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第2章

「ミサンガの結界」

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「少し勝負休憩するか」

 そんな事を言って、ルカがオレの隣に座って、そのルカの前にアランが座った。

「ソラは飲んでたか?」
「飲んだけど……このお酒苦くて、全然飲めない」

 ルカがオレのコップを少しだけあおる。

「ああ。……ちょうどいいんじゃねえの、酔わなくて。これ苦くて飲めないとか。お子様だなー、お前」

 くっ、と笑って、頭、ぐりぐり撫でられる。

「……つか、これ、苦いよね?」
「果実酒のべたべたに甘いのに比べれば、苦い」

 くっ。……むかつく。


「ルカは今何飲んでんの?」

 ルカが飲んでたコップの酒を一口飲むと。
 けほっ、とむせてしまう。


「……っ苦いとかじゃなくて……けほっっ」

 アルコールの度が高すぎる。
 なんか喉が痛い。


「無理無理、こんなのよく普通に飲めるね……」

 けほけほ。
 しつこくむせてると、ぷっと笑ったルカに、よしよし、と背中を撫でられる。


「はは。可愛い、お前」

 オレの頬に触れて、クスクス笑ってるルカ。
 可愛いじゃないし、と抵抗してると。


「お前らって、ほんとずっと、いちゃついてんのな」

 アランがニヤニヤしながら、オレ達を見て笑ってる。


「……アラン、目ぇおかしい」

 何でいちゃついてるように、見えるんだ。
 ルカは終始オレをからかってて、視線も面白がってるそれでしかないし。
 

「何で? 目ぇおかしくないだろ」
 
 クスクス笑うルカに、「ルカはオレをからかってるだけじゃん」と言うと、「可愛がってンだけど?」と、笑まれる。

「っ……絶対嘘だ」

 オレを引き寄せてようとするルカの腕と、その腕をどーにかしようと藻掻いてるオレ。

 その手の辺りを指して、不意にアランが言った。


「なあ、それさあ、同じのつけてんのか?」

「それ?」

 下に目を向けて、「同じの」を探して、目に入ってきたのは、手首につけた青いアクセサリーだった。
 あ、ミサンガ、ね。

「うん、同じの」
「どっちから?」
「どっちから……? 一緒に買ってくれたのはルカだけど」
「ふーん。一緒に着けた?」

 意味ありげにアランが言いながら、クスクス笑っている。

「愛されてんなあ。どんだけ守りたいの、ルカ」
「……守りたい?」

 何の話?
 首を傾げてアランを見つめると、アランは、ソラは知らないんだなと笑った。
 

「結界張ってるだろ? これ」

 アランの言葉に、ルカは、ふ、と笑った。


「――――……ああ、分かるんだな、お前」
「――――……??」


 結界?
 ――――……何、言ってんだろ。


「多分これ、ソラの姿、見えなくなってる」
「……え???」

「例えば魔力のある奴がソラを探そうとしても、見えなくなってんだよ、ソラの姿」
「――――……」

「同じものつけて、ソラのとルカの間で、繋げてるって事。分かる?」
「うん……? 誰から見えなくしてるの?」

 ルカを見ると、ルカは、さあ?と笑った。

 さあってなんだろ??
 よく分からない会話に首を傾げていると。
 念のためだから良いんだよ、気にすんな、とルカが言う。


「感じれるって事は、アランも、結界はれるのか?」

「んー、オレのは、船にしか張れないし、そこまでは強くない。他の船よりは少し耐久性があがるかな程度かなあ……じーちゃんがすごかったらしくて、伝説の船乗りになってるよ。どんな嵐でも沈まねーの」

 クスクス笑って、アランが言う。


「ああ。それでお前の船ならいけるンだな」
「でもさー……でかい怪物とかはまじ勘弁て感じだけど。直接攻撃受けても耐えられるかどうかは分かんねーし、そこまでは強くねえぞ?」

「んー…… そういや、ソラは、泳げるか?」

 不意にルカに聞かれる。

「うん。まあ。普通の海なら」
「……荒れてる海は?」
「無理かな」

「じゃー落ちないようにしろよな」
「……う、ん」

 嫌だなーそれ。
 荒れた海に落ちたくないなー……。

 眉を顰めてると、2人、ぷと笑う。

「まー頑張れ」
「……落とさないように、船動かして下さい」

 アランに言うと、はいはい、と笑われる。



 ゲームの世界なら当たり前に、普通にやってたイベントだけど。
 海に出て、戦うとか。

 ……ここに居てしまうと、普通に当たり前に、簡単に出来ることじゃない。
 ほんと、命がけだよね。と。しみじみ思う。


 あーほんと。何が居るんだろう、海。




 何が居るかも分からない荒れた海に、何をすべきかも分からない状態で、乗り出すとか。ほんと、意味が分からない。


 ……すごいよなあ、ほんと。




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