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第2章

「カラフルな魚たち」

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 めちゃくちゃウキウキしながら着替えかけて、下着をはくのか少し考える。
 結局下着ははかずにズボンをはいた。海パンみたいな感覚だから、下着無くていいよね。……なんか変な感じだけど。上は脱いで、薄い、羽織るだけの服を着た。

「ミウ、おいでー」
 呼ぶと、フワフワと浮かんでついてくる。
 急いで甲板に戻ると、ルカがもう短いズボンと上半身裸になっててオレに視線を向けた。皆で何かを囲んでいるので、そこに近づく。

「何してるの?」
 覗き込むと、ビニールで出来てるボートみたいなものが置いてあった。

「わあ、何、ボート?」
「ボートの上からも海中は見えると思うよ」

 準備をしてくれながら、アランがオレを見て、そんな風に言って笑う。

「ここらの海に、人を食べるやつはあんま来ないと思うけど……まあさっきまで荒れてたから、変なの居たら困るし、ルカから離れんなよ?」
「うん、離れない」

 怖いから絶対、離れません。
 うんうんと頷いて即答してると、ルカが横で笑ってる。

 空気を入れ終えると、船の手すりとボートを長いロープで繋げてから、ボートを海に降ろした。

「ソラ来い」

 ルカの側に行くと抱き上げられて、そのまま、ふわ、と浮かぶ。

 浮かぶ能力、というよりは、風に乗る、ていう感じで、風が周りを吹き抜けてく感じ。……この時の、ルカの風は、すごく心地よい。

 すと、とボートの上に降ろしてもらうと、船に居る皆がこっちを見下ろしてくる。

「ソラ、楽しんどいでー」
 リアが笑いながらそう言って、皆と一緒に手を振ってる。うん、と手を振り返してると、ルカが「ソラ、見てみろよ」と言って、海を指した。
 何々?と、ボートの端から、海を覗き込んでみる。

「うわー……すごい、綺麗」

 なんか、綺麗な色の魚がいっぱい居る。
 紫とか黄色とか、ピンクとか。

「泳いでみるか?」
「うんうん!!」

 ルカは一応持ってきてたらしい剣をボートに置くと、先に海のなかに入った。

「少し待ってろよ」
「うん」

 少し息を吸うと、海の中に沈んでいった。
 ふわふわ浮かびながらオレのところに降りてきたミウと、待つこと数秒。
 ざば、とルカが顔を出した。

「変なの居ねえから、大丈夫。来ていいぞ」
「うん!」

 羽織ってた服を脱いでから、ふとミウを見上げる。

「ミウも泳ぐ??」
「泳げる気がしねえけどな」

 ルカが笑いながらそう答えてくる。
 まあ……確かにそんな気も……。

「じゃミウ、泳ぎたかったらおいでね」
 よしよしと頭を撫でた後、オレはルカの近くから、海に入った。

 少し冷たいけど、心地いい感じ。
 ミウは水には入らずに、頭の上をフワフワ浮いてる。

「少し寒いか?」
「大丈夫! 潜ってもいい?」
「ああ。ついてくからいいぞ、好きな方行って」
「うん」

 すう、と息を吸って、海に潜る。
 目の前、澄んだ水の中に、色とりどりの魚。

 すっごいすっごいすっごい、綺麗!!

 しばらく泳いで進むけど、息がもたなくなったところで、上に。
 ルカも一緒に上がってきた。ミウが、オレ達が顔を出したところまで、フワフワ飛んでくる。

 何度か呼吸をしてから、オレはルカを見つめた。

「すっごいめちゃくちゃ綺麗だね」
「ああ。……って、ソラの世界の海は違うのか?」

 ふ、とルカが笑いながら聞いてくる。

「綺麗なとこもあるけど……魚の色が、全然違う。こんなに色ついてないんだよね」
「ふうん? 何色なんだ?」
「んーと、灰色かなあ? あ、でも綺麗な色の魚も居るんだけどね、もっと小さくてさ、すごい可愛くてさ。こんなでっかい魚がカラフルとか……」

 沖縄の海なんかを想像しながら話していたら、ふと頬にルカの手がかかって。ん? と思っていたら、ルカが近づいてきて、キスされる。

「――――……なに?」
「いや? 楽しそうで可愛いから」
 
 しれっとそんなことを言うルカに、ちょっとムッとする。

「……キス、しないって言ったじゃん、さっき」
「ああ……さすがに海ん中で、軽くしたキスじゃ、その気にはならないって」

 クスクス笑いながら、ルカはオレの頬をぷに、とつまむ。

「それとも、お前がその気になるか?」
「……っ……ならないし……!」

 すぐ近くから見つめられて、むっとしてちよっと睨むと、ルカは可笑しそうに笑う。

「もう一回行くか?」
「……ん、行く」

 頷いて、息を吸って、また海に潜る。

 ――――……その気になる、とかじゃないけど。

 ……キス。されないと思って油断してるところにされると、ものすごいドキドキしてしまうというか。なんだかな、もう。 

 海の水が冷たくて、良かった。




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