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第2章
「月が滲んで」
しおりを挟む大騒ぎの宴が終わって、皆と別れた。
リアたちは皆、まだ友達たちと飲んだり泊まったりするらしく、お城には戻らないみたい。レジーは片づけを指示するとか、言ってた。
リアがミウは引き取るよーと言ってくれて、ミウも大丈夫そうだったので、ご機嫌のルカと2人、お城に向かって、歩き出した所。
月がすごくキレイ。星も、すごくキレイ。
日本ではきっと、見られない位の数の星。
高い建物はお城だけで、それ以外は何も無いから、空がとてつもなく広く感じる。
隣を歩いている、勇者の王子は、何だか物凄く、ご機嫌で。
ただ歩いてるだけで、何も話してないんだけど、すごく笑顔だ。
……結構飲まされてたから、軽く酔ってるのもあるのかなあ、なんて思いながら、隣のルカのものすごいゆっくりな歩き方に合わせる。
「……皆、ほんと好きだね、宴」
「ん? ……ああ。そーかもな」
「怖い事、いっぱいあるとこなのにね。……皆、すごく楽しそう」
「んー? ……逆じゃねえの」
「逆?」
「いつ何があるか分かんねえから、楽しんどくんだろ?」
「――――……」
――――……そう、なんだ。
なるほど……。
「皆、そう覚悟、してるの?」
「……まあ、してはいると思うけど。特に戦いに出る奴は」
「そっか」
「まあでも……とりあえずオレは、死なねーけど。ソラ、置いては」
「――――……」
また何言い出したのかな。そう思いながらルカを見ていると。
「オレが死ぬなら、お前道連れな?」
「……なにそれ。怖い……」
苦笑すると、ルカは面白そうに笑った。
「心配で残せないからもし死ぬなら道連れにする。――――……けど、ソラを死なせたくないから、オレは絶対死なない」
「………………???」
「……意味分かってないな、お前」
クスクス笑うルカ。
「だから、お前を死なせないために、オレは絶対死なないっつってんの」
「……うん。よく分かんないけど。分かった」
「は、よく分かんないって。――――……まいっか」
ぐりぐり頭、撫でられる。
「あ。そうだ、ルカ」
「ん?」
「――――……オレ、もう嫌いって、言わないから」
「――――……」
きょとん、とした顔。
あ、ちょっとこの顔は、可愛いかもしれない。
「――――……あぁ。……キースか」
なんかさっき、話してたもんな。……つか言わなくていいのに、とか、ぶつぶつ言って。
「……まあ、いいか。……ん。言うなよ」
「うん」
「大好きって言っとけ」
「――――……」
その言葉に、ちょっと眉が寄ってしまう。
「ほら、言ってみな」
「――――……」
改めてそんな風に求められると、ものすごく恥ずかしいというか。
そんな素直に言える訳もない。
「早く」
そう言われて。む、としながら。
「――――……大、好き……」
ぼそっと言うと。
ルカは、一瞬固まってオレを見つめて。
お前……と笑い出した。
「可愛く言えないのかよ、もっと」
「……急にそんな事求められても、無理」
「急にじゃなきゃいいのか?」
「……どういう意味??」
「あとでゆっくり言わせるからいいや」
「……ど、ういう意味?」
ちょっと引きながら同じ言葉を繰り返すと、ルカは、オレを見て、可笑しそうにまた笑う。
「分かってそうな言い方だよな」
よしよしと大きな手が、頭を撫でる。
「早くオレの部屋に、帰ろうぜ」
「……っ無理やり言わせるのはどうかと思うからね」
そう言うと、ふ、と笑って、スルーされる。
「無理やりは良くないんだからね??」
「分かったって。無理やりじゃなきゃいいんだろ?」
「――――……」
ベッドの上で、言わせる気なら、それは無理やりと言うのだからね、と思うけど、そんな事は口にできない。むむむむ、と睨んでると。
「お前さー」
クスクス笑いながら、ルカが斜めに見下ろしてくる。
「……ほんと、バカだな、ソラ」
「……何がだよっ」
「そんな顔して焦るから、余計、からかいたくなるんだって」
ルカの右手が、オレの顎から頬にかかって。ぶに、と口を突き出されるみたいな、変な顔にされる。
「やめ――――……」
その手を離させようとしたら。
そのまま引き寄せられて。唇が、重なってきた。
すぐに頬を潰されてた手は外されて、舌で、唇、なぞられる。
口、開けろって、事だろうけど。
……ムカつくから開けてやるもんか。からかってばっかで、もう。
そう思って、頑なに唇、閉じてると。
ルカがクスッと笑うのが分かった。
ぐい、とルカの腕に抱き寄せられて。すごく密着したと思ったら。背中に触れたルカの手が、背筋に沿って、すぅっとなぞった。
「……っあ」
ぞくん、として。びっくりして開いた唇に、舌がねじ込まれて。
「……ぅ、んっ――――……」
う、わ、卑怯だ。
ずるい、ルカ、くすぐるとか、無しだって。
ずるいと言いたくて、引き離そうと藻掻くけど。抱き込まれて、覆いかぶさるみたいにキスされて。舌、口の中で好きなように動かれて。
「……っん、ン……――――……ン、ぁ……」
もう完全に動けない。………ルカ、ずるい。
涙が滲む目をこじ開けて、ムカつく勇者をちょっと睨むけど。
ルカの後ろに、綺麗な月が、滲む。
涙で滲んでるせいか、ものすごく綺麗に、浮かんで見える。
外で、キスされながら。月に見惚れるとか。
「――――……ンん……る、か」
名を呼ぶと。
ルカが瞳を開いて、オレを見て。ふ、と瞳を細めて笑んで。
なんか、なんか。……とっても、ずるくてムカつくのだけど。
……自然と手が動いて。ルカに、しがみついて、しまった。
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