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第2章

「広い心?」

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 ルカにくっついて、宝物庫に連れて行ってもらう間。
 所々で会う城の人が、皆、嬉しそうにルカに話しかける。

 何度も中断されながら、少しずつ移動。


「……ソラ、何か怒ってるか?」
「……いいえ」

 そんな言い方で答えると、は、と笑って、ルカはオレの腕を引く。


「場所知らないくせに、先行くなよ」
「――――……」

「なかなか進まないから怒ってんのか?」

 クスクス笑いながら、ルカがオレを見下ろしてくる。


「……そうじゃない」

 そんな事で怒ってないもん。
 久しぶりなんだろうし、ルカも相手も楽しそうだし。それで良いと思うし。


「じゃあなんでムッとしてんだ?」
「…………」


 たまに現れる女の子達は、ルカの腕や体に、自然と触れる。
 あんなに触るかー? 普通の関係で。

 もうあれ、触ってた全員そういう関係なんじゃねーの。もー。
 別に良いですけど。オレも女の子と付き合ってたし。全然良いけど。


「ソラ」

 ぐい、と引かれて、キスされる。


「――――……」

 口開けないで、むー、としてると。
 ルカはおかしそうに、クッと笑い出して。キスを外して、オレの肩に手を回した。


「ほら、もうすぐ着くぞ」

 くねくね階段を下りたり登ったり、迷路みたいな場所を一緒に歩いて、ようやく着いた。
 ルカの呪文で扉が開く。


「迷路みたいなのは何で?」
「ああ。なかなか辿りつかないように」

「――――……だって、ルカの呪文で開くんでしょ?」
「……ん、まあ。でもあれなんだよな。オレが完全に意識を失ったりすると、結界とかも一瞬解けちまうから。寝てる位なら大丈夫なんだけどな。……つか、怒ってたの、どーした?」

 くす、と笑うルカに、じっと見つめられる。


「言えよ、怒ってないで、ちゃんと」

 顎を掴まれて、見上げさせられる。


「……ルカ、触られ過ぎ」
「――――……ん、ああ。なるほど」

 く、と笑うルカ。

「嫌だったのか?」
「……別に」

 言いながらも、ジト目で見上げると。

「別にオレから触ってた訳じゃねーだろ」
「――――……」

 そうですけど。

「オレも別に女の子と付き合ってたし、文句言う事じゃない、と思ってるけど」
「けど?」

「……何かムカつく?」
「――――……ふうん?」

 ルカは面白そうに瞳を細めて、オレを覗き込む。


「……まあ、オレも今の発言死ぬほどムカつくから、ほんとならお仕置きタイムだけど……」
「え……どれ?? どの発言?」

「女の子と付き合ってたし、てやつ」
「えっ。それ、死ぬほどムカつくの?」
「んー、まぁ、そうだな」

「……過去の話だし。ていうか、オレがムカつくのは、今触られてるからだし」
「ムカつくのに、過去とか関係ねーけどな」
「…………ルカってさー、そんなに心狭くて、いいの? 王子なんだからさ、もっと心広く……」

 ぷ、と笑い出したルカに引き寄せられて、上からまっすぐ見下ろされる。


「オレ、他の奴には心広いから、大丈夫」
「――――……」

 ゆっくりキスされて、ルカが、離れる。


「ソラに対してだって、心広いだろ?」
「――――……」

 まあ、確かに、広い時もあるんだけど。何でもして良いぞ、みたいな。何でもやってやるぞ、みたいな。

 いやでもな……?

「オレが心狭いの、ソラのそういう関係にだけだから。王子としては、全く問題ねえな」

 当たり前の事のように、堂々と言ってるルカをまじまじと見てしまう。

「……オレのそう言うのも、心広くあってくれてもいいんじゃ……」

 だって別にオレ、今そういう事しようとか、一切思ってないし。
 しかも今話してたのなんか、超過去の話だし。そう思っていると。

「無理だな」

 きっぱり言い切られて、キスされる。
 ……なんだかもう、文句言う気を削がれる。


「そんだけ、オレのって思ってるって事だから。オレが心広くなったら、どーでもいいって事だけど。いいのか?」

 ……それは。良くない。かもしれない。けど。


「極端なんだよー、ルカー」

 少し困りながら言うと。面白そうに笑って、一度キスしてから、ルカはくる、とオレの向きを変えさせて、部屋に向かわせた。


「ほら。中見なくていいのか?」

 目の前は、思ってたような感じではなかった。よく漫画とかで見るような、キラキラした金銀財宝がむきだしで置いてあるわけじゃなくて。

 ……ていうか、まあ、そりゃそうか。


 色んな大きさの箱が、たくさん置いてある。


「開けて見てもいいの?」

 ウキウキしながら聞くと。

「当たり前。だめなら、連れてこねえよ」

 ふ、と笑われて、オッケイを貰えた。


 やったー!
 ウキウキワクワクしながら、中に足を踏み入れた。


 




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