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第2章
「縁のない」
しおりを挟む「ていうか、いいの、王子なのに、そんな事言って」
そう言ったら、ルカはクッと笑って。
「魔王さえ倒せば魔物も居なくなるだろうし。オレが居なくても何とかなるだろ」
「……でも。魔王倒したら、ルカは王様になるんでしょ」
「魔王倒せば、そんなのもいらねーかもだし」
「――――……」
「何にせよ、倒すまでは無理だけどな」
「――――……」
「見てみたいしな。ソラの世界」
「……でもオレの世界、色々めんどくさいよ?」
「ふうん……?」
「戸籍とかないと色々大変だし。ルカ目立つからひっそり生きるとか無理だろうし……こっちみたいに広くて、自由で、誰でも受け入れてくれたりしないよ?」
「――――……」
黙って聞いてたルカが、よく分かんねえけど、と、可笑しそうに笑ってオレをぐりぐり撫でた。
「お前が聞いたから答えたんだけど。まあ。ちょっと考えただけ。スマホ? 使ってみたいとか」
「あ、スマホ?」
そうなんだ、とちょっと笑ってしまう。
「行き来できたらいいけど、そんな魔法は知らねーしなぁ。……つか、あんのかな、そんな魔法も、もしかして。知らねーだけか……」
「……どうなんだろ」
魔法かあ。
……魔法ねぇ。
未知だから、ないとも言えないし。ルカが分かんないのにオレが分かる訳ないしな。
……とりあえず、なんかルカは。やっぱりすごい自由だなーと驚いた。
オレの世界に行ってみたい、魔王倒してれば、王子でもあっち行くの?
オレが居るなら……。
……オレが居れば、見た事もない世界にでも、来てくれる選択肢も、あるのか。と思うと。変なの。ルカって。
と思いながら、やっぱり嬉しいと思ってしまう。
ルカを、父さんや母さんや兄貴に、紹介したら。
皆、何て言うかなあ。
すっごい驚くだろうなあ。
……ルカは、結婚するとか言っちゃいそうだから。
余計ものすごく、驚かせるかも。
こんな強そうな、得体のしれない自信満々の人に、オレが連れ去られてしまう……とか。うーん、絶対、すごい心配されそう。
――――……なんて。そんな変な絵まで浮かんで。
んな事あるはずないし、と、自分で突っ込んでいると。
遠くから、王子ー!と呼ぶ声。
「いいよ、行ってきて。オレ、適当に色んな人と話してるし。ミウと遊んでるし」
「――――……ん。また来る」
クス、と笑って、オレの頭をぐりぐり撫でて、ルカが歩いていく。
その後ろ姿と、ルカを待ってるたくさんの人達の笑顔。
王子。
――――……ここに来たら、ルカがめちゃくちゃ「王子」って呼ばれるのをよく聞く。
リアたちは王子って呼ばないし、まあ町の偉い人達は、王子って呼んでたような気もするけど、ほとんどの人が、ルカって呼んでたし。
王子、か。
うーん、ほんと、改めて思うけど。縁のない人種。
勇者も。魔王もだけど。
……ていうか、剣士も魔法使いも騎士も、だけど。
なんて考えていたら。
ルカが来てから、ふわふわと空に浮かんでいた、なんだか空気を読んでる、可愛い可愛いミウが、ぽふ、とオレの膝に収まった。
「――――……つか、お前もだなあ~」
クスクス笑ってしまう。
こんな空飛ぶ、ふわふわの可愛い生き物も。
ほんとなら、縁のない生き物。
はー可愛い。
「明日かな明後日かなー。海に出るんだって。ミウは、海知ってる?」
「みゃ」
「……知ってる??」
「みゃ?」
……頷いたりはしないんだよなあ。
分かってるのか分かってないのか、分からない。
でも果てしなく可愛い。
「ルカが、ミウも連れてくって言ってたからさ。一緒に行こうね?」
「みゃ」
――――……今のはなんか、頷いたような、気がするような。
「ミウが好きな食べ物も持って行こうね」
よしよし、とナデナデしながら、テーブルにあるものを、少しずつ手に乗せる。
「何でも食べる気がするけど、ほんとは何が好きなのかな~?」
少しずつ食べさせながら、反応を見ようと思うのだけど、うーん、何食べさせても、ひたすら可愛いだけ。
「……なんでもいいか、ミウは」
クスクス笑うと、また嬉しそうだから、余計にこちらも笑ってしまう。
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