203 / 296
第2章
「緊迫感?」
しおりを挟む昼食を終えて、ジェイの詰めてた食料も皆で台車で運びながら、アランの船にたどり着いた。
「アラン」
ジェイが呼ぶと、アランと、アランと一緒に整備していた皆も出てきた。
「終わったか?」
「ああ。終わった。もう出れるよ」
アランが船の上から、満足そうに言う。皆も、ふわ、と笑顔。
「乗って来いよ」
アランに言われて、皆で荷物と共に、船に乗り込む。船を見回して、一番に思ったのは。
「中もすっごい綺麗になったー」
そう言うと、アランが笑いながらオレを見た。
「そりゃそうだ、整備と掃除、終えた所だしな。下の部屋もだいぶ綺麗にしたぞ」
「そうなんだ」
クッキー食べたところがキッチンぽかったような。
何部屋かドアもあったっけ。ちょっとワクワクするけど。
……旅行じゃないんだよね。うう。残念……。
「波が高いけど、ある程度は結界で押さえられる……とは思う」
アランが最後のセリフを付けて笑うと、ルカが、「押さえるって言えよ」と笑う。
「結構な波だからな。無事進みたかったら、ルカが手伝えよ」
「んーまあ……アランの結界の上に重ねてみるけど。やったことねえから、どーなるか」
「結界なんて重ねられるんだ……すごいね」
「すごいだろ」
ニヤッと笑みを浮かべて、ルカがオレを見て、ちょっと得意げ。
「うん、すごい」
まあ正直よく分かんないけど。……目には、見えないし。
思いながらも、ウンウン頷いていると、ルカがクスクス笑う。
皆が船をあちこち見ながら色んなことを話してる時、ジェイが、オレを見ながらアランに話しかけた。
「アラン、ソラにはある程度料理の仕方教えたけど、まあ……実地で教えてやって」
「ああ。分かった。最初はオレの助手からでいーよ。ソラ」
そう言われて、うん、と頷く。
「手取り足取り教えてやるからなー?」
肩を組まれたけど、まあべつにこれ位は慣れてきてて、うん、と頷いた所で。
「触んな」
ルカが、ぐい、とアランの頭を押しのけて、オレを自分の方に引いた。
……なんか、この流れも慣れてきたよ、オレ。
「何だよ、オレは、料理を手取り足取り教えるだけだっつの」
「教えるのは良いが触んな」
「つーか、あんなに色んな女相手にしてたくせに、今更そんなソラにこだわんなくてもいーだろ」
「お前には関係ないだろ、ソラはオレのだ」
「ていうかソラはものじゃ――――……」
オレは、そーーーっとそこを離れて、呆れた顔してるジェイを手招きして、運んできた食材の箱を開いた。
「すごいたくさんだね」
「まあ、魚釣って食えたらいいんだけどな? でも、波が荒れてるから、釣れるか分かんねえから」
「そっか。……うーん、何日位かかるんだろ??」
全然見当も付かなくて、うーん、と考える。
そもそも丸一日船に乗った事なんか無い。
短いと三十分の遊覧船。長くても、なんか昔家族旅行で島に行った時、一時間くらい、乗ったかなあ。
そういえばあん時、車で船に乗り込んで、船底に駐車場があったんだっけなあ。今思うと、すごいでっかい船だったんだろうなあ……。
それに比べると、この船は、そこまでは大きくないかも。
「んー、どうだろうな? すぐ見つかって倒せたら、明日帰って来るかもな? そしたらこの食材もほぼ持ち帰りだけどな」
「そっか、そういうこともあるかもしれないんだ。すぐ帰ってこれたらいいなあ……」
「まあそうだな。早く帰ってるように祈ってやるよ」
「うん」
ふふ、とジェイと頷きあっていると。
「お前のことで話してんのに、なんでそこでジェイと仲良くやってんだ」
今までアランとなんだかんだ言いあってたルカが、不意にオレにそう言った。
「だって……ルカとアランは、オレのことって言いながら、仲良く遊んでるだけけだし……」
「「はー??」」
アランとルカが、同じタイミングで言って、オレを険しい顔で見つめる。
「仲良しじゃん……」
はーとため息を付くと、確かにな、とジェイが笑い出した。
……ほんと。緊迫感、ないなー。
皆は怖くないのかな。
戦う皆より、戦えないオレが一番、ドキドキしてる。絶対。
49
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる