106 / 299
第2章
「ブレないな」
しおりを挟む結局、あれから、皆でテーブルに座って、いつもみたいに、適当に頼んだ食べ物と飲み物で、飲み会になってしまった。
温泉、上がるの早や……。
まだ午前中なんだけど。
ほんと、いーなー、自由で、この世界。
……学校って、あるのかな……??
いや、ゲームの世界には、無かった気がする。
「……ね、ルカ、学校ってある?」
とりあえず、聞いてみたらルカは一瞬止まってから、首を傾げた。
「……無いな。何だ?」
「皆で集まって勉強するところ」
「――――……集まっては、しねえかな」
なるほど。
「子供には、知ってる大人が教える。――――……城に帰れば、頭の良い奴が、子供を集めていっぺんに教えてる所はあるけど?」
「あ、それを学校って言ってるんだと思う」
「ふうん。じゃあ、あるのか」
「うん」
ふむふむ。子供はそうなのか。
……でも、となると……オレとかが勉強するところは、ないのかな。
……でも、まあ。
大学の勉強は、ここで生きてくならなんの役にも立たなそうだけど……。
英語もドイツ語も、数学も経済も――――……ずーっと小さい頃から勉強してきた社会や理科とかも、何も役に立たないか。国語とか道徳とか心理学とかは役に立つかなあ?
ちょっと愕然する。
今まで必死に学んできた事が、ほとんど役に立たないって。
「何難しい顔してんだ?」
顎に手がかかって、ルカの方、向かされる。
――――……顎に手。とか。
……結構慣れて来てるけど、これって、ほんとなら、かなり恥ずかしいことな気がするんだけど。
何かもう、さっきルカの所に戻ってから、これでもかという位にくっついて座らされてるし、なんか、今は、余計にもういいや、て気になってしまっている。
「……子供じゃなくて、オレが勉強するとか言ったら、どこでするの?」
「――――……」
マジマジ見つめられる。
「……何の勉強がしてえの?」
「なんのって言われると困るんだけど……」
「ん」
「学校、行ってたんだよね、向こうでは」
「ふうん……行きたいのか?」
「……まあ……勉強はした方がいいかなあ……」
……でも役に立たないんだよなー。こっちで。
うーん。どうなんだろ。
「城に行けば、書物庫はあるから――――…… そこで本でも読むか?」
「あ、うん。読んでみる」
こっちの世界の書物なら、勉強して、役に立つかもしれない。
「じゃあオレも一緒に読む」
「ルカも?」
「あんまり読んだことねえから、良い機会」
「読んだこと無いの?」
「本読んでると眠くなってくる」
「――――……」
なるほど。
……ぷぷ、と笑ってしまうと。ルカがムッとする。
「何笑ってンだよ」
ぶに。と両頬摘ままれる。
「だって、なんか、ルカっぽくて」
「なんか失礼だな、お前」
「だって」
クスクス笑ってると、隣でリアが笑い出す。
「ほんと、ルカっぽいもんね」
「オレも本なんか読まねえけど」
「……ゴウも、ぽいね」
思わず正直に言ってしまうと、ゴウにもちょっと睨まれつつ。
「一緒に読もうな」
ルカが言うので頷いてる。と。リアがまた可笑しそうに笑い出した。
「ルカはソラと居たいだけでしょ。本はついででしょ」
「つか、いつか読みに行こうかとは思ってた」
「そうなの?」
「他の世界とかの本、探してえし」
「――――……」
オレはふ、とルカを見上げた。
「あー、なるほどねー」
3人がルカを見て、ぷ、と笑ってるので。
「んだよ」
ルカがちょっと嫌そうに3人を見る。
「ルカが本とか、驚いてたけど、それなら分かった」
「お前全部ソラ絡みな」
「ソラの為なんだねえ」
キースとゴウとリアの言葉。
……よっぽど本読まないんだな、ルカ。
おかしくなって、クスクス笑ってしまうと。
「お前も何笑ってんだよ」
とルカに突っ込まれる。
「――――……よっぽど本、普段読まないんだろうなーって思って」
言ったら余計面白くなってきて、あはは、と笑ってると。
ぷに、と頬に触れられて。そのまま引き寄せられた。
「ん、む……っ??」
――――……何で、キスに、なっちゃうんだ。
「ん、ソラ、風呂いこーぜ」
ひょい、と抱かれて、地面に立たされる。
「ちょっと行ってくるわ」
ルカが皆にそう言うと、半分呆れた顔してた皆が、はーい、と笑った。
「来い、ソラ」
「……ん」
手首を引かれて、そのままついてく。
「……ルカ、さっき、お風呂飽きたって言ってなかった?」
「あぁ。 お前と離れて入ってんのに飽きただけ。まだ一緒に入ってねーだろ」
「――――……」
ルカって。
ほんと照れるとか、無いのかな。
誰の前でも、いつでも、
ずーーっとブレないで、そのまんま。
オレの手を引いて、少し前を歩いてる、広い背中を見ながら。
何でだか、ふ、と笑んでしまった。
113
お気に入りに追加
4,705
あなたにおすすめの小説


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる