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第2章

「嫌いって」

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「そうなんだよなー、ほんと、可愛がり過ぎなんだよ」

 ゴウが大きく頷きながら、レジーにそんなことを言う。

「そうなのよ、だってあたしがちょっとソラに触ると、文句言うしねー」
「そうそう。オレもこないだものすごい強いお酒飲んで、ソラに倒れたら、それはそれはルカが怒って、ソラを連れ帰ったらしいし」

 リアとキースも、絶対完全に面白がってるし。

「まあ。なんとなく、分かりました。分かりやすくて、安心するんでしょうね、王子」

「……安心?」
 レジーに言われた言葉をつぶやきながら、ルカがオレを見下ろす。

「まあ……確かに、するけど、安心」

 見つめ合ってると、クスクス笑われる。

「まあ別に安心するから、可愛いわけじゃねえけど」
 頬をすり、と撫でられる。

「っ可愛くないし。オレ、年上だかんね! ルカ!」
「――――……あ」

「……何、あって」
「――――……忘れてた」

「……っっっ!」

「そういやそうなんだよな。その話、何回しても、忘れる」
「……く……」


 なんてムカつくんだろう。
 レジーまで、「え、年上なんですか?」と驚いてるし、それを聞いて、皆は笑うし。

「まあいいじゃんか。可愛いってことだ」
 ルカにめちゃくちゃヨシヨシと撫でられる。

「オレ、ルカ、嫌い……」

 ぷい、と顔を背けた瞬間。
 ひょい、と抱き上げられて。

「うわ」

 ルカを下に見て、驚いて固まってると。


「――――……取り消せ」
「え?」

 取り消す? 何を?


「あ。 ……嫌いって?」
「――――……」

 返事もしないで、む、とオレを見上げてくる。
 嫌いって言葉。ほんと敏感。――――……何で?

 そんな嫌われた事、無いだろうに。


「次は言うなって、言ったろ」


 ――――……あ。言われた。
 次言ったら覚悟しろって。

 ……温泉で喧嘩した時だ。


「う……取り、消す……」


 オレがそう言うと、ルカは、オレに一度キスして。
 それから、とん、とオレを降ろした。


 ――――……日本でこんなこと急にしたら、完全に変な人ですけど。

 なんでだか、ここでルカがしても、誰も変にはしないし。
 ――――……なんかオレも、まあいっかと……。


 ほんと。変なの。

 

「嫌い、言うなって言ったろ」
「……ん、ごめん。――――……でも、ルカが悪いんじゃん」

「何でオレが悪いんだよ」

「オレの年……」
「だってお前、年上になんか見えねーんだもん。仕方ないじゃんか」

「……っっっそれがムカつくから言ったんじゃん!」

「ムカついたならそういえばいいだけだろ。嫌いなのかよ」
「……っっっ嫌いって言いたくなるじゃん」

「何、そんなんで嫌いなの?」
「……っじゃないけど!」

「嫌いじゃないなら、嫌いとか言うなっつってんだよ」
「――――……っ」

 言いたいことは、分かるけど。
 もとはといえば、ルカが……っっ。


「っ――――……嫌いは、言わなきゃいいんだよね」
「おう」

 ふ、と笑うルカ。


「……じゃあ、年下のくせに、えらそーで、すっごいやだ」

 そう言ったら。


「――――……ふーん」

 ニヤとルカは笑って。


「じゃあソラは、年上のくせに、なんか幼くて、危なっかしくて、いっつも捕まったり、いっつもアホで、ぎゃあぎゃあ喚いてうるさくて――――……」
「……っっっ」

 超ムカつく!と睨んでるオレの頬を、ぶに、と摘まんで。

「……まあ、だけど」
「――――……っっ」


「なんか、すげー可愛いから、許すけど」
「…………………っ」


 この一連の会話、全く意味が分からない。


「あほらし。ただ、イチャイチャしてるだけだな。先行ってるぞー」

 ゴウが言って、皆がやれやれといった雰囲気で、歩き出す。


「やだ、オレも行く!」

 ルカから離れて、皆に駆け寄る。


「あ。逃げンな、ソラ」
「もーやだ、全然意味わかんないし」

「なんかオレ変なこと言ったか?」
「――――……変なことしか言ってないし」


 飛んでたミウが腕の中に戻ってくるので、それをモフモフして、心を落ち着かせていると。


 呼んでないのに隣にきたルカに、ヨシヨシされる。




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