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第2章

「酔っ払い2人」

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「ユウって、この町の子?」
「そうですよ、お客様が来てるからお酒注ぎにって呼ばれました」
「そうなんだ。大変だね」

「え、全然。飲んでも食べても良いし、気に入った人の所にも行けるし」
「ああ、そうなんだね」

 なるほど、こういう所も出逢いの場なんだな。 
 ゴウとかも言ってたもんね。

 ほんとやっぱり、皆、そういう欲に忠実っていうか。
 しかもそれをおっきな声で言えちゃうっていうのがなあ。

 こんな可愛い女の子までそうとなると、やっぱりオレにはカルチャーショックかも……。

 なんて思いながら、苦いお酒を口に入れる。

 んー、これなら酔わない。何て言っても、たくさんは飲めないから。
 唇についたままの酒すらもちょっと苦い。

 飲めば飲む程苦い気がする。
 うえ、と、少しだけ眉を顰めていると。

「ソラさんて、今夜はどこに泊るんですか?」
「ん? ああ、この町の宿に泊まるよ」

「それって、1人部屋ですか?」
「……あー……ううん、2人」
「そうですか……じゃあソラさん」
「ん?」

「……私の家に来ません?」
「ユウの家?」

 ん? どういう意味?
 思わずじっと見つめあってしまう。


「あ、いえ。あの――――……無理なら……」

 ユウの態度にようやくそういう意味だったのかと気づいて、あ、ごめん、鈍くて、と謝る。

「でもごめんね。オレがそういう事するとすごく怒る人が居て……」
「……ソラさんの好きな人ですか?」

「うーん……うん。まあ。……好き、かな」

 ルカ聞いてないし。まあいいか。そう言っても。
 ……まあ。好き。ではある。


 ……いや待って。好き? って。
 …………人に向けて口に出しちゃうと、なんか、とんでもない気がするけど。

 でもルカだけじゃなくて、リアもゴウもキースも、何ならアランも、皆それぞれ好きだしな。うん。

 
「こーら、ソラ!!」

 でっかい、ルカの声がすぐ背後で聞こえた。
 うわ! ……き、聞かれてないよね? 今の。

 振り返って、内心びくつきながら、ルカを見上げる。


「あ? 何そんなびくついてンだ、何かやましい事でも……」
「ご、誤解だってば……」

 返事をしかけて、ふと気づく。

「あれ? 珍しい。 ルカ、ちょっと酔ってる?」
「酔ってねーし!」

 そうかなあ? 必要以上に声でかいし、なんか少し口調が……呂律が……。


「な、んか、重い……ってば」


 思い切り寄りかかられて、引きはがしにかかって、すったもんだしていると、ユウが立ち上がった。


「ソラさん、私行きますね」

 ミウをありがとうございましたと言って、ユウが、離れて行く。
 その後ろ姿を見ながら。


「……フラれたのか?」

 なんて、言うルカ。


 いやいやいや。
 振られてないし。

 ていうか、オレが断ったんだし。

 ていうか、今の状況でもし振られたのなら、それは、どう考えても、このでっかい酔っ払いが、オレにまとわりついてるからだ。


「もう離れてよっ 重いし!」

 ルカを離れさせた瞬間。


「ソーーラーーー!」


 こっちのデカい声は、今度はアランだ。
 むぎゅ、と抱き締められてしまった。


 こっちこそ、完全に、酔っ払い、な気がする。
 抱き付かれたというよりは、もたれかかって潰されかけてるの方が正しいかも。

「ちょ、重……」

 言った瞬間、チッと舌打ちが聞こえて、ルカが、アランをオレから引きはがした。

「触んじゃねえよ」
「――――……何で? ソラは、ルカのじゃねえだろ?」

 クスクス笑いながら、アランがオレに聞いてくる。

「なんかソラに構うとさー、ルカの反応がすっっっげえ面白くて、ついつい、なあ?」

 ついついじゃないから! 


「ソラ、今日はお前、飲みすぎんなよ?」

 ルカがオレの頬に触れて、顔を見つめながら、そんな風に言う。


 …………オレは今のルカにだけは、そんな言葉言われたくないけど。


「ルカこそ、もうやめといたら? なんかいつもと違うよ」
「全然平気だっつーの」

 ……だから。
 なんか呂律が回ってないってば。


 なんかでっかい酔っ払い2人。 
 飲み比べなんかするから悪いんだと思うけど。


 なんか笑ってしまう。







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