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第2章

「怖かった」

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 ミウと一緒にルカの上に転がってるのも何か変だなと気づいて、ルカの上からどいて、甲板の上に直接仰向けで転がった。

 すごく、静か。
 青い空と――――……静かな波の音。


「――――……さっきまでの天気が、嘘みたいだね」
「だな」

 ルカの笑み交じりの声。

「眩しくて見れなかったんだけど……さっきのどうやって倒したの?」
「魔法の力、全部乗っけて、斬っただけ」
「何であんなに、光ったの?」

 そう聞くと、ルカは、寝転がったまま、オレに視線を向けて、笑う。
 
「さあ?……力が乗りすぎた? 構えてた時から、剣が光ってた」
「……風の魔法、使った?」

「ああ。……飛ばされそうだった?」
「うん。でも、ミウが助けてくれた」

 そう言うと、ルカは、勢いをつけて、体を起こした。
 つられて、オレも皆も、起き上がった。
 
「ソラとミウ――――……今回は、助かった」

 ふ、と笑んで、オレとミウを、よしよし、と撫でる。
 でももともと、ルカが捕まったのは、オレを庇ったせいだけど……と、ちらりと頭をかすめたけれど。
 ルカや皆の笑顔を見てたら、それは言わなくてもいいのかなと思って。

 うん、と頷いた。


「よし――――……アラン、元気か?」
「もちろん。元気」

「腹減った! 朝飯!」
「了解」

 アランが一番に立ち上がって、次々に皆も立ち上がる。

 目の前のルカが立ち上がった状態で、オレを見下ろして。

 ――――……なんか。
 ……ムカつく気もするけど。

 ……やっぱり、カッコいいなあ、ルカ。
 
 オレの目の前で、マントが揺れてるのを、見上げて、そんな風に思ってると。


「ソラ、ほら」

 笑顔のルカに、手を差し出された。
 ミウを腕に抱っこしたまま、片手でそれを掴んで、オレも普通に立ち上がろうと、したんだけど――――……。

 普通に立ち上がったと思った脚から、力がかくん、と抜けて。
 崩れそうになったところを、ルカに抱き留められた。

「ソラ? どした?」

 間近で、じっと見下ろされる。

「――――……あの……」

 なんか。足、おかしい。

「――――……足が……」
「……立てねえの?」


「……なんか、すっごく……怖かった、なあと思ったら……」

 今更ながら、オレ、あんなでかい、良く分かんないものに狙われたり。
 あんなもののお腹の中に、飛び込むような真似をしたり。

 ……正直、最後の、ルカの攻撃の衝撃と、あの魔物の叫びとかだけだって。
 死ぬほど、怖かったなあ、なんて思ったら。

 手が冷たくなって、今更の冷や汗。

「うわー何これ……」

 皆が集まってきて、オレの状態を把握して、笑い出す。

「さっきは、カッコよかったのになあソラ?」

 ゴウが大笑いしてる。

「やばかったら置いてっていいよなんて言ってたよね」
「ルカのとこに居るから大丈夫、とかも言ってた」 

 キースもリアも、クスクス笑うし。
 
「大丈夫、ソラ、飯はオレが作ってやるから。座ってろ座ってろ」

 アランが楽しそうに笑ってそんな風に言う。

「――――……ソラ、お前、そんなこと言ったのか?」

 皆の言ってることを聞いたルカに、まじまじと見下ろされる。

「ルカが言ってたからだよ。……だって、ルカとオレが中から出れなくて、皆も外でやられちゃったら、困るし……」

 そう言うと、なんだか皆は、クスクス笑って。
 オレの頭を順番に、ぽんぽんぽんぽん、と撫でてから、下に降りて行った。


「ミウおいでー」

 リアの声がすると、ミウはオレの腕の中から抜け出して飛んで行って、皆と一緒に下に消えていった。


 あれれ。皆居なくなっちゃったな。


 皆が居なくなった階段の方を見ていると。
 支えてくれてた腕が、より強く回って、オレを引き寄せた。


「?」

 別に嫌じゃないけど、ん? とルカを見上げると。
 ルカは、オレをまっすぐ見つめていた。


 


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