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第2章

「選べるなら?」

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「なあ、ソラ」
「ん?」

「例えばさ」
「うん」

 急にマジメな顔をして、オレを見つめるので、オレも、まっすぐルカの瞳を見つめる。


「元の世界に帰るか、こっちに残るかて、選べと言われたら何て答える?」
「――――……オレが、決めれるとしてだよね……?」

 なんか、皆にも言ってたよね、それ。


「そう。選べるなら。何て、答える?」


 そんな事、ルカが言うまで、思ってもみなかったんだよね。

 だって、来る時、完全に意志は無視だったから。
 戻れるとしてもそうなんじゃないかと思ってるし。

 残るにしても、帰れないから残るだけ。
 とにかく、完全に受け身だと思ってた。


 今も、そう思ってる。決められる訳、ないような。


 でも多分、ルカが聞きたいのはそういうことじゃないんだろうな。
 実際出来るかとかじゃなくて。

 オレが、どっちを選ぶ気があるのか。それだけ。


「――――……」


 少し考えてみるけど。
 即答は出来ない位、何だか色んな考えが浮かんでくる。


「――――……ルカ、怒んないでね?」

「何いっても、怒らねえよ」


「……ルカ達と居るのは楽しくて、もう帰れないなら、ここで生きてくのもありかなとか。頑張って生きようとか。そう思う位な気持ちは、ある」
「ん」

「でも、向こうには、家族や友達も居るし……」
「ん」

「特に家族は――――……オレが居なくなって、心配してるのかなって考えると、結構……辛い」
「ああ」

「……来たばかりの時なら、向こうに帰りたいって即答したと思う」
「そうだよな」

 でも。
 ……でも。今は……。


「――――……今は、どうしようかなって、迷う位には……」
「――――……」


「……こっちの世界も、好きみたいで……」

 ルカがしばらくオレを見つめて。
 それから、ふ、と笑んだ。その手がオレの頬に触れる。


「……ソラ」
「――――……」

「オレと一緒に、居たいって、思う?」
「……思うってば。何回も言ってるでしょ。…………なんでか、分かんない、けど」

 最後そうくっつけて言うと、ルカは、クッと笑って、ぶに、と頬を摘まんだ。

「最後の余計だろーが」
「……だって」

 男だし。えらそーだし。横暴だし。……ほんと。……エロいし。
 男のオレを、めちゃくちゃ、抱くし。
 ほんとなら全然、意味わかんないようなとこだしさ。

 一体どーして、こんなに嫌じゃなくて。
 今まで20年も生きてたきた世界と比べても。
 こんなに僅か何日かしか過ごしてないのに

 こっちかむこうかと聞かれて、どうしようと悩むのか。
 

 魔王とか魔物とか怖いし、冒険とか大変だし、正直、ここに居たいと思うなんて。自分でも全然意味、分からないけど。


 でも、オレ、向こうに帰りたいって、やっぱり、即答できない。
 ただ、困るのは、こっちに絶対残りたいとも、即答できないこと。


 戻れないなら、ここで生きていこうって覚悟したけど。
 後悔しないように、ちゃんとここで生きようって思ったけど。

 戻れるとしたら、なんて選択肢が増えちゃうと。
 うぅ……すっごく困る。

 生きてきて、一度も考えた事のないことだもんなあ……。
 二つの異なる世界で、どっちで生きてくかなんて。
 考えた事ある奴 ……居ないよね?

 オレが知らなかっただけで、結構居るのかな。
 うーん、確かめようもないな。


 うんうん悩んでいると、ルカが、隣でぷ、と吹き出した。


「悪かった」
「え?」

「ソラに難しい事考えさせた」
「何それ、超失礼」

 むーー、とルカを睨むと。

「選べるならどーすんのかなって、お前にも聞いてみたくなっただけだからいーよ、もう考えなくて。まあ普通、そんなの選べねえだろうし」

 ふ、と笑って、ルカが話しを終えようとしてる。


 ……オレそんなに難しい顔してたのかな。


「じゃあ、ルカは?」
「ん?」

「……オレと一緒にオレの世界に来るか、オレと別れて、こっちに残るかって聞かれたら、どうする?」

 …………まあルカは王子だし。
 ――――……この世界を捨てるなんて、出来ないだろうけど。


「……ふうん」


 ルカはすごく面白そうに笑う。


「聞きたいか? それ」

 クスクス笑って、ルカが、そーだな……と考えて。
 すぐに。

「魔王を倒してなかったら、放ってはいけないから、倒すまではいけない。倒してるなら、お前と行ってもいいよ」
「――――……」

「待てるなら、魔王を倒すまで待っててもらう」

「――――……え。……倒せてたら、オレと、行ってくれるの?」

「いーよ。 違う世界、見てみてえし。ソラがいるなら」


 びっくりしてるオレに。

 いとも簡単に。
 ――――……ルカは、そう言った。





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