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第2章

「特技:取り入る?」

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 さっき、来る前にもキスされて、なんだかすごく持て余しながら、ここに来てたのに。
 また、こんなキス。


「……ンん……やめ――――……」

 最後まで言わせてくれない。


「……ふ、……んんっ……ン――――……」

 熱い舌が、口の中で、ルカの思うように動く。
 上顎舐められると、何だか体が、ビク、と震えてしまう。


「……ん、ふ……ぅ」

 もう、何がなんだか、よく分からない。


「……っん……」

 舌を吸われて、もう、おかしくなりそうで。
 ぶるっ、と全身が、震えたその時。

 店のドアがまた開いた気配。
 中の騒がしい気配が漏れてくる。


 は、と気づいて、ルカから少し離れると。
 今度は、ルカ、そのまま離してくれた。

「おいおいおい……」

 そんな声と、大きなため息。
 ルカに隠されてるせいで、見えないけど、絶対アランだ。


「まぁたイチャついてたのかよ! 何な訳ルカ、オレお前の事待ってたんだけど!! ふざけんなよー!」

「ああ、悪い、すぐ行く。……ソラ?」

 ぐい、とルカから起こされて、顔を見つめられる。


「立てるか?」
「……立てる」

 ルカから離れて、ルカに抱き込まれてたせいで乱れた髪を掻き上げた。


 ルカの熱さが、全部一気にオレの中を支配して、全部奪っていったみたいな感じ。クラクラする。

 あがった息を抑えるだけで、精一杯。



「……アラン、先行ってろ」
「さっさと来いよー」

「ああ」

 アランが中に入ってドアが閉まったら。ルカに顔を上げさせられた。


「――――……ソラ……」

 ちゅ、と頬にキスされる。
 ぞく、と体の奥が、反応する。


「……飲み比べ終わったら帰るか?」
「……え?」

「――――……帰って、オレとしたい?」
「…………」

 何か。
 思うままにキスされて。 思うままに答えるのはなんか嫌で。
 プルプルと首を振った。



「……したくない」

 じっとルカを見つめながらそう言うと、ルカは一瞬黙ってから、頷いた。


「分かった。――――……じゃあ、アランのとこ、行こうぜ」
「うん……」

 なるべく平気なフリで頷いて、ルカの後ろを歩く。
 

「ソラ、多分もうすぐアランつぶれるから」
「え。そうなの?」
「さっきすげえ声高かったろ」

 クスクスと、ルカが笑う。


「オレまだ全然いけるから、勝つと思うけど。そしたら、一緒に飲むか? オレが一緒に居るなら、果実酒とか飲んでもいいぞ」

「……ていうか、ルカ、まだ飲むの?」

 苦笑いが浮かんでしまう。

「あ、さっきジェイが美味しいもの作ってくれるって言ってたから、オレはそれを食べて待ってようかな……」
「ジェイって……さっきの奴、もう仲良くなった訳?」
「だって、アランの仲間だって言うし……名乗られたから……」

 ルカは、ちら、とオレを見下ろしていたけれど。


「お前のそれは、特技だな」
「……? それって?」

「――――……人に取り入るとこ」

「えっなんか、それ、悪い意味に聞こえるんだけど」
「……かなり嫌味が入ってるからな」

「もうちょっといい言い方してよ、特技とか言うなら」

 取り入るって、なんかすっごくやな感じ。

 階段を上り終えた所で、ルカがオレを振り返る。


「――――……いい意味で言うなら…… 誰とでもすぐ打ち解ける」
「……あ、それならいい意味かも」


「悪く言えば、すぐ、すり寄ってく」
「――――……っっすり寄ってないし!」



 なんか、かなりヤな感じだし。


 さっきまで、ルカに乱されて、若干うっとりしちゃってたけど、
 なんか吹き飛んでっちゃったし……。


 いい意味で、すぐ打ち解けるとか言ってくれたとこで止めといてくれればいいのに。



 すり寄ってなんか、ないのに。オレ。





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