【ドS勇者vsオレ】オレ様勇者に執着&溺愛されてるけど、ドSだから大変✨奨励賞受賞

悠里

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第2章

「緊迫感?」

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 昼食を終えて、ジェイの詰めてた食料も皆で台車で運びながら、アランの船にたどり着いた。

「アラン」

 ジェイが呼ぶと、アランと、アランと一緒に整備していた皆も出てきた。

「終わったか?」
「ああ。終わった。もう出れるよ」

 アランが船の上から、満足そうに言う。皆も、ふわ、と笑顔。

 
「乗って来いよ」

 アランに言われて、皆で荷物と共に、船に乗り込む。船を見回して、一番に思ったのは。


「中もすっごい綺麗になったー」

 そう言うと、アランが笑いながらオレを見た。

「そりゃそうだ、整備と掃除、終えた所だしな。下の部屋もだいぶ綺麗にしたぞ」
「そうなんだ」

 クッキー食べたところがキッチンぽかったような。
 何部屋かドアもあったっけ。ちょっとワクワクするけど。
 ……旅行じゃないんだよね。うう。残念……。


「波が高いけど、ある程度は結界で押さえられる……とは思う」

 アランが最後のセリフを付けて笑うと、ルカが、「押さえるって言えよ」と笑う。

「結構な波だからな。無事進みたかったら、ルカが手伝えよ」
「んーまあ……アランの結界の上に重ねてみるけど。やったことねえから、どーなるか」

「結界なんて重ねられるんだ……すごいね」
「すごいだろ」

 ニヤッと笑みを浮かべて、ルカがオレを見て、ちょっと得意げ。

「うん、すごい」

 まあ正直よく分かんないけど。……目には、見えないし。
 思いながらも、ウンウン頷いていると、ルカがクスクス笑う。

 皆が船をあちこち見ながら色んなことを話してる時、ジェイが、オレを見ながらアランに話しかけた。

「アラン、ソラにはある程度料理の仕方教えたけど、まあ……実地で教えてやって」
「ああ。分かった。最初はオレの助手からでいーよ。ソラ」

 そう言われて、うん、と頷く。

「手取り足取り教えてやるからなー?」

 肩を組まれたけど、まあべつにこれ位は慣れてきてて、うん、と頷いた所で。


「触んな」
 ルカが、ぐい、とアランの頭を押しのけて、オレを自分の方に引いた。

 ……なんか、この流れも慣れてきたよ、オレ。

「何だよ、オレは、料理を手取り足取り教えるだけだっつの」
「教えるのは良いが触んな」
「つーか、あんなに色んな女相手にしてたくせに、今更そんなソラにこだわんなくてもいーだろ」
「お前には関係ないだろ、ソラはオレのだ」
「ていうかソラはものじゃ――――……」

 オレは、そーーーっとそこを離れて、呆れた顔してるジェイを手招きして、運んできた食材の箱を開いた。

「すごいたくさんだね」
「まあ、魚釣って食えたらいいんだけどな? でも、波が荒れてるから、釣れるか分かんねえから」
「そっか。……うーん、何日位かかるんだろ??」

 全然見当も付かなくて、うーん、と考える。

 そもそも丸一日船に乗った事なんか無い。
 短いと三十分の遊覧船。長くても、なんか昔家族旅行で島に行った時、一時間くらい、乗ったかなあ。

 そういえばあん時、車で船に乗り込んで、船底に駐車場があったんだっけなあ。今思うと、すごいでっかい船だったんだろうなあ……。
 それに比べると、この船は、そこまでは大きくないかも。


「んー、どうだろうな? すぐ見つかって倒せたら、明日帰って来るかもな? そしたらこの食材もほぼ持ち帰りだけどな」
「そっか、そういうこともあるかもしれないんだ。すぐ帰ってこれたらいいなあ……」
「まあそうだな。早く帰ってるように祈ってやるよ」
「うん」

 ふふ、とジェイと頷きあっていると。

「お前のことで話してんのに、なんでそこでジェイと仲良くやってんだ」

 今までアランとなんだかんだ言いあってたルカが、不意にオレにそう言った。


「だって……ルカとアランは、オレのことって言いながら、仲良く遊んでるだけけだし……」


「「はー??」」

 アランとルカが、同じタイミングで言って、オレを険しい顔で見つめる。


「仲良しじゃん……」

 はーとため息を付くと、確かにな、とジェイが笑い出した。



 ……ほんと。緊迫感、ないなー。

 皆は怖くないのかな。

 戦う皆より、戦えないオレが一番、ドキドキしてる。絶対。

 





 
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