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第2章
「おかえり」
しおりを挟む「ソラ、先に戻ってろ」
「え」
「斬ったら、どうなるか分からないし、危ねえから」
「――――……」
一緒に居たい、と思ったけど。
……何かあった時、オレを守りながら、ルカが怪我したりしたら、困るとも、思った。
「ルカ、一人の方が……自分を守れるんだよね?」
「――――……そうだな」
ルカが、ふ、と笑う。
「何があっても、絶対戻るから、大丈夫だ。待ってろよ」
ルカのまっすぐで、強い瞳。
素直に、それを信じられて。オレは、頷いた。
「すぐ、来てね」
「ああ」
ルカの手が、オレの頭を、くしゃくしゃ撫でる。
一瞬。泣きそうに、なるけど。なんとか、堪えた。
「ミウ」
ルカが、ミウを見上げて、まっすぐ見つめた。
「ソラを連れて、皆の所に戻れ」
ミウは、じっとルカを見つめて。
それから、みゃ、と言って。瞬間、また、さっきの不思議な感覚。
次の瞬間にはもう、オレは、甲板の上で。
「……っとと……」
何とか、転がらないで、着地。
皆が、突然降ってきたオレに、「ソラ!」と呼びかける。
「今、ルカが――――……」
言った瞬間だった。
急に、パアッとあたりがすごく光って。
それが、デカい魔物の、中からだってことが、分かった時にはもう、ものすごい風と共に、叫び声みたいなのと、音がして。
オレは風に飛ばされて、転がりそうになった時、急に、ふわりと浮いた。
ミウが飛んできて、オレの腕に収まる。ミウの結界の中に入れられたみたいで。何の衝撃も、風も、受けない。
うわ、すご……。
抱き締めてるミウを見つめてしまう。
「これ、ルカか?」
風を避けて、皆がそれぞれ、ちゃんと隠れてて。そこから、ゴウが叫ぶ。
「派手だよね」
「ルカらしいけど」
キースと、横にいるアランも、笑いながらそう言って。
「きゃー、何この風!」
リアの声が聞こえた次の瞬間には、リアも、オレと一緒に、ミウの結界に入ってきて、ほっと一息。
その時だった。
ますます眩しい光が起こって、目が開けていられなくて、ぎゅ、とつむって。
何秒か。
――――……ふ、と静かになった。
「――――……っ」
恐る恐る、目を開けると。
嵐みたいだった空が、瞬間的に、晴れていって。
今度の眩しさは、空の、太陽のもので。
「――――……」
太陽の光、逆光になってて、影しか見えなかったけど。
空中から、すとん、と甲板に、降り立ったのは。
「――――……ルカ……!」
ミウを抱っこしたまま、ルカの元に、五メートル位、ダッシュしたら。
最後、こけそうになって。
「うわ、何……」
とっさに支えてくれたルカの腕の中に、ミウと突っ込んで。
三人で。いや、二人と一匹で、ずでん、と転がった。
……まあ、しりもちついたのは、ルカだけで。
オレとミウは、ルカの上にのっかった、ので、ダメージはなし。
「いって……」
苦笑いのルカは、自分の上に居るオレとミウを見て。
ふ、と笑った。
「ただいま」
「――――……ッ」
言われた瞬間。
涙が滲んで。
「……おかえり」
言ったら余計に、涙が溢れてきた。
「すぐ戻ったろ? 泣くなよ」
言いながら、ルカが、オレをぎゅ、と抱き締めて。
「ミウ、邪魔……」
オレの抱えてるミウを見て、苦笑い。
「ミウ、大活躍だったから……邪魔じゃないよ」
涙声で笑いながら言うと、ルカも「そうだな」とクスクス笑って、ミウの頭もぐりぐり撫でた。
「小さいのも、デカいのが消えたら、居なくなったんだな」
いつの間にか周りに来てた皆が、あたりを見回していた。
「良かったよな、ちいせぇの、倒して回るのかと、思ってた」
ルカが、笑いながら皆を見上げる。すると、皆も、嬉しそうに笑ってて。
「あー……」
ルカが、そう言いながら、ごろん、と甲板に、倒れた。
オレと、ミウを抱き締めたまま。
「すっ……げぇ、疲れた……」
その言葉を聞いて。
皆もその場に、腰を下ろして――――……そのまま、転がった。
「空、青いねー……」
リアの声。
「船、揺れないな……」
アランものんびりした声で言う。
「ほんと……」
「――――……すげー静か……」
キースとゴウも、そう言って。
なんかオレは。
ルカの心臓の音、聞きながら。
…………なんか、安心したら、眠くなってきちゃったなあ、なんて……思ってた。
(2022/11/4)
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