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第2章

「花畑へ」

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「その花畑までどれ位なの?」
「そんなに遠くないって言ってたけどな?」

 リアの言葉にルカが答えると。

「じゃあもうすぐつくのか? ぱっと見、何も見えねえけど」

 と、ゴウが言う。

「そうかもな。……まあ平地だから、ソラも楽だろ?」
「うん。崖上りないから、楽」

 ルカに、笑いながら答えると、腕の中のミウがじっと見つめてくる。
 ああ、可愛い……。

 オレが笑ってると、よく下からじーっと見つめてくるんだよね……。
 どうしてこんなに可愛いんだろう。


 実家もペット不可のマンションだったし、子供の頃からペットは飼った事なかったけど。

 ずっと、犬でも猫でも良いから飼いたいなあと思ってたら。
 こんな所で、夢が叶うなんて。


 ああ、そういえば、1匹だけ……。
 今の一人暮らしのアパートから駅に向かう途中の河川敷に、超可愛い猫が暮らしてて。良い天気の日になんとなく川を見下ろしていたら、足にすり寄られたのが出逢い。

 可愛すぎて、近くのコンビニに走り、エサをあげた。そしたら、すごく懐いてくれて。よく、エサをあげに行ったっけ。

 どうしようかな、アパートで飼っちゃおうかな。幸い、大家さんが猫好きで、野良猫の世話をしてて。だから、1匹増えても、許してくれそうなんだよなーと思っていた。
 
 アパートの猫、て感じに出来たら、オレが日中居なくても寂しくないかなあ……とか思っていたんだけど。

 でもよく河原で、お友達の猫たちと一緒に居るのを見て、連れて行っていいのか 悩んでて。――――……悩んでる間に、その猫、居なくなっちゃったんだった。
 しばらくは、大学に向かう途中、行きも帰りも毎日毎日探してたけど、結局会えなかった。

 もしかしたら死んじゃったのかも。
 そう思って、草むらとかも探したけど、死んでるという確証も得られなかったし、前の日まで元気だったし。可愛い白猫ちゃんだったから、きっと、優しい人に拾われていったんだと、思い込む事にしたんだっけ。

 ……じゃないと すごく、寂しいから。


 なんかそういえば、可愛さは似てる気がする。
 まあミウは……魔物、らしいけど。

 こんな可愛くても、魔物とか呼ぶんだなあ。魔物って、モンスターの事かと思ってたから、怖い物かと思ってた。


 可愛いミウとニコニコ見つめ合いながら、なんとなく歩き続ける。


 ここ迄の道、何度か魔物に襲われて、それをルカ達が倒してくれる。

 結構大きいのも居て、オレにとってはもはや怪物。
 ――――……でもルカ達は平然とやっつける。

 ……強いなあ、皆。

 まあ皆が強いのが分かってても、出てくる度いちいち、びくーん!と震えて、それに気づいた誰かに、その度に笑われるんだけど。

 ……突然襲ってくる魔物に、平然としてる皆が、むしろ変なんじゃないんだろうか。


 出てきた3匹を倒したその時。
 リアが、首を傾げた。


「なんか――――……さっきからずっと、なんか、思ってたんだけど」


 リアが、珍しくものすごく嫌そうに、顔をしかめてる。


「ここの魔物たち、変じゃない? なんか今のとか、より変だったような……」



 ん? 何が??
 そうなの?


 そう思って、皆を見ると、3人も、何だか複雑そうな顔をしていた。


「……何っていえねえけど――――…… なんか、気持ち悪ぃよな」


 ルカも、そう言う。ゴウとキースも、眉を顰めている。


 うーん。
 なんだろう。
 
 オレに言わせれば、全部の魔物が怖くて気持ち悪くて、変なので、何も分からない。
 
 うん。困ったな。

 



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