上 下
103 / 292
第2章

「頭と体」

しおりを挟む

 キースと笑いあっていたら、「のぼせたー」とか言いながら、リアが合流してきた。

 肌に張り付くような布ではなくて、濡れてもある程度形を保ってくれるみたいな布だから、ばっちりラインが出る訳ではないんだけれど。

 なんか、やっぱりいつもよりも、肌が出てて、色っぽいなーと思ってしまう。

 リアって、超キレイだよなあ。
 年上の、キレイなお姉さん、て感じ。

 うん。オレは、やっぱり、女の子の方が、好きなんだよ。うん。
 絶対そう。

 ただ、何か。
 ――――……もしオレ今。
 あ、そんな事ないのは分かってるんだけど。

 もしも、今、リアとそういう雰囲気とかになって誘われるとかあったとして。
 ……誘いに乗るかって言われたら。

 ……多分、乗らない。


 ――――……それは何でかって。


 ……ルカが怒るかなーっていうのもあるんだけど。

 なんだろ。乗り気がしない。


 キレイなリアを見て、可愛いなあキレイだなあ、女の子はいいなあって、思うのに。
 ……そういう対象にならないみたいで。

 これはやばい傾向なんじゃないだろうか。

 ……かといって、横に、王子様みたいなキースが居るけど。
 この人としたい、とも思わない。

 ……いや、キースとリアだったら、断然リア。
 ……男は嫌。

 …………だけど、リアも……違う。



 ――――……ああ、もう。これ、ここからは、言葉にしたくない。


 したくないけど。

 ……多分今、オレのそういうのは。…………あのエロ勇者と直結してる。


 体が、なのかな。

 ……すっかり、組み敷かれる事に慣れて。
 キスを、「される」事に慣れて。

 快感を、「与えられる」事に……慣れちゃってて。


「はあああーーーーーー……」


 大きなため息とともに、温泉の縁の方を向いて、腕を伸ばして倒れ込んだ。


「やだ、どうしたの、ソラ」

 クスクス笑って、リアが言う。


「……あんまり考えた事なかったんだけど」
「うん」


「今までは、大体、体と気持ちって、勝手に連動してたんだよね……」
「……?? うん、それで??」


「……今してないの。多分生きてきて、こんなに、連動してないの、初めて」

 リアとキースが、きょとんとして、顔を見合わせてる。


「気持ちと体が通じてないの?」
「通じてない……」

「どっちが正しいの?」

「正しい……? 気持ち、かなあ……」


 オレは男だしって思う気持ちの方が、正しい気がする。
 ……男同士なんてさ。 ほんとは、今だって、無いと、思うし。


 ルカと寝るのはやめて。
 ルカは他の人とすればいいし。
 ……ルカは、他にもいっぱいモテて、きっと、他の人ともそういう事、するんだろうし。


 ……お城に帰ったら、相手はいっぱいいるから、休めるよって。
 リア、言ってたし。


 …………頭ではそう思うのに。


 何でだか――――……ずきずき。する。体のどっか奥の方。



 ほらね。
 ……こうやって、なんか。

 ――――……頭で考えてる事とさ。
 ………なんか、体の反応が全然、違うんだよね。


 頭では、ルカと寝たくないって思うのに。
 


 今だって。ルカは、女の子達に囲まれてるし。

 ――――……この世界の貞操観念ユルユルな女の子達だからきっと、今からだって、そんな事になりそうな感じもするしさ。

 ……今見たら、ルカ、もう、誰かと消えてる、かも……だし。


「――――……」


 ちら。とそっちの方を見ると。
 あれ。ほんとに居ない。あれ。ゴウも居ない。



 …………まさかほんとに。
 ズキズキズキ。



 その瞬間。


「湯に入ってんの、飽きた」


 不意に、すごく近い所で。
 ルカの、声。


 ――――……あ。ルカ。と、ゴウ。
 見上げると。ちら、とオレを見つめる、ルカ。


 どき。
 胸が震える、気がする。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

代わりにくらいなれると思った

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,634

召喚勇者の餌として転生させられました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,758pt お気に入り:2,252

出会ってはいけなかった恋

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,711pt お気に入り:725

ルピナスの花束

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:538

淫魔とドスケベ同棲生活♡ ~亮介×ゼノの場合~

BL / 連載中 24h.ポイント:269pt お気に入り:131

処理中です...