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第2章
「運ばれる」
しおりを挟む「ていうかさ」
ぶー、と膨らんで、オレはルカを睨んだ。
「ルカがどーなってるか分かんないってことくらいちゃんと分かってたし、オレ……」
「ほんとか? じゃあ何で来たんだよ。危ないだろ」
「……っだから、危ないから、行ったんじゃん。ルカが、そのまま危ないとこに居るなんて、そんなの無理だったから行ったんだよ」
もうほんとにムカついてきて、はっきりそう言うと、ルカはちょっと黙った。
「危ないから来るなとかの話じゃないもん。危ないからこそ行ったんだからね。行かなかったら、ルカが死んじゃうのかなとか、中でさ、強烈な胃液とかで溶けちゃってたらどうしようとかさ、もうほんと、心配だったんだからね!!」
「だから、そんな危ないと思うとこに、お前に来てほしくないって、オレは言って……」
「だってあの時、剣もオレが持ってたし、行くしかないって思うじゃん! ミウ、オレのことならきっと、ルカのとこに運んでくれるって思ったし。他の人を運んでくれるかとか、試してる暇なかったし」
ルカは、オレの勢いに引いてるのか、何も言わないけど。
皆も、なんだかちょっと笑いながら、見守ってて、何も言わない。
……ああもう、なんか、さっきの気持ち思い出してきちゃったじゃん。
……なんか、泣きそうになってきた。
ルカが、噛まれて怪我してて、生きてるけど死にそうだったら、とか。
胃液とかヤバくて、入ったらすぐ溶けちゃうとかだったら、どうしようとか。
あの時、頭に浮かべないようにしてたけど、遠いとこで、どんな消そうと思っても、よぎってたそれが、ほんとに怖くて。
ルカにもう、触れなくなったら、どうしようって思った時の、気持ち。
うる、と涙が滲んでしまって、唇をちょっと噛んで、少し俯いた瞬間。
「……リア、ミウ頼む」
オレの膝の上からミウを抱えあげて、ほい、とリアに渡したと思ったら。
ルカがオレをひょい、と肩に抱えあげて、立ち上がった。
「ぅわ……」
「……夕方……いや、夜には戻る」
そんなことを言ったルカに、皆が苦笑いして、はいはい、みたいな返事をしてるのが、分かる。
……夕方って!! ……ていうか、言い直して、夜って!!
遅い朝ごはんを食べてから、ちょっと海で遊んで、すこし飲んでだけの今なのに。夜……。
「ソラ。もう行くぞ?」
「――――……」
何で聞くんだ。いつも、基本、無理無理連れてくのに。
「もういいよな?」
じっと見つめられて。
なんかそのルカの向こう側に見える皆は、もう勝手にやってて的な顔で、笑ってるし。
オレは、もう。
…………声には出さず。少しだけ、頷いた。
「OK。じゃーな」
ルカが皆にそう言って、オレを抱いたまま、甲板から階段を下った。
なんかもう。
オレは、抵抗する気も無くて。
ルカに少し、捕まって、運ばれてた。
……この運ばれるっていうだけだって。
ここに来るまで無かったことだなーと、ぼんやり、思いながら。
こんな人、居なかったもんな。
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