213 / 299
第2章
「感動する位」
しおりを挟む食事が終わると、皆で手分けして片づけた。
食器を洗う、テーブルの上や下に零れたものの掃除、アランとオレは途中から、明日の朝の仕込みをしてた。
皆で協力して終わりかけた頃、アランが、なんかお茶飲むか?と言うと、皆がそれぞれ頷いてる。
「じゃあ甲板で待ってて。ちょっと甘いもんも持ってく。ソラ、手伝って」
「うん」
オレとアランが一緒にキッチンの方に立ち始めると、皆が階段を上っていく。
「ミウも行ってていいよ?」
オレの周りにふよふよしてるミウに言うと、一番後ろから階段に登っていたルカの頭上に、ぴゅーんと飛んでいく。
「お前またオレんとこ、きたの?」
ルカが苦笑いでミウに言って、皆に笑われながら消えて行った。
「ミウって、ルカをお前のだと思ってんのかな?」
「ん? どういう意味?」
「だって最初はソラに懐いてたんだろ?」
「うん」
「ルカはソラのだって思ってるから、ルカにも懐き始めたとか?」
「うーん……? どうだろ……確かにオレと居ると、ルカがすぐ近くに居るから、自然とルカとミウも一緒に居る時間が長いけど……」
「オレ、ミウって、なかなか懐かないって聞いてたんだけど」
「んー……でも、結構、オレの周りに居る人には、とっても可愛がられてるよ?」
「でもそれは、ソラに懐いて、下に居るからだろ? 普通、上空をふわふわ浮いてる生き物だと思ってるけど」
お湯を沸かして、カップを並べながら、ちょっと笑ってしまう。
「確かに初めて見た時は、すっごい上をふわふわ飛んでた気がする」
……あれなんだろって、思ったっけ……。
「あ、でも、ルカ、たまにミウに食べさせてあげてたりさ。あと、なんかミウに、オレが危険な時は、ルカを呼んでとか頼んでてさ。仲良しなんだよ、不思議だけど」
「へえ? できんの、そんなこと」
「うん。一回、オレが危なかった時に、多分ミウの力でさ、ルカがオレの目の前に、突然現れたんだよ」
「――――……あ。それオレ、知ってるやつかな」
「ん?」
「話してたのに、ルカが突然、フッと消えた時だろ。なんかしばらくしてから戻ってきて、ちょっとミウに呼ばれてたとか、ルカ言ってた」
「あ、そう。それそれ」
そういえばアランと話してたって、ルカも言ってたっけ。
「……ミウって結界も張るし、ルカの結界もなんてことないように抜けてくし。しかも、ルカを移動させるとか。……すげぇな。あの顔で」
「顔って……まあ…… 可愛すぎだけど」
二人でクスクス笑ってしまう。
「たしかにあの顔でって思っちゃうよね」
「……まあ、色んな魔力とかは、顔は関係ないってことだよなぁ。あ、ソラ、このお菓子、皿に出すから小さい皿持って行って」
「うん」
小さいお皿を数枚持って、アランからちっちゃい、可愛い飴玉みたいなお菓子を受け取る。
「いっこ食べてもいい?」
「いいよ」
ぱく、と食べると。金平糖みたいな、味。
「わーおいしい、これ。甘い」
「だろ。上行こうぜ」
「うん」
二人でお茶とお菓子を持って、甲板に上がる。
上がった瞬間。
まっ暗で、びっくり。
夕飯を食べてる間に、すっかり、陽が落ちて、周囲は真っ暗。
月明かりに気付いて空を見ると。
見たこともないくらい、たくさんの星。
「――――……」
しばらく、呆然。
綺麗すぎる。
「ソラ、どした?」
アランがオレを振り返る。
瞬間、ちょっと船が揺れて。上を見てたオレは、ちょっとよろけて。
「――――……」
転ばない。のは。ルカに支えられたから。
「あほみたいに上見てるから、絶対そうなると思った」
くっくっ、と笑いながら、ルカが、オレの肩をつかんで抱き寄せる。
「期待を裏切らねえよな?」
「期待って言うの、それ……?」
「期待だな」
クスクス笑う。
「星、すげえよな」
「うん」
「目立たないように灯りを落としたから、気を付けろよ」
言いながらも、オレを離さず支えたままで、甲板の真ん中に居た皆の所に着くと離された。
オレは、アランと一緒にお茶を皆に配って、お菓子も適当に手の届くところに置いていく。
「ミウは?」
あたりを見回すけど、見えなくて。
ルカが、あっち、と上向く。
「……あっち……?」
目を細めてみると、星空、かなり遠くにちょこんとちっちゃく浮いてるミウが見える。
「すっごい上に居る……」
見上げてると、リアが、「外にきたら即あそこまで飛んでっちゃった」
「そうなんだー。すごいねぇ……高い」
見上げながら。
また星を見て、ぼー。
何となく、皆も静かに空を見上げてる。
海って他に明かりが無いから。
この船の明かりを落とすと。周りの闇に吸い込まれそうな位、暗いけど。
空の月と星は――――……。
なんか、感動する位、綺麗だ。
67
お読みいただき、ありがとうございます♡
楽しんで頂けましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡
(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
匿名ツールでの感想もお待ちしています💕
↓
【匿名メッセージ送信サービス・マシュマロ】
【WEB拍手👏絵文字とコメントで応援サービス】
楽しんで頂けましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡
(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
匿名ツールでの感想もお待ちしています💕
↓
【匿名メッセージ送信サービス・マシュマロ】
【WEB拍手👏絵文字とコメントで応援サービス】
お気に入りに追加
4,704
あなたにおすすめの小説

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる