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第2章
「大事ってこと」
しおりを挟む城の中はとにかくめちゃくちゃ広くて、人がいっぱい居た。
大事な所にはすぐに辿り着けないように入り組んでるらしくて、もうそれはそれは、めっちゃ歩いた。
「結構見て回ったけど。もういいか?」
「うん。今はもういい……つかさ、ルカは疲れないの? オレもう、すごく疲れた」
「旅してる時とか、もっと歩くからな。つか、軟弱だな、ソラ」
「……もしかして、リアも結構歩くの?」
「リアのがお前よりよっぽど歩けるんじゃねえの」
「――――……その内鍛えます……」
「その内って。鍛える気、ねーだろ」
クスクス笑われながら。
一旦城を出る事になった。
外から見ると、でっかくて、なんか真四角みたいに見えるのに。
なんか、この中が、あんなに入り組んでるとか。
すごい不思議。
「ねー、ルカ、そういえばさ」
「ん?」
「船ってさ、日帰り?」
「いや。分かんねえな。どこに何がいるんだか分かんねえし」
「船の中に、泊まるの?」
「そうなるな。あの船、それ用にもできてたぞ」
「そうなんだ」
「何日か過ごして……食料とかも積んでくから。あ、ソラ」
「うん?」
「飯、作れよ」
「ん?」
「保存のきくものとか中心に、色々積んでって、船の中で調理。出来るか?」
「え」
頭の中で、ルカが言った事を色々考えて。
「じゃあ、ジェイとかにも聞いて、色々持ち込む物とか、食材とか、確かめていい?」
「良いに決まってるだろ」
オレが嬉しくなって聞くと、ルカも何だか嬉しそうな。面白そうな顔でそう言う。
「まだ料理してないから、こっちの食べ物がよく分かんないんだけど」
……みんな茶色になってるし。もとは何色なんだろうってとこから、よく分からないし。
「じゃあ明日帰ったら、ジェイとそこら辺は色々話して教えてもらえよ」
「うん!」
わあ。なんか。
船の旅とか。オレ、正直、邪魔なだけなんじゃないかと思っていたから。
やる事できるって。
しかも皆のご飯の用意するって。
すっごい嬉しいかもしれない。
「――――……」
足取りまで軽くなって、ウキウキ歩いていると、ふ、とオレを見下ろしたルカに、笑われて。
「……何?」
「元気になったな?」
「あ。うん。なったかも」
言うと、クスクス笑われて。
「だって、なんかいっつもさ、助けられてばっかな気がするから」
「――――……」
「ご飯作れるって、助けてる事になるよね?」
「ん。すげーなる。うまければ、なおさら」
「頑張る!」
なんかもう、楽しくてしょうがない気分になってきて、早くジェイの所に行きたいなあ、なんて思っていたら。
ぐい、と引かれて、ルカの腕の中。
「え?」
またしても、城から町へ続く、道のど真ん中、なんですけど。
そんなに人は居ないけど。
「ルカ?」
「お前さ、別に料理しなくても」
「うん?」
「ソラが居るだけで、オレ、元気になるけど?」
「――――……」
「……お前が居ない時も、別につまんなかった訳じゃねえけどな。でも、リアもキースもゴウも、お前が来てから、楽しそうだし」
「――――……」
「お前のことが大事だから助けるんだし」
「――――……」
「助けられてばっかりとか、言うなよな」
まっすぐな瞳で見つめられて、そんな風に言われて。
どく、と心臓が弾む。――――……絶対今、ものすごい、喜んでる。オレ。
ふ、と笑んだルカに、ちゅ、とキスされる。
「な?」
「――――……うん」
うわ。
なんかオレ。
ちょっと泣きそうな位。
嬉しい、かもしれない。
「あーまたくっついてるー」
少し離れた所から、リアの声。駆け寄ってくる足音がして、振り返る。
「ほんと常にひっついてるな」
「見慣れたよね」
ゴウとキースも笑いながら、言う。
「ソラ、なんか嬉しそう」
リアはいつでも鋭くて、オレ見てすぐそんな風に言って笑う。
「ミウが広場で子供達に思い切りモフモフ撫でられてたよ」
キースがクスクス笑う。
「宴の準備も進んでるから、お前ら探しに来たんだよ」
ゴウが言うと、「じゃあ行こうぜ」とルカが歩き出しながら、オレを振り返る。
――――……会ってそんなに経たないのに。
オレ、皆が、すごく、大事になってる。
ほんと不思議だけど。
皆が、大好きって事だけは、分かる。
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