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第2章

「嫌な予感」

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 デカすぎる怖い顔の魚も、まあ、切り身になってくれれば、普通の魚。
 フライパンでジュージュー焼いて、香草っぽいので臭みをとってみたりしてみる。

 よく分からない草だけど、まあとりあえずアランはまだ上に居るし、一人だから適当にやってみる。

 さっきは絶対ルカのスープ飲んでやると思ったけど、結局カップに入れた分も冷めちゃいそうなので鍋に戻した。
 でも、よくよく思い出しても、納得いかない。

 ……アランの言うこと、素直に聞くって何だよ。意味分かんない。

 オレ、今までそんなに嫉妬とかされた記憶も、正直そこまでないから、なんかいまいちピンとこない。

 ルカは、なんかすこーし記憶をたどるだけでも、なんか、ちょこちょこ色んなことにヤキモチっぽいものを妬くような?
 それらが全部本気なのかがよく分からない。ていうか、冗談なんじゃないかなって思ってるから適当に流してると、さっきみたいな、恥ずかしい目に合う気がする……。
 皆は、皆の前でルカがオレにキスしても、全然気にしてなさそうだけど、オレが恥ずかしいし。

 もー、何なんだ。
 アランにヤキモチとか、全然必要ないし。
 アランはふざけてるけど、別にオレにほんとにちょっかい出してくる訳じゃないし。ルカをからかって遊んでるだけだし。もーほんと、意味わかんない。

 ふー、とため息をつきながら、ジュージューと良い音を立てている魚をひっくり返した。フライパンから手を離したところで、不意に、ウエストに回った手に引かれ、気づいた時にはルカの腕の中だった。

「ぅわ。びっくりした。……何、ルカ」
「怒りながら下降りてったから、来てやった」

「……来てやったって……なんて偉そうなんだ……」

 思わず言うと、ルカはクッと笑う。

「ほんとお前、面白いよな」
「面白くないし……もー離して、魚、焦げちゃうよ」

 言うと、そこは速やかに離してくれる。

「アラン、もう魚さばくの、終わりそうだった?」

 隣に立って、魚をのぞき見してくるルカにそう聞くと、ルカは首を横に振った。

「まだしばらく掛かりそうだった。でかいからな……」
「そっか。じゃあスープ、またあとであっためよ……」

「魚、味見させて」
「いーけど……」

 端っこの方はもう十分焼けてるから、そこからちょっとだけ取って、ルカの口に近づける。

「熱いよ?」
「ん」

 返事をしながら開いたルカの口に、魚を近づける。

 なんか、よく食べさせてもらってるけど、ほんと、食べさせるのって、あんまり無い。なんかこっちのほうが恥ずかしいって、ほんと、何なんだろう。食べさせてもらってるのに、慣れちゃってるみたいで、ちょっと嫌……。

 にしても。端正な顔。……って、こういう顔のこと、言うんだろうなぁ。
 顔整った、超イケメンでドSな勇者設定……誰だ、作ったの……。
 ……ゲーム、かぁ……。またそこで思考が止まる。

 ルカが、ぱく、とくわえた瞬間。「あち」、と顔をしかめた。

「だから言ってるじゃん」

 クスクス笑ってしまうと、ルカも苦笑い。
 しばらく、無言で食べてから、ルカが、ふ、と笑った。

「塩味?」
「うん。塩と、多分臭みとる草……」
「うまい」
「良かった。……でも、あの魚、顔、すごい怖いよね。美味しそうに見えなかった」

 そう言うと、ルカはオレを見下ろして、クッと笑い出した。

「生きてる時はもっと険しかったぞ」
「……見なくて良かった~……」

 あと少し蒸し焼きにして火を通そうと、フライパンに蓋をしめて、箸を置いた瞬間。ぐい、と引き寄せられた。

 
「わ。……何?」

 ひょい、と抱き上げられて、上からルカを見下ろす感じ。
 楽しそうにオレを見上げて、ふ、と目を細めて笑う。



 むむむ……。
 ルカがすごく楽しそうだと、なんか嫌な予感しかしないのは、オレだけ……??


 




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