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第2章

「頑張る」

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「ボスと戦う時は、波の出どころに居る訳だから、多分、船は大丈夫だと思うんだけどな」
「ていうか、もう戦ってたんだね……」

 知らない間に。……オレがぐっすり寝てる間に。
 うう。なんかすみません。
 ……まあオレ居ても、役に立たないけど。


「戦うのは、日常だからな。ソラが思う程、特別な事じゃない」

 余裕そうな顔をするルカ。
 ……まあ、確かに。そう、なんだろうけど。

 でもやっぱり、戦いって何があるか分かんないし。
 心配は心配だけど……。

 そう思っていると、不意に手首を掴まれて、引かれた。

「ちょっと来な」
「うん」

 船の先へと歩いて行って、寝室やキッチンにつながる階段とは別の階段を、ルカが下りていく。

「ついてこいよ」
「ん」

 この階段は初めて下りるなあ……。向こうの階段より断然狭い。
 何だろ、ここ。

 ちょっとドキドキしながら下りていくとそこは小さな……2畳くらいの部屋になってて。ぱあっと明るい。

「わーなに、すごい……!」

 びっくりしたのは、窓になっていて、外が見えること。
 海の中の生き物が、見える。

「さっきアランと見てたんだけどな。波が荒れてなければ、もっと小さくて綺麗な魚も見れるらしい。今は、波に逆らえる大きさのしか見えねーけど」
「じゃあ、倒したら、帰りは綺麗なの、見えるのかな?」
「海が落ち着けば、そうかもな」
「わー、でも、おっきいのだけでも、すごい」

 海は、青い。
 綺麗。こんなに荒れてても、青いんだ。不思議。
 すっごい綺麗。

 見た事ない魚とかもたくさん見える。


「うひゃー、何あれ、でっかい! 何て魚?」
「魚の名前はよく知らねえ」

 クックッと笑いながら、ルカの腕がオレを抱き寄せて、そのまま一緒に窓を覗き込む感じの体勢になる。

「ソラ、こういうの好きそうって思ったけど」
「好き好き。オレ、水族館、好き」
「すいぞくかん?」
「うん。向こうにあるんだよ、水族館って言って…… 海がないとこでも、海の生き物が見れるようにしてあるところが」

「ふーん……たまに魚飼ってる奴居るけど、そんなようなことか?」
「あー……うん、多分、それがもっと、でっかーくなったのが、水族館」

 ルカを見上げて言うと、ふうん?と、面白そうにオレを見て、笑う。


「楽しそうだな、ソラ」

 クシャクシャ撫でられまくる。


「いつかソラと、行けたらいいよな。すいぞくかん」
「――――……ルカと、水族館……?」

 ルカが日本に来ちゃったら、結界とか、どーなるんだろ。
 ……あ、そっか。倒してからって言ってたっけ。

 ルカが、日本にか。

 何回目だろう、また想像して。ルカがすごい目立ってるのを、思い浮かべて、笑ってしまった瞬間。


「――――……」


 ぐい、とルカに引き寄せられて、キスされる。


「……ふ、っ――――……んん……?」


 いつでもキスされるな、もう……。
 これが当たり前になってるオレって、どうなの……。

 思いながらも、自然と、キスに応えてしまう。


 しばらく、キスされて、ゆっくり離された。
 もうなんか、すぐ熱くなる、体というか。ぼうっとする頭というか。

 どんだけなんだ、もう。


「……絶対行こうな」

 ルカが、オレをまっすぐみて、なんか、ものすごーく、太々しく笑う。


「……どーやって?」
「さあ。……これから、調べる」

 ぶに、と頬をつままれる。


 色々言いたいことはあるのだけれど。
 ……この人、ほんとにやりそう……と、ちょっと思ってしまうから不思議。

 やっぱり、人って。
 色々努力して、頑張って、それで自信があって、前を見据えてる人って。


 きっと、すごく、強いんだろうな。



「ソラ、居るかー?」

 アランの声が上から聞こえる。


「居るよー」
「あ、居た」

 階段を下りてくる音がして、アランが顔を出した。

「ソラ、気分は?」
「大丈夫そう」

「今このまま、まっすぐ進んでればいいからさ、少し早いけど、夕飯の準備しようぜ」
「あ、うん、するする!」


 わーい、とりあえず、オレもできること、がんばろーっと。


「じゃあねー、ルカ」

 ルカの側からする、と離れると。


「もしかして、オレ、邪魔したか?」

 アランがルカにそんな風に聞いてる。


「邪魔。……でも仕方ない。ソラ頑張れよ」
「頑張る」

 言いながら階段を上って、甲板に出る。
 あとからアランも、その後からルカも出てきた。
 

「いってきまーす」
「あとで覗きに行く」

「うん」



 じゃーねー、と手を振ってルカと別れて、アランとキッチンの方に降りた。








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