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第2章

「ルカのせい」

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 外も。中も、便利な魔法で一瞬で清められて。
 パッと見は、される前の状態に戻ったけれど。

 ……なんか。
 感覚だけ、すごくおかしい。

 どうせ清めるなら、もうこの感覚までも、全部綺麗にしちゃってくんないかな……。

 清めたオレにいつも通り服を着せてくれて、昼の用意してくると言って、ドアの外からワゴンを引いてくる。立ち上がろうと動いたら、そこに居ろよと言われて止められた。

 ルカは、オレの目の前で、大きな窓を開いた。
 風が流れて、長いカーテンが、ふわっと舞う。

 ルカの髪が揺れて乱れて。邪魔そうに掻き上げる。


「――――……」


 抱かれてる時によく。
 上に居るルカが、邪魔そうに髪を掻き上げる時があって。

 ――――……なんか。
 それを思い出してしまう、と。


 ただでさえ、おかしい体の感覚が。
 余計に、おかしくなった気がする。


 バルコニーにあるテーブルに、ルカが食事を並べてく。

 ……そんな普通のことしてるルカに。
 ――――……なんか。……めちゃくちゃ変なこと、考えてるし。



 だってなんか。
 優しくするとか、さっき言われたけど。


 絶対、あれ、優しくは、ない。
 ……触り方とかは優しいし。動きも、いつもみたいに激しくは、確かに、無かったんだけど。


 なんかもう。
 じっくりとゆっくりと。
 ――――……もう、やだ、て言ってもやめてはくれないし。

 やだって言うのも、キスされて、塞がれて。
 優しい感じで、中、入れられて。
 気持ちいいとこだけ、ゆっくり突かれて。

 なんかずっと、優しいけど、熱すぎて。
 終わっても、ずっと、体の中、じんわり、熱い。


 何だよこれもう。

 これだったら、激しく揺さぶられて、頭ん中真っ白になって、気を失っちゃうみたいになった方が、断然楽……。

 わーん……。もう。
 ルカのバカ……。ルカの変態……。ルカのどスケベ……。

 右手で左腕を掴んで、ぎゅ、と力を入れる。自分の体、少し抱き締めるみたいに。
 

「ソラ?」

 ルカが呼ぶ声と、ぎし、とベットが軋む音。


「……何か小さい感じになってっけど。どした?」

 クスクス笑いながら、ルカの手がオレの頬に伸びてきた瞬間。
 勝手に、びく、と体が震えた。


「――――……ソラ?」

 オレに触れる少し手前で、ルカの手が止まった。 


 なんか。今触られるの、ほんとやだ。
 ただでさえ、なんか――――……。


 目を合わせられずに、俯いたら。
 ふ、と笑んだ気配がして。


「来いよ」

 その声に動くよりも早く、きつく抱きしめられてしまった。



「――――……っ……」
「どーした? ソラ」

「――――…………」

 抱き締められて、耳元で囁かれると。



「――――……っ……」


 かあっと、熱くなる。


「ソラ?」

 顎を捕られて、上向かされる。

「何。エロい顔して」
「――――……っ」

 オレの、せいじゃない。
 ――――……全部、ルカが……。



「……物足りなかった?」


 ふ、と笑って、ルカがそんな風に言う。


 そんな訳ない。
 ――――……ちゃんとイったし。ていうか、意味わかんない位、気持ちよくさせられたし。


「……激しい方が好き? ソラ」
「……違うし」

「そうか? まあどっちでも、いいけど」

 クスクス笑うルカ。

 ああもう。なんか。
 ――――……悔しい。


 ルカの首に腕を回して、ぐい、と引き寄せて。
 深く、唇を重ねた。


 すぐに舌が絡んできて。激しくキスされて――――……。


「……今すぐ入れてやろーか」
「――――……っ……」

 く。
 なんて言い方、するんだ。 ルカのバカ。


「ン? どーする?」

 ムカつく。悔しい。


「――――……絶対やだ。しない」

 首を振って。ルカの胸に手をついて、押し返す。
 すると。ルカは面白そうに笑って。

「――――……はー。お前って……」

 その手を掴まれて、押し倒されて。

「なん、だよ! もう……っしないってば……!」
「――――……ダメ。オレがしたい」

「……っ」

 押し乗られて。
 さっき終わったのに、と言いたい、のに。


「いい?」
「――――……っ」

 頬に触れる手が熱くて。
 ゾク、と、震える。


「良いって言って、ソラ」

 なんかもう。
 まっすぐな瞳に吸い込まれそう、なんて思う位。
 目が、離せなくて。



「……ルカ……のバカ」
「……は?」

「……オレがこうなの――――…… マジで、全部、ルカのせいだから……」
「――――……」


「マジで、バカ……」


 睨みながら言ったのに。
 ルカは、く、と笑い出して。



「大丈夫、責任取るから」

 そんな訳わかんない事言いながら。
 唇、重ねてくる。



 責任て。
 ――――……ずっと居れるかも分かんないのに。

 そんな風に頭を掠めるけど。



 重なってくるキスに。
 触れてくる手に。


 ――――……もう、すぐに。全部、任せてしまった。





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