上 下
100 / 299
第2章

「強がり」

しおりを挟む

 
「ルカの、そういうとこ、嫌い」
「はー?? そういうとこってなんだよ?」

 不機嫌に聞き返される。

「オレ、ルカとしばらく離れる。 安らかに温泉入りたいしっ」
「――――……」

 ルカがムッとして、黙ってる。


「は、嫌われてやんの」

 ゴウが可笑しそうに笑って、ルカをからかってる。
 その横で、苦笑いを浮かべていたキースの隣に、オレは隠れた。

「オレ、キースと行ってもいい?」
「あー……うん。そうだね……」

 ちら、とルカを見て。
 ふざけんな的な顔をしているルカに、キースは更なる苦笑いを浮かべながら。


「……まぁ、いっか。じゃあ服買ってあげるよ。ソラは、どれがいい?」
「これ」

 青空みたいな色の服。ちゃんと上まであるやつを選んだ。
 だって、キスマークは見られたくない。


「ルカ、ちゃんとソラは預かるから。嫌いって言われた意味、ちょっと考えときなよ?」

 そう言ってくれたキースの言葉に、そうだそうだ、うんうん、と頷きながらルカから隠れた。

 そしたら、なんだかすっごくむっとした顔をしていたけど。オレには何も言わず、ルカは服を選ぶとゴウと行ってしまった。

 行ってしまったというか。行ってくれたと言うか。
 ……別に良いんだけど。

 そもそもオレはもうキースと歩き出そうとしてたし。
 無理やり引きずり寄せられなくて、良かった。て感じ。

 たまには離れるのもありだよね。


「ルカ達は向こうに行ったから、あっちの着替えるとこ行こうか」

 キースの言葉にうん、と頷く。
 キースは、オレを見て、クスクス笑い出した。

「良いの? ルカの近くに居なくて」
「良い。 ……この世界来てから、ずーっとルカの隣だから」
「まあ、そうだね ――――……まあ落ち着くまで、いっか」

 ふ、と笑う。

「でもオレは、ルカが誰かにこんなに執着するとは、思わなかったよ」
「――――……」


「ソラには、迷惑?」

 くす、と笑われて、オレは黙った。

 迷惑……っていうのとは、違う気がする。

 ルかはいっつも、オレを気にして、あれこれ世話して、優しく、して。守ってくれてる気がするから。

 ううん、と首を振ると、キースはふ、と優しく笑った。


「じゃあ少し落ち着くまで、オレと話して、温泉につかってようか」
「うん。……ありがと」

 キースと一緒に着替えて、温泉の入り口を通る。

 あちこちに幾つもの温泉があって、結構人が居る。
 観光地みたいな感じのとこなのかなあ。なんて思いながらあたりを見回していたら、キースがオレを見下ろした。


「飲み物買って行こ、ソラ」
「うん」

 キースの後について、お茶を買ってもらった。

 あーなんか。キースと居ると、優しくて、穏やかでいーなあ。
 なんて思いながら、あとにくっついていって、空いてる温泉に2人で沈んだ。

「あったかー。幸せー……」
「うん。ほんとはお酒も売ってるんだけど……ソラ酔わせると、ルカに怒られそうだからなあ」

 クスクス笑うキース。


「……キースって、いつからルカと居るの?」
「結構前からルカと旅してたよ。色んなとこ行ったし、色々戦ってきたし」

「――――……ルカの事好き?」
「はは。どんな意味で?」

「……どんな意味でもいいけど」

「んー。王子として、まず好きだよ。年下だけど尊敬してる。――――……あとは、酒飲み友達としても。一緒に旅する仲間としても。好きだし」
「――――……」

「たまに年下として、可愛い時もあって、そういうとこも好きかな」

 ふ、と笑いながらキースが言う。

「好きなとこ、いっぱいあるんだね」

 そう言うと、キースは、そうだね、と微笑んだ。


「じゃあソラは? ルカの事好き?」

「すっごくからかわれる気がするから……好きって言いたくない気持ちがあるけど……」

「ん」

「……安心するかなあ。側に来てくれると」


 そう言うと、キースはふ、と微笑んだ。


「まあね。あの存在は、安心するよね。分かる」

「キースも安心する?」

「ん。戦う時も、ルカが居る時と居ない時じゃ、全然違う気がする。別にオレ達だけで勝てる時でも、居てくれると、なんかどーにかなりそうな?」

 そっか。
 ……皆、安心するのか。


 じゃあオレの安心するっていうのも……同じ、なのかな。



「あ、ソラとキース発見」

 リアが楽しそうに笑いながら現れて、オレの隣に入った。

「あれ、ルカ達は?」

 そう聞いたリアに、キースが苦笑いを浮かべる。


「今、ルカがソラを怒らせて。別行動中なんだよ」
「あれ。よく離れたね、ルカ」

「オレが預かるって言ったからかな」
「ふうん。――――……寂しくなってない? ソラ?」

 リアが、これまた楽しそうに、クスクス笑いながら、オレを覗いてくる。




「……寂しくなんかないよ」


 少しの強がりと共に言うと、2人は顔を見合わせてクスクス笑う。


 
 ――――……少しの強がり、なんて思う位には。
 既にちょっとだけ、隣に居ない事に、違和感はあるけど。


 なんか認めるのは、少し癪……。







しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...