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第2章
「ルカのスープ」
しおりを挟む初日から、二晩を過ごす間に、ルカ達が言ってた通り、同じ魔物が何匹か分からない位現れた。
ルカが言った戦い方で、炎や風を乗せて、一撃で吹き飛ばすみたいな戦い方。ルカはうまくやってるから平気って言うけど。
皆は、あんまり自分が戦えないから、ちょっと嫌そう。
もちろん、たまに違う感じの魔物も現れるんだけど、そっちは結界で弾かれたり、入ってきても、キースやゴウの剣で、結構余裕で倒せてしまう。
オレはオレで、料理も少し慣れてきて、材料の名前とか調理方法も覚えてきて、アランが船を動かすのにちょっと離れても、順調に料理を進められるようになってきた気がする。
ちょっと、最初の頃の、緊張感がなくなってきたような。
夜も二晩は、襲われることもなくて、ぐっすり眠ったし。まあ寝る前に絶対ちょっかいは、出されるけど。
なかなか大きい魔物にも遭遇しないしなあ。
海は広すぎて、難しいみたい。
アランは、このまま長くなったら、厄介だなぁなんて一度呟いてた。
そうだよね。漁師さんたち、漁にも出れないし。
ルカ達だって、長らく地上を留守にするのも、きっと、心配だろうし。
でも……何回か目にしたけど、小さいと言ったって、オレなら一撃で殺されそうな大きさの魔物なわけで。それと平気な顔して戦ってるルカ達がちょっとどうかしてるだけで。
……あれのデカい版なんて、全然会いたくないようー、と、心の中のオレは、ちょっと言ってる。
でも、会わないと、戦わないと、帰れないわけだし、ずっと船の上っていうのも……。
ぐつぐつ煮込んでたスープを小皿にとって、味見。
うまーい。ふっふっふ。 ルカ、喜ぶに違いない。
なんか昨日の朝、スープって言ってたけど、どうやらスープは好きみたい。
いつも色々作るから、皆も、食べるもの、食べないものがあるみたいだけど。ルカは、スープだけは必ず飲んでる気がする。
「うまいうまい」
ふんふんご機嫌でカップに注ぐ。
「ソラー!!」
ん?
すげーでっかい声で、ルかが呼んでる声がする。
スープを置いて、階段を上って、甲板に出ると。
「げげ、ナニコレ!」
なんか、すっごいデカい魚が、甲板に横たわっていた。
「アランが試しに釣ってみようぜっていうから、さっきから試してたらさ、これがかかって」
「……ていうか、これ、オレよりでっかくない?? うわー、すごい、よく釣れたね?」
「最後は魔法で捕らえたしな」
「便利だねぇ……」
そう言うと、「お前、魔法とくれば、便利便利って……」とルカが笑ってる。「簡単なのは別だけど、強い魔法は、選ばれた奴だけが使える、神聖なものなんだけどな?」と付け加えられる。
「あ、うん」
まあ、なんとなく分かってる。
……でも便利だ。
「え、アラン、これって、まさか今から食べ……」
「そう今からばらして、刺身と、あと焼いて食おうぜ」
「オレこんなのばらすの、無理だけどー!」
デカいー、怖いー!!
とかなり退いてると、「ほらやっぱり」と、ルカが笑う。それを聞いて、周りに居た皆が一斉に笑った。
「……何やっぱりって」
むむむ、とルカを睨むと。
「アランがさ、ソラは魚さばけるのかなっていうからさ」
「……うん」
「小さいのならいけそうだけど、これは無理だろって、言っといた」
皆がまた笑う。
「つか、自分よりでかい、こんな怖い顔の魚、オレができる訳ないじゃん!」
くそー、ルカめー!!
「ソラ、オレが少し小さく切ってくから、下行って、焼いといて。オレはこっちで刺身にする」
「あ、うん、分かった」
笑いながらだけどアランにそう言われて、それなら大丈夫と、素直に頷くと。
ルカの手が肩から回ってきて、ぐい、と引き寄せられた。
「なんかお前、アランの言うこと、すげー素直に聞くようになってねーか?」
なんだか不満げなルカ。
ん? ……何だそれ??
「だって、料理教えてくれてるし……??」
……何言ってるの、この人。
間近のルカを、首を傾げながら眺めていると。
「妬くなよ、ルカ。ほら、ソラ、おいで」
「うん…………?」
…………妬く? って、アランに?
ルカの腕から、するする抜けようとしながら、考えていると。
顎が掴まれて、上向かされて。
「ん、む…………っ」
数秒、めっちゃキスされる。
「あーあ……」
リアの、呆れたような変な声が聞こえるし。
「ソラも大概、気づくべきだけどなぁ?」
「まあまあ。それが可愛いとこなんじゃない?」
ゴウとキースの声もする。
「……っふ……は……、っ」
やっと離されて、酸欠すぎたので、息を吸ってると。
ルカが、満足そうに、ニヤ、と笑う。
「…………っっっバカ……!!!」
もーもーもー……!!
ルカのスープ、全部飲んでやる!!!
と、心に誓った。
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