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第2章
「キスしない」
しおりを挟むもう少しだけ、くっついてたいとか。
初めて思ったかも。でもって、初めて言っちゃったかも。
「――――……」
ルカって、あったかい。
……さっき、もう、会えなくなるかと、思った。
ルカが、食べられちゃったのかと思った時。
もう、触れられないのかと。
「んだよ、ソラ?」
ルカが笑いながら、オレをきつく抱き締めてくれる。
「そんな怖かったのか?」
クスクス笑いながらも、今回は馬鹿にしたりしてる感じじゃなくて。
ひたすら優しくしてくれてるだけみたいで。
多分ルカは、オレが、魔物とか戦いが怖かったと思ってるんだと思うけど。
もちろん、そっちも、かなり怖かったけど……。
一番怖かったのは。もうルカに会えないかと、思った時だった。
――――…… よかった……。
ルカの心臓の音に、涙が滲んで。
――――……オレは、ぎゅ、と目をつむって、ルカに抱き付いた。
めちゃくちゃヨシヨシと頭を撫でられる。
そこでふと、気付く。
なんか、やっぱり今はキスしないんだなぁ?
なんか今までだったら、絶対めちゃくちゃキスされそうなのに。
「――――……」
ふ、と少し離れて、ルカを見上げる。
「ん?」
ルカがオレを見下ろすけれど。
やっぱり、キスはしてこない。
むしろ、いつもより、今したいんだけどなあ。
そう思って、ぷー、と思わず膨らんでいると、ルカがふ、と笑った。
「何だよ?」
「……キス、しないの?」
「――――……」
「いつもめちゃくちゃするのに、どうして、今しないの?」
思わず、聞いてしまったら。
ルカが、ちょっと眉を寄せた。
「……今キスしたら、収まりつかなそうだから」
「――――……え」
「……オレ、今めちゃくちゃお前、抱きたいんだよ、分かるか?」
「――――……」
「でも、ソラ、まだ色々衝撃抜けて無さそうだし。……朝飯、食べさせてやりたいと思うし」
「…………」
「だから、今は、キスしてないっつーのに」
ルカの手が頬に触れて、オレの唇を親指がなぞる。
「いつも言わねえのに、何でこんな我慢してる時に、んなこと言うわけ?」
「――――……」
そんなこと言われたって。
だっていつもは否応なくめちゃくちゃキスされてるから言わないんであって、今はルカがキスを我慢してるからオレが変に感じて聞いたんだから。……何でも何もないし、今ルカが言ってることが、そもそもおかしいと思うんだけど。
……キスしたら、我慢できないから、キスしないとか……。
そんなこと、言われちゃうと……なんか……。
「……」
今、オレが、このままルカにキスしたら。
またいつもみたいに、めちゃくちゃ、気持ちいいキスをされて。
きっと、そのままベッドに連れていかれて。そしたらきっと、すぐ服脱がされて、ルカも、脱いで。めちゃくちゃ、熱い、体に、乗られて……。
その一連の流れが、頭に浮かんで。
何だか、ぞく、と背筋に何かが、走る。
「――――……」
うわ……。こんなこと、想像したの、初めてかも。
……される方の立場の、想像なんて。
「戦いの後って、なんか気分盛り上がっちまうから……離せなくなったら困るだろ」
ルカの手が、ぽふぽふ、とオレの頭を撫でる。
「後でな?」
あくまで、キス、しないんだってことに、苦笑い。
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