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第2章

番外編◆バレンタインss 5

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 宿に来て、部屋に入ると、クッキーをテーブルに置いてからオレを抱き締めた。

「後で食べるから」
「……うん」

「一緒に食う? お前の心臓」
「……変じゃない? それ」

 ぷ、と笑うと、ルカも楽しそうに笑う。


「風呂入る?」
「――――……便利なのあるじゃん、ルカ。魔法……」

「便利とか言うな」
「――――……便利だもん」

 く、とルカが笑う振動が、体を伝って、感じる。

 変なの。
 ――――……バレンタインの真似事なんかして。

 ハート、ルカにあげて。
 ……喜んでくれてるみたいなのが、こんな、ほっこりするとか。

 深く重なるキス。

「……ルカ」
「んだよ?」
 
 キスを離すと、不満そうに、ルカがまた近づいてこようとするのだけど。

「………ルカが好きだよ」
「――――……それ、告白?」

「うん。バレンタインだから」


 言うと、ひょい、と抱き上げられて、そのまま歩かれて。
 ベッドに背を、沈められる。

 着ていたものを邪魔そうに脱いで、上半身、裸のルカが、押し乗ってくる。
 脱いだルカに、死ぬほど、ドキドキするとか。

 こっちは言いたくないけど。



 ――――……好き。なんだろうな、オレ……。
 この、エロエロな偉そうな、死ぬほどヤキモチやきの、勇者の王子。

 ……何でだろ。

 ちょっと可笑しくなってしまうのだけど。


 ――――……オレの上に居るルカが、キスしながら触れてくると。
 もうドキドキが死にそうになるから。

 好きなんだろうなと、実感する。



「ソラ――――……」


 ……こういう時、呼んでくる、ルカの甘ったるい声も好きなんだと。思う。
 

 ――――……キスされて、ぎゅう、としがみついて。
 全部、ルカだけ。になっていく気がする。



 たくさん、キスされて、触れられて、真っ白になってって。
 中、ルカでいっぱいにされても、気持ち良いしか、無い。

 ルカがすること、全部、おかしい位に気持ち良くて。
 ――――……涙が、溢れるけど、これは……。


「……っン、――――…… ル、カ……」


 名前を呼ぶと、下の方に居たルカが、ぐい、と突き上げながら、オレの真上に移動してきて。オレを見下ろす。

「は――――……また、めちゃくちゃ泣いてる」

 笑って言いながら、ルカが、オレの涙を舐め取る。


「ルカ……」
 ぎゅ、としがみつく。

 逞しい、こんな、男に組み敷かれて。
 その体に、しがみついて。

 ……嫌がるどころか、胸がときめく日が来るとか。マジで、謎すぎる。


「――――……ソラ……」


 オレの名前を呼んで、深く、オレの中に自らを押し込んで。
 のけ反った唇を深く塞がれる。


「……んん、ん、ぅ……ぁ」
「――――……ソラ……」

 何か、もう、何もかも全部が、ルカと密着してるみたいで。
 気持ちいいのが、半端なくて。


「……んっ、……ぅ、ン……っ――――……っ」

 動かれても無いのに、目の奥、チカチカして、真っ白になって。


「っ……は、あ……っ……」
「――――……中、締めすぎ。ソラ」

「だっ、て……っ」

 ボロボロ涙で、ルカがぼやける。
 なんか優しく笑ったのが、ぼんやり分かる。

  
「――――……可愛い、お前」

 熱い息と共に囁かれながら、キスされる。


「……ん、っ、ふ……――――…… ルカ……」



 もうほんと。世界全部が。
 ――――……ルカだけになる。
 
 



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 結局その日はクッキーは食べれず。
 翌朝、2人で食べることになった。


 ――――……「特別」な事して、許してもらったはずなのに、めっちゃしてるの長かった。ていうか、全然許された気がしなかった、と文句を言ったら。

 お前が告白したり、ハートがどうのとか、可愛かったから悪い。とか言われ。

 オレのせいなの?と、悩んだり。

 あと、ホワイトデーについて説明すべきか?
 いやでも、なんかおかしなお礼が飛んできそうだなー……と。
 とっても悩む、クッキータイムだったけど。


 結局2人で、楽しくハートを食べて。

 なんだかんだで、幸せだったから。
 まあ、いっか。

 なんて、思った。





 -Fin-







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