【ドS勇者vsオレ】オレ様勇者に執着&溺愛されてるけど、ドSだから大変。

悠里

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第2章

「見てたい」

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「キスしろよ、ソラ」

 ニヤリと笑って言うルカに、やっぱり、と少しうんざり。

「……オレまだ完全にさっきの許してないのに」

 しかも、するんじゃなくて、しろよと来たし。

「もう今笑ってたろ」
 ふ、と笑われて、まっすぐに見つめられる。

「……何でオレからキスすんの?」
「キスすんのに理由がいるか?」
「……要る!」

「……じゃあ――――……」
「――――……」

「……オレを好きなら、キスしろよ」

 そんな言い方に、目が点。
 ……なんなんだー。このオレ様男ー!

 皆の前でキスしたり、からかったり、もうほんと、そういうとこは、嫌いなんだからなっ。

 ……と思うのだけど。
 なんだか、期待された瞳で下から、じっと、見つめられていると、言葉になって出てこない。


「――――……ほら。早く」

 なんだか、すごく至近距離で見つめられて。
 ちょっと優しい声で急かされると。

「――――……」

 引き寄せられるみたいに。
 唇を重ねてしまった。

 重ねるだけのキス。少し触れてから、はっと気づく。
 もう、超簡単に、ルカの思うままにキスしちゃったし……!

 オレのバカー!
 激ちょろー!!

 ……心の中で散々叫んで、本当に、そう思うんだけど。
 ――――……なんか、ルカが、めちゃくちゃ優しく笑うから。 

 なんか、いいような気がしてきてしまうのも、事実。


「……キスしたけど」
「ん?」

「おろしてくんないの?」
「……もう一回」

「――――……」

 もう一回も二回も三回も……変わんないし。
 という気分で、ルカに、キスする。

 ふ、と笑ったルカに、とん、と下におろされる。

「……何がしたかったの?」
「――――……エプロンしてるソラとキスしたかっただけ」
「え。それ本気で言ってたの?」
「それって?」
「エプロン姿良いって」
「……何でオレが、そういうことでお前に嘘つくんだよ?」
「嘘っていうか……冗談なのかなって」
「そんな冗談言ってるほど暇じゃねーし」 
「――――……」

 ……いつも言ってるじゃん、冗談。
 と思って、ふと、気づく。

 もしかして冗談じゃないの? ルカが言ってること全部。
 からかってるだけかと思ってるんだけど……。

「……ルカって、冗談、よく言うよね?」
「――――……言わねえよな?」

「……たまに、アランに、つっかかってるやつは? あれ、冗談みたいなものでしょ?」
「冗談でなんか言ってねーけど」

 まじまじと、目の前の整った顔を見てしまう。
 確かに今は嘘言ってるっぽくはないけど。

 ……今まで冗談だと思ってスルーしてきたこと結構あるような。
 ――――……今の聞かなかったことにしようかな。…………うん。そうしよう。

 でもなんかどうしても聞きたくて、ルカを見上げて。

「……ルカって、オレのエプロン姿、好き?なの?」

 そう聞いたら、ルカは、二ヤと笑う。

「ん」
「……-本気で?」
「だから、冗談なんか言ってないけど?」

「――――……」

 本気なのかぁ……。そうかぁ……。


「えっと……とにかく、オレ……ごはん。続き、作るね?」
「ん」

 ルカが微笑んで、オレの頬にキスした。
 
「また少し、上行ってくる」
「うん。いってらっしゃいー」

 ルカが姿を消してから。オレは、ふー、と息をついた。


「……」

 ――――……ドS設定だもんなぁ。
 ……意地悪したり、わざと恥ずかしいこと言ったり、そういうのするもんなぁ、ルカ。

 ……全部が本気とか。絶対嘘だ。うんうん。


「……」


 まあその「設定」ってやつが、そもそもよく分かんないんだけど。
 ここがあのゲームの世界なら、それってどういうことなんだろう。何度も何度も考えるけど、全くわからない。

 ゲームの世界に転移したって、そう捉えれば、いいのだろうか。
 ……そんな漫画みたいなー……。

 いつか。分かる日が来るんだろうか。

 オレ、それが分かったその後も――――……。

 ルカと居れるのかな……。


 って。
 ……そんなにルカと、居たいのか、オレ。と苦笑い。


 オレ様だけど。されること、色々恥ずかしいけど。
 ……たまに意味わかんなくてむかつくけど。


 ……ルカがオレを見る瞳と顔は。
 なんか、ずっと見てたいなと。思っちゃうのは。どうしてだろ。

 

 そんなことを考えながら、フライパンの蓋を開けて、火を消した。
 





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