつもみたいに息もできない位に激しいキスは、オレからは難しくて、なんだかすごくもどかしい。

「ん、ん」

 ルカの背に、ぎゅうとしがみついて、上向いてキスを続ける。
 


 ルカの舌、熱い。

 ――――……触れてると、ルカ、生きててよかったって、心底思う。


 ルカは、オレが危なくないように、とか。オレを守る、とか。助ける、とか。
 いっつも、そんなようなことを言ってばかりだけど。


「……ンん、ふ……っ」

 もどかしすぎて、声が漏れる。
 背中にまわしていた手を、ルカの首にかけて、ぎゅ、としがみついて、引き寄せる。


 いつもいつも、ルカがオレを助ける、みたいなことばかり、言うけど。


「……ル、カ……」

 
 オレだって、ルカのことも皆のことも。守りたいって思うし、助けたいって思ってる。
 得体のしれないオレを受け入れて、大事にしてくれる皆のこと、大好きだし。
 ルカのことは。……特別、大好きで。

 だから、オレは、本当は、守り合うような関係が、いい。
 危ない時は、オレも助けたい。

 そんなこと、考えながら、頑張ってキス、してたけど。
 もどかしさが限界。

「……も、やだ。ちゃんとして」

 少し唇を離して、ルカにそう言うと。

「――――……」
 ルカは、ふ、と微笑んで。

「頑張ったな」

 クスクス笑うと、ルカの手がオレの後頭部に掛かって、強く押さえつけられた。
 そのまま唇が重なってきて、深く合わさる。

「ん、んッ……」

 もどかしくて漏れてた声とは、違う。
 息が奪われて、ルカの舌が口の中を自由に動くと、ぞくん、としたものが、体を走る。

 オレのキスとは全然違う。

「……んっ……ぅ、ん……」

 舌を絡めとられて、ルカに甘く噛まれると、ふる、と体が震えてしまう。

 きもちいい。はあ、と漏れる息が、熱すぎる。
 がく、と膝から力が抜けたけど、ルカは余裕でオレを支えた。

「……まだキスしか、してないだろ?」
 濡れたみたいな、笑いを含んだ声で囁かれて。そのまままた、唇を塞がれる。ぞく、とますます煽られる。

 ああ、なんかもう。
 ルカのキス、気持ちいい。

 シャワーの熱気にもあてられて、頭の芯が、ぼうっと、しびれてくみたい。




 
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