96 / 296
第2章
「のどか?」
しおりを挟む朝食を終えて、リアの魔法でシャオの街に戻った。
地下に続く階段を下りて行くと、すごく大きな船があって、少し奥に海に繋がってるらしい、これまたものすごくでかい扉があった。
おー、なんかすごい、秘密基地みたい。カッコいいなー。
ワクワクしながら歩き進んで、見回していると。
「おう、ソラじゃんか」
「あ、アラン」
ちょうど海への出入り口付近、船の先端部分にアランが居た。
「あっちにルカ達来てるよ」
「ああ。そういや、お前ら昨日夜、ここに帰ってくんのかと思ってた」
「あ、多分そのつもりだったんだと思うけど……」
「……なんかあったの?」
「うん。まあ………色々」
「ふうん?」
不思議そうにされながら、ちょっと笑顔で誤魔化していると。
気づいたルカ達がオレとアランの方に歩いてきた。
「船どうだ?」
「ってまだ1日経ってないからな。5日って言ったろ」
呆れたように言うアランに、ルカもまあな、と頷いてる。
「でもお前だって、早く漁に出たいだろ?」
「そりゃそうだけど、船が無理だと出れねえし」
「つーか、なんでこんなにバラしたんだよ」
ルカが船を見上げて、呆れたようにため息。
「だからもうしばらく出れそうにないから、いい機会だからやりたかった手直し全部しようと思ったんだって。王子たちが来るなんて、知らねーし」
そんな会話を聞いてると、なんか笑ってしまう。
王子、と呼んで、崇めるみたいな人もいれば、 ルカの事を知らない人達も居るし、アランみたいに知っても、完全タメ語の人も居るし。
それをルカは、全部、普通に受けとめてる。
相手に合わせて。
なんかアランとルカなんて、昨日会ってちょっと話しただけなのに、なんか、ずっと昔からの友達みたいな話し方。
やっぱりなんかちょっと似てる。
面白いなあ。
ルカがこういう人だから、皆、好きなようにルカを好きなんだな。
――――……ぶっきらぼうだったり、偉そうだったりもするのに。
……オレには、意地悪だったり、からかったり、死ぬほど色々されたり、するけど。 なんか。根っこはものすごく優しいのかも……な気もするし。
こんな人、今まで、会った事が、ない。
まあ居ないよな。
この世界で、たった一人、魔王を倒せる王子で。
色んな事決める権限と責任を持ってる、一番、偉い人。
一番偉いのに先頭切って、色んなとこ行って、戦ったり。
こんな立場の人、普通の日本には居ないもんな。
……大変だと思うのに。
大変だと思わせない感じで、やるのが当然みたいな顔してて。
ルカは――――……うん。
イイ男、なんだろうな。モテるの、ほんと分かってきた。
そんな事を考えながら、ミウと一緒に、海からの波が入ってきてる側にしゃがんで、波に触れる。
ここほとんど波が入ってこないような作りになってるみたいなのに。
波が荒いからなのかなあ。結構しぶきが飛んでる。
ぴちゃ、とミウの顔に雫がとんだら、なんかものすごい嫌そうな顔してる。
ぷ。めっちゃ可愛い。
「ミウ、おいで、拭いてあげるから」
みゅうう、と腕の中に入ってきて、服の端で顔をふきふきしてあげる。
「冷たかった?」
ああ、可愛い。なんでこんなに可愛いかなあ、愛しすぎる。
クスクス笑ってしまいながら、ミウのふわふわを整えてあげていると。
「お前はほんとのどかだな……」
すぐそばに立ったルカに、そんな言葉と共に見下ろされる。
68
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる