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第2章
「ほぼ守るって」
しおりを挟む皆で食事中。
ルカがリアの方を見た。
「リア、船に酔った時の薬とか、あるか? ソラ、船に慣れていなそうだから」
「えーあるけど……」
ちらっと、リアに視線を向けられる。
「あるけど、何?」
そう聞くと、リアがめちゃくちゃ苦笑いを浮かべた。
「すっごくマズイから、ソラが飲んだら、それで吐くかも」
「え……」
皆が笑うけど、笑い事じゃない。
「オレ気合で何とかするから。薬には頼らないから」
そう言うと皆がますます笑う。
ルカも、どっち取るかって感じだな、とか言って笑ってるし。
いやいや、船酔いプラスまずいので吐くなら、船酔いだけで吐く方がいいじゃん!! どっちも何もないっつーの!!
マジで最悪。
……むむ。すぐ船乗るなら、あんまり食べないで置いた方がいいかなあ。
と、少し食べるのをやめて、ミウにだけ食べさせていると、ルカがすぐ気づく。
「お前食ってないだろ。腹減ってると、よけい気持ち悪くなるかもしんねーぞ。適度にくっとけ」
「……でも全部出すかも」
「まあそれはそれ。食っとけ。ほら」
あーん、と口にまた食べさせられる。
ここに来て何日? 男に食べさせられるとか、ほんとに、慣れてきてて、自分の順応性にちょっと呆れる。
そういえばオレって。
あんまり今まで考えた事なかったけど。
順応力、結構あったんだな。
流されて、ふわふわ生きる、みたいな。
じゃなきゃここの生活とか、色々ありえないことが、多すぎる。
良かった、意外と、そういうとこあって。
「ほら」
ちょうど食べ終わった所に、またルカが食べさせようとしてくる。
「ん」
ぱく、と食べながら、オレはオレで、ミウに食べ物与えていると。
それを見てた皆が、クスクス笑う。
「餌付け、しあってる……」
クスクス笑うリア。
「ほんと可愛い……」
「リア、あのさ、オレ、可愛いとか向こうでは言われてないから……可愛いとか言われると、何て返そうか、ほんとにこまるんだけど……」
「えーそうなの? こんなに可愛いのにねー?」
言ってから、リアは、ああ、と何かに気付いた顔をした。
「なに?」
「ソラは、ルカの前に居ると可愛いんじゃないの? あと、こっちで、すごくワクワクした顔してる時とか、あと、ミウと居る時も、ほんと可愛いから」
クスクス笑われて、更にそんな風に言われる。
……今リアが言ったのは、確かに、こっちの世界にしかないものだな。
オレが可愛いって言われるのは、それらのせいなのかな。
むーん。……でも、よく分からないや。
ちょっと考えながら、食事を仕方なく食べていると。
ルカがふ、とゴウを見やる。
「ゴウ、頼んだものは有ったか?」
「ああ。とりあえず……これで良いか?」
ルカの言葉にゴウが、自分の荷物から取り出したのは、短剣だった。
受け取って、ルカがその鞘から刀身を出す。
日本だったら、捕まりそう……。
そんな風に思っていたら、よく斬れそうだな、とルカが笑う。
「ソラ」
「?」
「これ、持ってろ」
「――――……」
刀身を鞘に戻した短剣を、オレに渡してくる。
「えっ?? オレが、持つの?」
「何かの時の為に。――――……一応持っておけよ」
「……オレ、使えるかな」
これ持ってても、何かを斬ったり、できない気がするけど。
「オレが守るから、要らないようにするけど――――……こないだみたいに、花の中に取り込まれたりして、オレが一瞬見失ったり……しねえようにはするけど。とにかく持ってて損はないから持っとけ」
「――――……うん」
……これを持ってて、怖いなーと思うのが、損。
そんな気もしたけど。
確かに、あの時、中から花を刺せたら。出られたかも。
そんな風に考えていたら、ルカが、オレをじっと見つめながら。
「……ああでも、へたに刺したら、吹き飛ばされてケガするとかもあるし、まあ基本、早々には使うなよ」
ルカに、そう言われて。今考えていたことを否定された感じで、がっくりしてしまう。
「もう、使うか使わないか、どっちなんだよー」
そう言うと、皆が、確かに、と笑ってる。
ルカは、オレの頭に手を置いて、くしゃくしゃ撫でながら。
「いざどうしてもって時のために、持ってろってこと。それ以外には、お前には使わせないようにするから」
「――――……」
「基本、ほぼ守るから」
「ほぼって……」
「あほみたいに、脇から連れていかれるなよ?」
「……はー。頑張ります」
頷くと、また皆が笑った。
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