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第2章
「本命の魔物」
しおりを挟むミウを抱いたまま、階段の途中で止まって、そー、と顔を出す。
あれか……。
まず皆の姿が見えて――――……それから、対峙している、相手の魔物が見えた。
小さめの奴で何となくは予想がついてた通り。
全体的に白い。なんだろう、顔や中心の体の部分はタコともイカとも違うんだけど、でも、手なのか足なのか、そういうのはそれっぽい。何本も、触手みたいなものがある。それらが攻撃時には伸縮自在みたいで、あちこちから攻撃してくるみたい。
しかも、少し力をためると、あの、小さめなやつを生み出せるみたいで、敵が少しずつ周りに、増えていく感じ。空中からアレが湧いて出てくるのは、不気味だった。
しばらく固唾を飲んで見守っていると、こちらが放つ魔法は、衝撃としては与えるみたいだけど、なんだかダメージを受けているようには、見えない。
触手みたいな手足のような部分なら、皆が剣で切り落とせるみたいだけど、でも、切り落として少しすると、また生えてくる。
ルカが一度、本体部分を斬りつけたけど、結界なのか、それとも外側が異様に硬いのか、全然効かない。ビリビリ痺れた感じで跳ね返されて、ルカが顔をしかめて、一旦甲板に戻ってきた。
さらにタチが悪いのが、大きいのは、雷系の魔法を使えるらしい。雷雲を呼べるのか、天気が見てる間にもどんどん荒れて、嵐みたいになっている。アランが、舵を切って、船を保つけど、すごい揺れて足場も悪いし。
こっちから見ているだけでも、戦いにくそうというか――――……
どう戦うべきかと、ルカたちが嫌がっていた、そのままというか。
どう、するんだろう、これ。
――――……いざとなったら、地上に帰るって言ってたけど……ここまできて、しかもアランの船を捨てて、地上に戻るなんて。
ルカは嫌だろうなと、思うけど。でも、あれを、少なくとも今の状態で、倒すって……。
RPGのゲームだったら、絶対何かしら、突破口が用意されてると思うんだけど……これ、ゲームじゃないんだよな……。
皆ちゃんと生きてて――――……不可能なことは、不可能だと思うし。
どうしたらいいんだろう。
オレには、何も、出来ないのかな……。
ぎゅう、とミウを抱き締める。
デカいのに気を取られてると、小さめな奴の攻撃が来るし、そいつらにも、魔法も剣も効かない。
攻撃力があんまり強くないのがまだマシなのかな。
でも、倒すことができないで、消耗してばかり居たら、絶対、良くないと思う。
あの小さいのを生み出してるのが、デカい奴だったから、あいつを倒せば、ゲームなら小さいのも消えることが多い――――……ルカ達も、デカいのを倒せば、弱まるって言ってたから、それはそういうことで、認識があってるんだと思うけど。だから、小さいのを無視ししてでも、大きいのを倒すべきだとは、思う。
多分、ルカ達も、それで、大きいのに攻撃しようとしてるんだと思うけど。
でも、小さいと言ったって、オレからしたら、すごいデカいし、元の世界で言ったら、熊の何倍もある感じだし。
ち、と、ルカが舌打ちした感じがする。聞こえないけど、そんな表情で、皆の顔を見る。
――――……でも、皆も、帰りたく、ないみたいで、まだ頷かない。
ルカだって、絶対、嫌だと思ってて、はっきり、そのことを言わない。
「リア、魔法を剣に合わせろ」
剣に炎を乗せて焼き切る、みたいな攻撃を試すんだと分かって、ミウをぎゅー、と抱っこして、攻撃がきくように祈る。
リアの目の前の炎が、今まで見た中でダントツ、大きい。
もうハラハラしながら、でも見守るしか、無い。
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