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第2章

「自然にキス」

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 ルカとミウの珍しい抱っこ状態は、その後すぐ解かれてしまった。
 もうちょっと見てたかったのにと思ってしまい、そんな風に思った事が、ちょっと笑える。

 ミウはプカプカ浮いて、離れたルカは、割れた皿を片付けているオレとジェイに近付いてきた。


「ソラ、手、切るなよ」
「うん、大丈夫」

「ルカ、オレにも言ったら?」

 ルカとオレの会話に、ジェイが入ってきて、苦笑いしてる。

「何を?」
「……手ぇ切るなよとか言うやつ。心配しろよ」

「あ? ああ、ジェイは言わなくても切らなそうだから言ってねーだけ」

 そう言われて、ちょっと面白くない。


「オレもこんなので手、切らないよ」

 ルカは、ん?とオレを見て。んー、と考えて。


「切りそうだから、気をつけろっつってんの」
「………」

 笑いながら言われて、軽く頭を撫でられ。
 なんか小馬鹿にされてる気がして、むー、とむくれながら、片付けを終えていると。

 ジェイがぷ、と笑って、ルカとオレを見た。


「ルカの愛情表現って――――……ガキんちょみてえだな」
「は?」

 一瞬にして。ものすごく不愉快そうなルカ。

「だってすげえ可愛がってんのかと思ったら、わざとソラがむくれるような事言って遊んだりさ。 好きな子いじめて楽しん――――……」

 そこまで言ったジェイは、ルカに、がつ、と肩を組まれた。
 そのまま、オレに背を向けた。

「何、お前。オレが、なんだって……?」

 不穏な空気に、「あー……」と、2人の後ろ姿を見ていたけれど。

 ……ま、いっか。とスルーする事にした。
 危ない所には近づかないに越した事はない。うんうん。


「ね、ミウ?」

 オレの側に浮いてるミウと顔を見合わせて、笑ってしまう。

 割れたものを紙袋に入れて、封をして、テーブルの上に置いた。
 それから、焼き窯を見に行って。

 あ、いい感じかも。

 くる、と振り返ると、何だか部屋の端ッこの方に行ってる2人が、まだ何か話してるけど。


「ジェイ―、もう良さそうだから、出してー?」

 そう呼びかけると、ジェイが「おう」と、助かった、みたいな顔で振り返った。


「まずいこと指摘した、オレ」


 こそ、と囁きながら、ジェイは笑う。
 まあ確かに、ガキんちょなんて言われたら、ルカは、怒るよね……。


「だって、なんか愛情表現がさあ、素直じゃないっつーか。分かりにくいだろ? あれ」
「うーん……」

 分かりにくいのかな。
 ヤキモチやいてんのかなとかは、すごく分かるし。

 ……あと、酔ってる時に素直すぎるのは嫌というほど、分かったけど。


 ジェイが焼き窯を開いてくれたら、中から甘い香りが一気に広がった。
 テーブルの上に焼きあがったお菓子が並ぶ。


「ルカルカ、見て見て」
「ん」

「色んな形作ったんだよ」
「ああ。これ面白ぇな」

 絞り出したクッキーを指して、くす、と笑う。 


「こっちはなに」
「マドレーヌ」

「ふうん? パンみたいなもん?」
「ううん。もすこしフワフワしてて甘い。も少し冷めたら、一口食べて?」
「ああ」

 説明してると、何だかおかしそうにクスクス笑いながらルカが頷く。


「なー、ルカ。ソラのクッキーとか、売っていい?」
「ん?」

 ジェイの言葉に、ルカが視線を流す。

「さっきソラとは話したんだけどさ。この分量でオレが作って、ソラのお菓子って事で売るし、売れた分いくらかはソラに払うって事で。そういう事しても良い? 店に置いときゃ売れると思うんだよな」
「――――……」

 聞いていたルカが、ちら、とオレに視線を投げてくる。

 良いって言って。
 そんなお願いとともに、ルカをじっと見つめ返していると。
 ルカは、ぷ、と笑った。


「ああ、いい。つーか、ソラはそれが嬉しいんだろ?」
「うん!」

「じゃあ、ダメな訳ねえし。菓子の値段とかはジェイと相談して決めろよ。んでいくらソラに入るかとかは――――……」
「ちゃんと妥当な金額で決める」

 ジェイの言葉に、ルカはすぐに笑んで頷く。

「ソラがジェイと話して決めろ」
「うん。……ありがと、ルカ」


 何となく、お礼を言ったら。
 一瞬ルカは黙って。

 腕を引かれて、ちゅ、とキスされた。


「色々片付いたら船の方来いよ。あっちで、修理してる皆と食いたいから、持ってきて、ソラ」
「……うん」


 ……めちゃくちゃ自然にキスして。
 ジェイの前だからと固まってるオレを撫でながら、そんな風に言う。



「アラン、話してたオレが消えて今頃驚いてるだろうから、先向こう帰ってる」


 そのルカの言葉に、ジェイはクッと笑った。


「確かにな。騒いでそう、あいつ」
「だろ? だから、後でな、ソラ」


 うん、と頷くと。
 じゃあな、と言いながら、ルカが店を出て行った。




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