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第2章
「ルカって変」
しおりを挟む服屋を出た後、ルカと一緒にジェイの店まで歩き始めた。
「……ルカってさー」
「ん?」
「変だよね……」
「……お前本当に失礼だな、ソラ」
そう言うけど、怒ってはいなくて、苦笑いを浮かべてる感じ。
「だってさ。オレのズボンが短くて気にする人、居ないって。皆、興味ないよ」
「……」
「あとさー、これから戦いに行くのに、そんなこと、気にする?」
ほんと、変。
むー、としかめっ面になってしまう。
「戦いが始まるまでは、普通にしてるだけだろ。で、興味あるなしじゃなくて、オレが嫌なだけ」
「――――……だからさ。興味ない人に、見られたって、嫌だなって思うとこじゃないじゃん?」
「……じゃあ、お前は、オレに興味がない女なら、誰がオレの裸見ても平気か?」
「――――…………裸の話してないじゃん!」
一瞬ものすごく考えてしまってから、何言ってんだよ、と、文句を言うと、ルカは、クックッと可笑しそうに笑う。
「ルカ、海に出たらさ、すっごく怖いのと戦うかもしれないんだよね?」
「まあ。そうだな」
「なんでそんな冗談言って楽しそうなの」
「冗談じゃねえけど」
「…………」
ん。今のは、冗談じゃないの?
じと、とルカを見上げるとまた笑い出しながら。
「戦いの方は、今までも色んなのと戦ってきたし。――――……まあ、ある程度は、慣れだな。あいつらと一緒だしな」
その言葉で、皆を信頼してるのは分かるけど。
「……でも今度、どんな相手かも全然分かんないんでしょ」
「いつもだって、なんとなくこんなのって位の情報しかない時も多々あるぞ?」
「でも海の上だしさ」
「まあ。足場は悪い気もするけど。……ソラ、やっぱり怖いか?」
オレがあれこれ言ってると、ルカが苦笑いでオレを見下ろす。
「……怖いけど。ルカが全然怖そうじゃなくて、変なこと言ってるから、なんか怖がってるのが馬鹿らしくなるって言うか」
……あれ? オレ、何が言いたいんだか、よく分からなくなってきたぞ。
「……とにかくさ、危ないんだからさ、気合入れて」
「何、オレがふざけてると思って、心配してんの?」
「……心配はするに決まってるじゃん」
「オレが死んだら嫌?」
「……そんなの、嫌に決まってんじゃん。皆の内、誰でも、絶対やだよ」
少し眉を寄せてじっと見つめると、ルカはクスッと笑って、オレを、ひょい、と抱き上げた。ルカを見下ろす感じになる。
「ひょいひょい抱きあげるなってば……もう~……っっ」
すぐ横にミウが飛んできて、オレの顔の前でふわふわしてる。
「……」
……可愛いなあ。もう。
オレは、ぎゅ、とミウを抱き締めて。そのまんま、ミウごとルカに抱えられて。なんか……子供か、オレ。ほんと軽々と抱かれるし。
すっげー逞しいし、強いけど……。
一応ルカだって人間だしさ。
あ。「一応」とかつけてしまった。
でもきっと、勇者だって、死なない訳じゃないし。
ここ、ゲームみたいにリセットが出来る訳じゃない気がするし。……できるのかな。どこかに神様が居て、死んだらそこに行って、お金を払ったら生き返る……。って、絶対無いと思うんだよね。
ここの世界の人は、ちゃんと、普通に生きてる……。
あー……分からない。
心の中でそんな風に、思いながら。
ルカを見つめていると、ルカは、苦笑いを浮かべた。
「まあどっちにしても行かなきゃだし。この町の奴らが、海に出られないとか、死活問題だからな」
「……」
それは、そうだけど。分かってるんだけど。
「まあソラが心配してんのは可愛いけど」
「――――……」
引き寄せられてキスされる。
「……っ」
……ミウが、見てるー!
「……ん、んっ……」
後頭部に回ってる手のせいで、動けない。
絶対ミウが見てるってばー!
隙をついて、唇を離すと、何だよ?とルカに笑われる。
「……っミウの前で、しないでよ」
ぎゅむ、とミウを抱き締めると、更に可笑しそう。
「だから前も言ったけど、ミウのが断然長生きで、そういうのも知り尽くしてるかもしれないぞ?」
……そうなの?
抱き締めたミウをじっと見つめる。みゅ?と、首を傾げたミウに、顔が綻ぶ。
「そんな訳ないし! こんな純真で可愛いのにっ」
「だから、見た目はずっとそのまんまなんだって……」
「汚れてるのはルカだけで十分だから」
ルカの目が一瞬で据わる。
「ふーん……まあ、またあとで一緒に汚れような?」
「……っ……やだよっ。何て言い方すんだよ~!! もー降ろせー!」
絡んでくるルカに、じたばた騒いで抵抗していると。
いつの間にやら間近に到着してたジェイの店から、ジェイが出てきて、呆れたような顔をした。
「なんか騒がしいから出てきたら…… つか、店の前でいちゃついてんなよ」
「いちゃついてないしっ」
やっと下ろしてくれたので、ミウを抱っこしたまま、ルカから離れると、ルカは苦笑いでオレを見てる。
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