上 下
173 / 293
第2章

「隣に」

しおりを挟む

「うっわー、すごい!」

 ルカに連れてこられたのは、城の屋上。
 他に高い建物が無いから、ものすっごく遠くまで見晴らせるし、下を見れば城下町。人がちっちゃい。

「ここ、すごいね。山の頂上にいるみたい」
「見晴らし、良いだろ」
「うん。すごい」

 すごいしか、出てこない。

「お前の世界には無いのか、こういうとこ」
「んー……オレの世界の方が、高い建物がいっぱいあるんだよ。だから、こんなに空が広くないし……お城なんて、無いよ」
「城じゃない高い建物がいっぱい?」
「うん。んー……」

 足元に砂がすこし積もってる。
 指先で、四角いビルの絵を描いてみる。

「こういう四角いでっかい建物がいっぱい建ってる」
「ふうん……?」

「ルカがオレの世界に行ったら、目立つと思う」
「何で?」

「あんまり居ないから」

 ルカを見上げると。


「どーいう意味?」

 しゃがんでるオレを見下ろして、くす、と笑う。


「見た目も目立つし。こんな偉そうな人いないかな……」
「偉そうって何だよ」

 ふ、と笑いながら、ルカがオレの手を引いて、立たせる。


「偉そうでしょ」
「そうか?」

「そうだよ」
「まあ……偉いからな?」

「――――……そうだね」


 くす、と笑ってしまう。
 ルカっぽいな。

 ルカは、オレの頬に触れて、何だかちょっとムッとした。

「……なに??」
「――――……やっぱりあんま情報無かったな」
「……?」

「他の世界、聞いた事ねえから、そうかもしれないとは思ってたけど」
「ああ……うん」

「魔王が現れた時と一緒って言われても、魔王に聞けないしな」
「うん……」

 ……魔王も、どこか違う世界から来たって事、なのかなあ。 

 ――――……オレと同じ世界から? でもなあ。オレ、あんな人、知らないし。関わりは無いもんな。もし魔王に話が聞けても、お互い飛んできたんだねあっはっは、で終わる気がする……。

 ああ、でも――――……もしそうなら、夢でないって事だけは、確定するのかな。でもどっちにしても……。


「――――……まあ今んとこ大した情報はねえけど」
「……っぅわ」

 ひょい、と抱き上げられて。
 ちょっとびっくりしたまま。面白そうに笑ってるルカを見下ろす。


「何にしても、側に居させるし、居なくなったら探すから、覚えとけよ」
「――――……うん。わかった」



「ソラ」

 とん、と地面に降ろされて。
 今度は、ルカを見上げると。まっすぐに、真剣に、見つめられる。


「どこから何で連れてこられたか分かんねえけど」
「――――……」

「……今お前、居なくなったら……」
「――――……」

「……居なくなったら――――……」
「……居なく、なったら?」

 ドキドキ。
 居なくなったら、何だろう。


「……居なくなっても、まあ死にはしねえか。 んー。泣く……泣かねえかな。……何だろうな」
「……っ」

 何だそれ、からかってんの??
 マジメにドキドキして聞いてたのにー!

「あー待て待て、怒んな」

 くー離せー!
 ぐいと腕を引かれて、すぽ、と抱き締められた。


「――――……死なねえし、泣きはしねえけど」
「…………っ」

 まだ言うのっ もう、何なんだっ!

 居なくなったら死んじゃうとか、居なくなったら泣いちゃうとか、嘘でも言っといてくれたらいいのに。……って、絶対ルカはそんなタイプじゃないの、分かってるけどっ……!



「……ソラを見つけるまで、何があっても、どんな手ぇ使っても、探す」
「――――……」

「絶対、探す」
「……見つからなかったら?」


「オレが死ぬまで、ずっと探すから、ソラも絶対ぇ忘れんなよ」
「――――……」


「返事は?」

 
 ムカついてたのの反転。

 なんか泣きそうになって。
 声が、出なくて。


 黙ったまま、頷いたら。



 ふ、と笑ったルカが。



「オレ、お前が隣に居ねえの、無理だから」



 ……無理?
 ――――……オレが、隣に居ないのは、無理?




「――――……も、いい、分かった」



 ――――……なんか、ほんとに、泣きそう。



 ふ、と息をついてから。
 ルカの胸元の服、掴んで、少し引いて。


 黙ったまま。
 キス、した。
 












(2022/2/7)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆

◇ ◇ ◇ ◇

もうおわすれかと思うんですが……💦わーん、すみませんー! 

ずーっと昔にルカのセリフのリクエスト募集した時の。

第4弾。「セリフは何でも良いので、
いつも、自信満々のルカの弱ったセリフを所望」にお応えして♡

でも、死なないし泣かないしって……。
ルカが思うように弱気セリフ言ってくれなくて困りました(*´ω`)(笑)

ありがとうございました♡
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

代わりにくらいなれると思った

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:1,634

召喚勇者の餌として転生させられました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,681pt お気に入り:2,252

出会ってはいけなかった恋

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:23,019pt お気に入り:745

ルピナスの花束

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:538

淫魔とドスケベ同棲生活♡ ~亮介×ゼノの場合~

BL / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:131

処理中です...