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第2章

「ズルい」

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「ちょっと待って……」

 
 オレに乗っかって来ようとするルカを見上げながら、思わずその胸に手を付いてしまう。


「調べに、きたんだよね?」
「レジーが調べてる間は邪魔しない方がいい」

「……て……手伝わないの?」
「あいつが先に調べてくるから昼食べて来いって言ったんだから、今は行かなくていい」
「じゃあ、昼早く食べて……」

「まだできてねーだろ」

 ルカの胸についてる手を、掴まれて、ベッドに押さえつけられる。
 うまく押し乗られて、真上にあるルカの顔をただ見上げる。


「……ドアの前に置かれる時に声はかかるから。それまで」
「――――……っ……そんな、早く、終わるの?」


 思わず言ってしまうと。


「なるべく、終える」

「……っ何で、お城で一番に、それなの……」

 ちゅ、と首にキスされて、最後の抵抗で聞いてみると。


「もうオレ、さっきから、オレの部屋でお前抱きたかったんだよ」
「――――……っ」

「やっぱりここがオレの場所だから。そこにお前が居るの実感したいし」
「……っっ」


 ず、ずるくないかな、そんな、言い方……っ。


「……っどうせ――――……そんな事、いっぱい……言ってきたんでしょ、ルカ……」

 首筋や耳や頬を、舐めたりキスしたりしてくるルカにそう、言ったら。


「何だそれ?」

 またまっすぐに見つめられて、ん?と聞かれる。


「いっぱい、ルカにくっついてた女の子達にも……言った、んでしょ」

 思わず、仏頂面になってしまう。
 なんかもう。やっぱり、したくない。

 ここで、いっぱい、色んな子と――――……。

 なんかすごい――――……女々しい女子みたいな考え方。
 嫌かも、こんなこと、考えるのも……。



「……ああ、そーいうことか」

 しばらく黙ってたけど、オレの膨らんだ頬を片手で潰しながら、ルカが笑う。


「嫉妬してんのか。 はは、可愛いな、ソラ。珍し」

 ……決して。珍しく、ないけどね。
 ルカの女の子の伝説を聞くたびに、ムカムカしてますけど。

 別に。関係ないとも思ってるけどさ。
 …………ムカムカ。


「ここには、誰も連れ込んでねえよ」
「――――……ん??」

 よくもそんな大それた嘘をさらっと……。
 そう思ってると。


「ここ、色んな情報がある訳。あの棚とか鍵かかってるし超頑丈ではあるけど、信用できない奴は入れない。別に相手を全員疑ってた訳じゃねえけど、面倒だろ、こっちは疑ってるから入れないで、こっちは平気そうだから入れるとかやってたら。――――……だから、誰もここには入れてない」

「――――……」


「誰に聞いてもいいぜ、オレのこの部屋には、そういう相手は入れてない。……ああ、さっきレジーが、食事ここで良いのかって、変に聞いてたろ?」

「……うん」

「ここでそういう事するつもりかっていう意味だから。レジーも知ってる。あとで聞けよ」

「――――……」


 ルカは、頬を潰してた手を、優しい触れ方に変えて。
 オレを、まっすぐ、オレを見た。



「初めてここで、抱きたいと思ってんだけど」

「――――……っ……」


 なんか。
 ……すっごい、ズルいし。


 そんな風に言われると、断ろうって思えなくなるんだけど――――……。


 だからって。
 なんかもう。感情が色々混ざってて――――……訳わかんなくなって。


 答えることが出来ないし。


 じっと、見つめ返してると。
 ふ、と瞳が優しく笑う。



「ソラ、OKならキスして」


「――――……」



 なんかもう。
 ――――……キスするしかない。


 最後まで、ルカを見つめたまま。
 そっと、キス、しようとしたら。


 触れる前に少しだけ離れるルカ。


「……?」


 キスしろって言ったくせに、何で――――……。
 ルカを見上げると。



「キスしたら、オレに抱かれたいって意味だけど?」

「――――……」



 わざわざ確認するとか。
 意地悪……。



 む、としたまま。


 ぶつけるみたいにキスしたら。
 クッと笑って。


「――――……はは。かわいいな……」



 楽し気に笑いながらルカがオレを見つめる。
 ドキ、と、鼓動が速くなる。




「――――……」


 すぐに、オレの後頭部に手を回してきて。



「――――……ソラ……」


 囁かれるのと一緒に、ルカに押し付けるみたいに、引き寄せられて。
 すぐ唇が、深く重なってきて。



 心臓の音が大きすぎて。なんか。周りの音が、何も聞こえない気がする。

 ぎゅ、と、瞳を伏せた。








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