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第2章

「こんな時なのに」

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 リアの炎をのせた、ルカの剣。
 魔物の体に当たった時、少し離れても伝わってくるすごい衝撃と煙で、一瞬見えなくなった。

 効いた……?

 ミウを抱きしめたまま、目を凝らして見ていると。
 相手が真っ二つ、とかにはなっていなくて。

 ……というか、あまり効いてないみたいに見える。

 攻撃を終えたルカが飛んで戻ってきて、甲板に降り立つ。

「火じゃ効かねえな。かき消される」

 ルカの声がして、皆の顔が、より引き締まる。
 ルカが、パッと振り返って、オレを見た。


「――――……」

 目が合うと、ルカは、こんな時なのに、オレを見て、ふ、と笑った。

 ちゃんとオレがそこに居るのを、安心したみたいなそんな感じ。
 ――――……こんな、時なのに。

 ぎゅ、とミウを抱き締める。
 
「あとは、オレの全力注ぎ込んで攻撃するから――――……これで効かなかったら……リア。ソラの側で、だからな」
「分かってる!」

 全力注ぎ込んでって。
 ――――……この魔物、魔王より厄介なんじゃ。

 魔王はそこそこ魔法も攻撃も効いたもんな。
 こいつは、攻撃には特化してないけど、色んな攻撃に耐性がありすぎて。

 ――――……倒すことが、出来ない設定の奴なんじゃ……。

 でも、アランの船を捨てたくはないだろうし。
 ……戻っちゃったら、漁もできないわけだし。
 ここまで来て、ルカ達、悔しいだろうし。

 でも、全力使い果たしたルカなんて、見たこと無いし――――……見てきた限りずっと、軽く倒してきてたのに。

 
「ミウって、結解とか外せない?」

 そう聞くけど、ミウはオレをただ見つめてるだけ。
 ……ミウ自身が自然と結解を張ってるのと、別の奴が張ってるのを外すのとは……きっと違うんだろうな。
 なんとか、あの結解を外せたらいいのに。
 あの硬いの、どうにか出来たら、いいのに。

 色んなゲームやってきたけど――――……物理攻撃が効かない奴は、魔法が効いた気がするし。魔法も、火は効かない奴には雷が効くとか。属性によって、色々あったような気がするけど。あいつ、火は効かないけど、雷の魔法使うから、そっちも効かなそうだし、海に居るから、水も……あとは魔法……魔法は効かないのか。だとしたら、やっぱり、結界無くして、物理攻撃……今のまま、ルカが最大限でやって……ルカの力と、あいつの結界がどっちが強いかっていう、力勝負みたいな……。それでいいのかな。

 ……ていうか。
 ここがゲームの世界なら、の話で――――……違うのかもしれないし、そうかもしれないし、どうしたらいいんだろ。
 ミウを見ながら瞬間的に、頭の中に色々な考えが、浮かんでは消えていく。


 ていうか、あの魔物って、攻撃はあんまりしてこないけど、戦う時はどうしてるんだろう……あの触手みたいな足みたいなのって、今のところ、何をしてくることもないけど――――……とどめがさせないって、延々と戦うのかな? それとも、何か――――……。

 思った瞬間、だった。
 不意に近くに現れた、小さいの。いや小さくないけど!

 そいつが、本当にオレのすぐそばに居て。
 オレに覆いかぶさろうとしてきて。びっくりして声も出せず目をつむった、その時。

 予想したどんな痛みも、全く無くて。ふわ、と、抱き上げられる感覚に恐る恐る、目を開けると。

 ルカがオレを抱いて浮かんでて。
 デカいけど小さめなそいつは、吹き飛んで行ってた。

 カラン、と音がして。ルカの剣が、甲板に落ちたのが見えた。
 オレを抱きながら跳ね返したせいで、手から滑ったのか。早く拾った方が。と思った時。


「……っぶねえな。もう、お前は、何でいっつも……」

 苦笑いで、オレを見下ろすルカが、オレが腕の中にちゃんと居ることに安心したみたいに、ぎゅ、と手に力をこめて、抱き寄せてくれて。


 こんな時なのに、すごく、安心する。





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