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第2章

「ブレないな」

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 結局、あれから、皆でテーブルに座って、いつもみたいに、適当に頼んだ食べ物と飲み物で、飲み会になってしまった。

 温泉、上がるの早や……。

 まだ午前中なんだけど。
 ほんと、いーなー、自由で、この世界。


 ……学校って、あるのかな……??
 いや、ゲームの世界には、無かった気がする。


「……ね、ルカ、学校ってある?」

 とりあえず、聞いてみたらルカは一瞬止まってから、首を傾げた。

「……無いな。何だ?」

「皆で集まって勉強するところ」
「――――……集まっては、しねえかな」

 なるほど。

「子供には、知ってる大人が教える。――――……城に帰れば、頭の良い奴が、子供を集めていっぺんに教えてる所はあるけど?」

「あ、それを学校って言ってるんだと思う」
「ふうん。じゃあ、あるのか」

「うん」

 ふむふむ。子供はそうなのか。
 ……でも、となると……オレとかが勉強するところは、ないのかな。
 

 ……でも、まあ。
 大学の勉強は、ここで生きてくならなんの役にも立たなそうだけど……。

 英語もドイツ語も、数学も経済も――――……ずーっと小さい頃から勉強してきた社会や理科とかも、何も役に立たないか。国語とか道徳とか心理学とかは役に立つかなあ?

 ちょっと愕然する。
 今まで必死に学んできた事が、ほとんど役に立たないって。


「何難しい顔してんだ?」

 顎に手がかかって、ルカの方、向かされる。


 ――――……顎に手。とか。
 ……結構慣れて来てるけど、これって、ほんとなら、かなり恥ずかしいことな気がするんだけど。


 何かもう、さっきルカの所に戻ってから、これでもかという位にくっついて座らされてるし、なんか、今は、余計にもういいや、て気になってしまっている。


「……子供じゃなくて、オレが勉強するとか言ったら、どこでするの?」
「――――……」

 マジマジ見つめられる。


「……何の勉強がしてえの?」
「なんのって言われると困るんだけど……」

「ん」

「学校、行ってたんだよね、向こうでは」
「ふうん……行きたいのか?」

「……まあ……勉強はした方がいいかなあ……」

 ……でも役に立たないんだよなー。こっちで。
 うーん。どうなんだろ。


「城に行けば、書物庫はあるから――――…… そこで本でも読むか?」
「あ、うん。読んでみる」


 こっちの世界の書物なら、勉強して、役に立つかもしれない。


「じゃあオレも一緒に読む」
「ルカも?」

「あんまり読んだことねえから、良い機会」
「読んだこと無いの?」

「本読んでると眠くなってくる」
「――――……」

 なるほど。
 ……ぷぷ、と笑ってしまうと。ルカがムッとする。

「何笑ってンだよ」

 ぶに。と両頬摘ままれる。


「だって、なんか、ルカっぽくて」
「なんか失礼だな、お前」

「だって」

 クスクス笑ってると、隣でリアが笑い出す。


「ほんと、ルカっぽいもんね」
「オレも本なんか読まねえけど」

「……ゴウも、ぽいね」

 思わず正直に言ってしまうと、ゴウにもちょっと睨まれつつ。


「一緒に読もうな」

 ルカが言うので頷いてる。と。リアがまた可笑しそうに笑い出した。


「ルカはソラと居たいだけでしょ。本はついででしょ」
「つか、いつか読みに行こうかとは思ってた」
「そうなの?」

「他の世界とかの本、探してえし」
「――――……」

 オレはふ、とルカを見上げた。


「あー、なるほどねー」

 3人がルカを見て、ぷ、と笑ってるので。

「んだよ」

 ルカがちょっと嫌そうに3人を見る。


「ルカが本とか、驚いてたけど、それなら分かった」
「お前全部ソラ絡みな」
「ソラの為なんだねえ」

 キースとゴウとリアの言葉。


 ……よっぽど本読まないんだな、ルカ。
 おかしくなって、クスクス笑ってしまうと。



「お前も何笑ってんだよ」

 とルカに突っ込まれる。



「――――……よっぽど本、普段読まないんだろうなーって思って」

 言ったら余計面白くなってきて、あはは、と笑ってると。

 ぷに、と頬に触れられて。そのまま引き寄せられた。



「ん、む……っ??」


 ――――……何で、キスに、なっちゃうんだ。



「ん、ソラ、風呂いこーぜ」

 ひょい、と抱かれて、地面に立たされる。


「ちょっと行ってくるわ」 

 ルカが皆にそう言うと、半分呆れた顔してた皆が、はーい、と笑った。


「来い、ソラ」
「……ん」

 手首を引かれて、そのままついてく。


「……ルカ、さっき、お風呂飽きたって言ってなかった?」
「あぁ。 お前と離れて入ってんのに飽きただけ。まだ一緒に入ってねーだろ」

「――――……」


 ルカって。
 ほんと照れるとか、無いのかな。


 誰の前でも、いつでも、
 ずーーっとブレないで、そのまんま。



 オレの手を引いて、少し前を歩いてる、広い背中を見ながら。

 何でだか、ふ、と笑んでしまった。



 



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