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第2章
番外編◆バレンタインss 2
しおりを挟むふっと、隣のルカを見上げると。
何だか、すごく、楽しそうにオレを見る。
「……何?」
楽しそう、というか。
なんか、すごくニコニコしすぎてて、なんか。
ちょっと怖い……。
「バレンタインしろよ」
「え?」
「オレにだけでいいから」
「……ルカにだけ?」
また意味の分からない事を、嬉しそうに言い出した。
「お前、普段好きとか、全然言わねーし」
そうだっけ? たまには言ってないっけ??
「チョコレート、ないけど……」
「別にそこは何でもいいよ。そのチョコレートって奴でなくても」
一番メインのチョコを、 何でもいいと言われてしまった。
「何か、すごいもん作って、持ってこいよ」
「すごいもの??」
なんだろ、すごいものって。どういう事?
「……すごいものじゃなかったら、どうするの?」
「――――……朝まで寝かせない」
「え、なにそれ……え、じゃあすごいもの作る!」
「まあ頑張れよ?」
剥いてたチョコの実をオレの前に積んで。
「特別な物じゃなかったら、覚悟しとけよ」
そう言って、ルカは自分の食事を再開した。
――――……え。どういうこと。何で??
今のやりとり、何??
全然意味、わかんないんだけど。
「飲み物頼んでくる」
そう言って、ルカが離れた瞬間。
「ぇ、なんで、特別って何? 今のルカ、何?」
皆に顔を寄せて聞いたら。
皆、呆れたようにオレを見る。
「ソラが嬉しそうに告白された話とか、するからだよ」
リアの言葉に、ゴウとキースが笑って。
「何でお前、気づかねーの?」
「もう、話の途中から、オレはルカを見てたけどね……」
そんな事を言ってくる。
「……だって、すごい昔の話だったし」
オレがそう言うと、バカだなーソラ、と口々に言われる。
「ルカが嫉妬すんの、まだわかんないの?」
……そんな過去にまでとは、分からなかった……。
飲み物を持って帰って来たルカが、隣に座って、オレを見る。
「何作ってくれるか、楽しみにしてるから」
目力すごいし。
……もう。
何なんだ。ルカ。
皆が、苦笑いを浮かべてるのも、目の端っこに移る。
何作れば、許してもらえるんだろう……。
めちゃくちゃ考えながら、チョコの実をモグモグ食べ続けた。
◇ ◇ ◇ ◇
で、オレはまたしても、ジェイの所でお菓子を作る事になった。ルカに言われて、また、ミウもセットで一緒に。
オレをここに連れてきた時に、リアが事情を話していたので、ジェイは、悩んでるオレを見て、ものすごいおかしそうに笑う。
「ルカの前で、誰かに好きって言われたとか嬉しそうに話したら、ダメに決まってるだろ」
「……すごい昔の話なんだけど」
「オレでも分かるのに、何でお前は分かんないの」
「だって、すごい昔の話だから。関係ないんだもん、今……」
「そこが関係あるのがルカじゃん」
クックッと笑われて、プルプルと首を振る。
「もうさあ、正直、顔もよく覚えてない位なんだよ。そんなのさ、今に関係ないじゃん……」
「……まあ、オレも関係ないと思うから、ソラの言いたい事も分かるけど」
「でしょー???」
「でも、相手がルカだから――――……ソラはアホだなあ、としか、いいようがない」
「――――……」
「ルカだぜ? ダメだろ、嬉しそうにそれ話しちゃ」
「……いいのか、王子がそんなに、心狭くて」
「まあ……心狭いっつーか。ソラの事が大好きすぎるというか……?」
「はー……」
ため息をつくと、くっと笑われて。
「んで、何作んの。特別なものじゃないといけないんだろ?」
「――――……特別なものって、なんだようー」
「さあ……? 何だろうなあ?」
「だって何回か焼いたり作ったりしてるのと同じ物じゃだめだよねえ? 特別じゃないもんね?」
「そう、だなあ……」
「もう、ルカの顔型のクッキーでも作ろうかと思ったけど」
「――――……」
「……多分、それじゃ許されない気がして……」
ブッと吹き出して、ジェイが大笑いしてる。
しばらく笑ってるのを放置。
「はー、おもしろ。……ルカじゃなくて、ソラの顔で作れば? 許されるんじゃないか?」
「……いや。それも違うでしょ…… クッキーのオレまで、ルカに食べられたくない」
「何だよそれ」
言ってまた笑い出すジェイ。
「あー、すっげえ面白いな、お前」
「……笑いすぎなんだよっもう! オレは、今すっごく真剣に考えてんだからね!」
「真剣みたいだから面白いんじゃん」
あっはっは。
――――……めっちゃ笑われて、むむむ、と膨れて。
はー。
とため息。
もう、何したらいいんだろう。
この世界で、バレンタインで、特別。
特別……。
うーんうーんーうーん……。
作り始める事も出来ずに、延々考えてしまう。
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