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第2章

「とっても不満」

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 頬に触れた手はすぐに離れていって、ルカはまた皆と話し出した。

「――――……」

 ルカは、隣に座ってる時、いっつも、なんかくっついてる。
 どっかが触れあってるというか。
 何なら、後ろからちょっと抱きかかえられてるみたいな、支えられてるみたいな感じで座らされるというか。

 ……今まで、こんな風にされたこと、生きてて一度も無い。

 ……あ、もしかしたら、子供の頃、母さんとかには、そうされてたかも。とは思わなくもないけど。
 大人になってからは、ない。
 そうだ、ちょうど小さい子を、支えて座ってる時とかにするような感じな気もする。

 ルカがなんかでっかいから、寄りかかっても全然びくともしないし、なんか。
 今も、ルカが膝を立てて、その膝に背中がくっついてるみたいな感じ。
 しかもルカは、さっき海に入ったま、裸だし。

 ほんとだったら、こんな座り方は、ありえないのになあ……。

 甘いお酒をちょっとずつ飲みながら。
 ……なんとなく、背中に触れてるルカの体温が、安心する。とか。
 なんとなく、ルカと居れば、全部大丈夫なんじゃないかと、思う、とか。

 あれれ? 酔ってるかな、オレ。


「ソラが、ルカのとこ行くって言った時は、驚いた」

 ゴウが面白そうに言う。
 あぁ。……さっきの話か。

「誰も止めなかったのか?」

 ルカが、そんな風に聞いてる。

「最初は止めたよ」
「どうやっていくんだっつー話だったしな?」

 キースとゴウが苦笑い。

「でもミウにつれてってもらうって言うし……」

 リアも、オレとミウを見て、クスクス笑う。

「そういえばアランは知ってたの? あの時、何も言わなかったから」

 リアに聞かれて、アランは、ん、と笑う。

「前ルカと話してる時、ルカが突然消えたんだよ。さすがにびっくりしてさ。そしたら戻ってきたルカがさぁ。ミウに、ソラのピンチにオレを呼べって言ってたら、本当に呼ばれたって、笑ってて」
「そういう大事そうなところは、言っといてほしいよね」

 キースが苦笑いで、ルカを見る。

「あぁ、悪い。つか、まさかあんなことになって、ソラがそんなことするとか、かけらも思ってなかったし」

 ルカは、オレとミウを見て、ふ、と笑う。

「オレがソラがピンチの所に呼ばれる位のことだと思ってたから、そんな急いで説明しとこうとか思ってなかった」

 ルカはそんな風に言うと、オレの頭をクシャクシャ撫でてくる。


「ソラが飛んで来た時は、ほんと驚いた」
「……バカって言われたよね。危ないだろって」

「当たり前だろ。あん中がどーなってるかも分かんねえし、オレが中でどうなってるかも分かんねえんだから」

 呆れたようにそんな風に言うルカに、リアが、「バカって言われちゃったの? ソラ。可哀想に」と苦笑い。

 されを聞いてたキースが、「あ、でも」と話し始める。

「それはさ。ルカは生きてると思うって、オレがソラに言ったからっていうのがあるからね?」
「ん?」

 ルカがキースを見て、少し首をかしげる。

「だからさ、ルカがあの時もう食べられて死んでたら、船の結界も外れてる筈だから、まだ今は大丈夫、てソラに言ったんだよ。……まあ、ソラがパニック起こしたら困るから、安心させようと思っただけなんだけど。でもそれを言ったから、ソラはルカのところに行くって決めたんだと思うよ。完全に無謀に言ったんじゃないよ?」

「それにしたって、オレがどうなってるか、分かんないだろ? 辛うじて生きてるだけかもしれないし。なのに、あんなとこに飛んで来るとか。つか、お前らも来させるとか……もしこの先またあったら、もう少し考えろよな?」

 ……とか。ルカは言うのだけど。

 ……何だかオレはとってもとっても、不満だったりする。



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