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第2章

「すごい奴に好かれてる?」

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 味見しながら、いくつかの実を取ってきた。

 木になってるから好きな味見つけろよとルカが言ってたけど、本当に色んな種類の実がなってて、選ぶのも楽しかった。

 お店に戻って、お菓子を準備をしていると、不意にジェイが聞いてきた。

「ルカがお前を好きなのは分かったけどさ。ソラは?」
「え? オレ?」

「ソラはルカの事好きなの?」
「……うん」

「間が空いたな?」

 ジェイがクスクス笑う。

 自分でも、今咄嗟に、「うん好き」とは答えられなかった事に苦笑いだったので、突っ込まれて更に少し困った。


「……好きかなーと……思い始めた所っていうか……」

「あぁ。まだそう思ったばっかり?」

「……うん」


 なんかそんな風に言われると、すごい恥ずかしい。


「ふーん。……思い始めたって、じゃあそれまでどう思ってたんだ?」

 それまでは……。

 ――――……最初は、ルカがオレを抱きたいなら、もうそれでいいから、この世界で死なないように守ってもらおう……みたいな。

 ルカの事どう思ってたかというと……。

 ……イケメンで声エロくて、超ドSの、人からかってばっかりで、王子だからか、超、 偉そうで、独占欲みたいのが強くて、下半身やばくて、でも頼りにはなるような気がして、たまに優しかったりする、よく分かんない勇者。


 …………うん。
 言えないな。あはは。

 
「んー……ていうか、オレ、まだ、会ってからそんなに経ってないんだよ」

「じゃあ何でルカはあんなにお前に惚れてんの?」

「――――……うーん……?」


 そんな風にまっすぐに聞かれると。

 ……全然、分からない。
 そんなに「惚れてる」のかどうかもなあ…??


 何だかミウがふわふわ浮いてオレを見つめてるので、わかんないよね、とミウと笑いあってしまう。

 すると、ジェイは、くっと笑い出して。


「ソラ、のどかだから、かな~。ルカは王子で色々大変だろうし。お前みたいなのどかな奴で、和みたいのかもな?」

「さあ……? 分かんないや」


 最初抱かれた時は、全然そんな感情があった訳じゃないだろうし。

 ……泣き顔が好きみたいな、変な事言ってたような。

 これもなんか言えないな。


 ……言えない事ばっかりだな。
 苦笑いしか浮かばない。


「あとでルカに聞いてみよ」
「ん? 何を?」

「何でソラが好きなのかって」
「――――……」


 何て言うんだろう。ちょっと気になる。


「ソラもちょっと聞いてみたいんだろ?」


 クスクス笑われて、大きく頷くのも変かなと思いながらも。


「ルカが、他の人に何て言うのかはちょっと、聞いてみたい」

 そう言うと、ジェイは、分かる分かる、と笑った。



「後で聞いてやるよ。楽しみにしてな」

 クスクス笑うジェイ。


「ああ、でもさ――――……」
「ん?」

「アランもなんか、ソラは可愛いとか言ってたから。可愛いのかもな?」
「……かもなって聞かれても……」

 頷けないんだけど。

 ……可愛いって言われても……。


「オレあんまり男を可愛いって思った事ねーから、なんかいまいち同意ができねーんだけど」

「……オレも出来ない」


 そう言うと、ジェイはクッと笑い出した。


「もしかしてお前って、元々は、男は対象じゃない奴?」

 ずばり聞かれて。
 ジェイを見つめてしまう。

 答えるまでもなく悟ってくれたジェイは、あっは、と笑い出して。 
 面白くてしょうがないといった感じで笑う。


「そんな笑わなくても……」

 むー、とじっとり見つめていると。
 なんか同じような顔でミウも、オレを見てる。

 あ、真似されるわけね、オレの顔。
 ジェイはそっちのけでほっといて、ミウの顔に、ぷぷ、と笑っていると。


「あー、面白い。 だからさっきも、すげえ間があったのな」
「ん?」
「好きかって聞いた時」
「あー……」

「男を好きっていうの、まだ抵抗あんの?」
「……うん。すごいあるかも」

「ははっ。おもしろ」

 せっせと準備はしながらも、ジェイはめっちゃ笑いながらそんな風に言う。


「まあそんなに会ってから経ってないなら尚更だけど――――……男が対象じゃないお前に、好きとか言わせるルカってさ。やっぱりすげえなって思うかも」

「――――……」


「オレ、直接会ったり話したのは初めてだけど。噂は常に飛んでくるんだよな。何をしてくれた、どこの魔物を倒してくれたとかから始まって、モテるっつー武勇伝みたいなのもさ」

「――――……そーなんだ」

「皆が王子を好きなんだよな。この世界で、唯一って感じの存在だし」

「――――……うん」


 ……そうでした。そういえば、そういう世界、だったなぁ。
 

「そーいう王子が惚れてる相手、とか思うと、ソラ、なんかすげーな?」


「ん?――――……オレは、別にすごくないけど?」


 別にオレがすごいんじゃないし……??


 そこは頷けずに、首を傾げていると。


「すごいと思うけど?」
「そうなの?」


 聞き返すと、ジェイはおかしそうにまた笑い出して。




「そうそう。 すごい奴に好かれてるって思って、浮かれてれば?」

「浮かれてればって……」




 ジェイって、明るいなー。

 何だかおかしくなってきて、クスクス笑ってしまった。






 
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