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第2章

「強がり」

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「ルカの、そういうとこ、嫌い」
「はー?? そういうとこってなんだよ?」

 不機嫌に聞き返される。

「オレ、ルカとしばらく離れる。 安らかに温泉入りたいしっ」
「――――……」

 ルカがムッとして、黙ってる。


「は、嫌われてやんの」

 ゴウが可笑しそうに笑って、ルカをからかってる。
 その横で、苦笑いを浮かべていたキースの隣に、オレは隠れた。

「オレ、キースと行ってもいい?」
「あー……うん。そうだね……」

 ちら、とルカを見て。
 ふざけんな的な顔をしているルカに、キースは更なる苦笑いを浮かべながら。


「……まぁ、いっか。じゃあ服買ってあげるよ。ソラは、どれがいい?」
「これ」

 青空みたいな色の服。ちゃんと上まであるやつを選んだ。
 だって、キスマークは見られたくない。


「ルカ、ちゃんとソラは預かるから。嫌いって言われた意味、ちょっと考えときなよ?」

 そう言ってくれたキースの言葉に、そうだそうだ、うんうん、と頷きながらルカから隠れた。

 そしたら、なんだかすっごくむっとした顔をしていたけど。オレには何も言わず、ルカは服を選ぶとゴウと行ってしまった。

 行ってしまったというか。行ってくれたと言うか。
 ……別に良いんだけど。

 そもそもオレはもうキースと歩き出そうとしてたし。
 無理やり引きずり寄せられなくて、良かった。て感じ。

 たまには離れるのもありだよね。


「ルカ達は向こうに行ったから、あっちの着替えるとこ行こうか」

 キースの言葉にうん、と頷く。
 キースは、オレを見て、クスクス笑い出した。

「良いの? ルカの近くに居なくて」
「良い。 ……この世界来てから、ずーっとルカの隣だから」
「まあ、そうだね ――――……まあ落ち着くまで、いっか」

 ふ、と笑う。

「でもオレは、ルカが誰かにこんなに執着するとは、思わなかったよ」
「――――……」


「ソラには、迷惑?」

 くす、と笑われて、オレは黙った。

 迷惑……っていうのとは、違う気がする。

 ルかはいっつも、オレを気にして、あれこれ世話して、優しく、して。守ってくれてる気がするから。

 ううん、と首を振ると、キースはふ、と優しく笑った。


「じゃあ少し落ち着くまで、オレと話して、温泉につかってようか」
「うん。……ありがと」

 キースと一緒に着替えて、温泉の入り口を通る。

 あちこちに幾つもの温泉があって、結構人が居る。
 観光地みたいな感じのとこなのかなあ。なんて思いながらあたりを見回していたら、キースがオレを見下ろした。


「飲み物買って行こ、ソラ」
「うん」

 キースの後について、お茶を買ってもらった。

 あーなんか。キースと居ると、優しくて、穏やかでいーなあ。
 なんて思いながら、あとにくっついていって、空いてる温泉に2人で沈んだ。

「あったかー。幸せー……」
「うん。ほんとはお酒も売ってるんだけど……ソラ酔わせると、ルカに怒られそうだからなあ」

 クスクス笑うキース。


「……キースって、いつからルカと居るの?」
「結構前からルカと旅してたよ。色んなとこ行ったし、色々戦ってきたし」

「――――……ルカの事好き?」
「はは。どんな意味で?」

「……どんな意味でもいいけど」

「んー。王子として、まず好きだよ。年下だけど尊敬してる。――――……あとは、酒飲み友達としても。一緒に旅する仲間としても。好きだし」
「――――……」

「たまに年下として、可愛い時もあって、そういうとこも好きかな」

 ふ、と笑いながらキースが言う。

「好きなとこ、いっぱいあるんだね」

 そう言うと、キースは、そうだね、と微笑んだ。


「じゃあソラは? ルカの事好き?」

「すっごくからかわれる気がするから……好きって言いたくない気持ちがあるけど……」

「ん」

「……安心するかなあ。側に来てくれると」


 そう言うと、キースはふ、と微笑んだ。


「まあね。あの存在は、安心するよね。分かる」

「キースも安心する?」

「ん。戦う時も、ルカが居る時と居ない時じゃ、全然違う気がする。別にオレ達だけで勝てる時でも、居てくれると、なんかどーにかなりそうな?」

 そっか。
 ……皆、安心するのか。


 じゃあオレの安心するっていうのも……同じ、なのかな。



「あ、ソラとキース発見」

 リアが楽しそうに笑いながら現れて、オレの隣に入った。

「あれ、ルカ達は?」

 そう聞いたリアに、キースが苦笑いを浮かべる。


「今、ルカがソラを怒らせて。別行動中なんだよ」
「あれ。よく離れたね、ルカ」

「オレが預かるって言ったからかな」
「ふうん。――――……寂しくなってない? ソラ?」

 リアが、これまた楽しそうに、クスクス笑いながら、オレを覗いてくる。




「……寂しくなんかないよ」


 少しの強がりと共に言うと、2人は顔を見合わせてクスクス笑う。


 
 ――――……少しの強がり、なんて思う位には。
 既にちょっとだけ、隣に居ない事に、違和感はあるけど。


 なんか認めるのは、少し癪……。







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