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第2章
「この世界」
しおりを挟む少しワクワクしてるオレの前で、ルカが言ったのは。
「ソラ、オレのにするから」
そんな、言葉だった。
「――――……え?」
ぽかん、と口を開けたオレ。
リアたちが、何秒か置いた後、なんなのー、みたいな声で口々に、騒いでる。
「今更な事、何で改まって言うんだよ」
「大事な事言うのかと、身構えたけど」
「そうよ、何、今更?」
ゴウとキースとリア。3人の言葉に。
オレも正直そう思ってしまった。
ルカは、3人とオレの顔を見て、苦笑い。
「今までは、魔王を倒すかソラが帰るまで、それまでは守るから一緒にって、オレは言ってたから」
「何が、変わったの?」
「ずっと、一緒に居させたいから、その方法を、探す」
「どーやって?」
「分かんねえけど。――――……元の世界と行き来できるなら一番、ソラは良いんだろうけど。分かんねえし。……まあ、最終的にソラが選べるとしたら、どっちの世界を選ぶかはソラ次第だけどな」
「――――……ルカ……?」
選べるならオレ次第。
……選べるとか、そんな選択肢があると思ってなかったので、ただルカを見上げてしまう。
「とりあえず、ソラがこっちに居るなら、オレはソラとずっと居るから。そのつもりでいろよな」
ルカのよく分からない宣言に。
3人は、ぷ、と笑って、顔を見合わせた。
「そんな事は、もう知ってたけどね」
「ルカ、結婚とか言ってただろうが」
「そうよ。今更ー」
「……オレはそうだったけど。ソラがさっき、出来る限りオレと居るって言ったから。余計、だな」
ルカの言葉に、3人が同時に、「え」と言って、オレを見つめる。
「そうなの?」
「あ……うん、言った……」
言ったけど……。
ここに居れるかどうかとか。もう未知で分かんないけど……。
オレが、はっきり、「ずっと居る」とも言い切れずに困ってると。
ルカは、ふ、と笑って、オレの頭を撫でた。
「まだ、出来る限りって事だけど。……とりあえず、ソラがこっちに居る限り、オレのだし、オレも他の奴のとこにはいかねーから」
ルカのその発言に。
3人は今度は言葉もなく、ルカを見てる。
「……は? 何だよ?」
ルカが不機嫌をあらわにして、皆を見返すと。
皆、苦笑い。
「……っそっちのがびっくりだろうが。そっちを先に言えよ」
ゴウが可笑しそうに笑いながら、そんな風に言って。
ルカが嫌そうに睨んでる。
「まあソラに会ってからは、そんな感じだったけどね」
リアはおかしそうにクスクス笑って、オレとルカを見比べている。
それから、にっこり微笑みながら、オレに。
「……ソラは居れるなら、ここにずっと居たい?」
そんな風に、聞かれたのは、初めて。
――――……思えば、この件について、皆、何も触れずに、一緒に居てくれたんだなあと、今、気づいた。
「――――……オレ、元の世界ももちろん大事だし……何で来たのかわかんないし、どうしていいか分かんないけど…… この世界も好きだよ。皆も、すごく、好き」
そう言ったら。
リアはふふ、と優しく笑って、頷いた。
「とりあえず、まずは調べられる限り、情報集めてみるしかない。ソラの事は言わず、それ以外は触れ回っても構わねえから、集めさせてくれ」
ルカの言葉に、3人がそれぞれ、頷く。
あんな光に、突然連れてこられたこの現象を、調べるなんて、出来るのかな。そう思うんだけど。
――――……オレの為に、調べてくれるんだと思うと。
なんか、すごく、嬉しいなと。思ってしまう。
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