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第2章

「つよすぎなお酒…」

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「これなんの酒だよ?」
「すっげえつっよい酒」

 ルカが聞くと、アランがそんな風に言う。


「オレが今まで飲んだ中で、一番強いと思う酒」
「オレもそう思ってる」

 アランの言葉に、ジェイも頷く。

 皆興味津々。

「一口でもかなり酔うんじゃねえかな」
「そうなのか?」

 ジェイが、蓋を開けて、「ソラ、そーっと、かいでみろよ」とオレに向けてくる。
 飲むんじゃなくて、かぐだけでいいならと思って、ん、と受け取って。

「そーっとだぞ、思い切り吸うなよ?」
「何? 吸うだけでしょ?」

「すこーしだぞ」

 ジェイにしつこく言われながら、すう、と軽く吸い込もうとして。

「ぅっ けほっ……っ!」

 軽くすら、最後まで吸えなかった。
 ……凶器だ。これ。毒だ。毒。

「こほこほっ」
「ソラふざけてる?」

 リアがクスクス笑いながら、酒瓶を持って、軽く吸って、うえ、という顔。

「きっつ、これ……飲んでいいものなの?」

 リアもすっごい嫌そうに訴えてる。


「一応飲み物。強い酒ないのとか言う奴がいると、出してくる」

 何だろ、この酒。感じとしては、ウォッカとか。そんな感じかな。
 飲んだら絶対、喉が焼けそう。


「前に1口飲んだアランが、倒れたよなー」
「3口位は飲んだぞ」

「ちげーだろ、1口の量を3回に分けて飲んだんだろ」
「まあそうともいうけど」


 よくこんなもの、3口も口に入れたなと、アランを見てると。ルカが、その酒瓶を見ながら。

「名前とか何も書いてねーのな」
「じいちゃんとかその前から、受け継いでる酒」

「やばそうだな」

 クスクス笑いながらルカが言う。

「……飲むの? ルカ」
「――――……でもオレもうアランとは勝負着いたしな。酔って寝ちまうのやだしな」

「オレ、ルカが酔っぱらってるとこ見た記憶ねえなあ」

 ゴウがそんな事を言い出す。
 
「そういわれてみるとオレも」

 キースも言う。リアも、「あたしもー」と、皆が言う。


「飲んでみれば? 酔っぱらったら介抱するって、ソラが」

 ゴウが笑いながら言う。

「え、オレ?」
「するだろ?」

「……するけど」

 え。何で皆、飲ませたそうなの?


「オレ、ルカが全然平気で飲むとこ見たいなー」

 アランが、ルカを乗せようと頑張ってるし。


「――――……お前らどーしても飲ませたそうだな」


 ルカの呆れたようなセリフに、皆、あはは、と苦笑い。


「そんな吸うだけで強い酒、ルカが飲めるか知りたい」
「分かる分かるー」

 ゴウやリアは、なんだかんだ結構飲んでるせいなのか、悪乗り中……。

 ルカだって、それ、分かってるだろうし。
 乗らないよね? 



「ルカ、こんな強い飲み物、飲まない方が……」
「ん?」

「……あっついよ、喉。吸っただけで……」
「ふーん……」


 オレは止めた。止めたよね?
 なのに何で、ちょっと楽しそうになってるんだか、全然分かんない。


「……まいっか、1口な。アランもゴウもキースもちょっとは飲め。ジェイは? 酒強いのか?」

 皆超嫌そうに顔をしかめてるけど。


 結局、皆で飲む事になったらしい。
 リアとオレを除いて。


 小さなコップに、ほんとに少しずつ。ルカだけなんでなのかちょっとだけ多いし。


「これ、一気に喉に流し込んだ方がいいぞー、口に残しとくと、死ぬぞ」


 アランの言葉。




「え。……やめたら? オレ全員介抱やだよ? ねえ、リア、やだよね?」


 言ってるのに、リアは、あははー、それ面白いねえ、とか笑っている。



 ………嘘でしょ。



「じゃーいくぞー」
「せーの」


「かんぱーい!!!」



 さっきまで、嫌そうだったのに。


 結局皆は、めちゃくちゃ楽しそうに、酒を煽った。





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