【ドS勇者vsオレ】オレ様勇者に執着&溺愛されてるけど、ドSだから大変。

悠里

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第2章

「夢の中で」

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 うー。
 ――――……だるい。
 眠い。頭痛い。


 ここ、どこ。
 ――――……白い。

 白すぎる。

 オレは。
 何だかものすごく、白い光の中で、浮いてた。

 眩しすぎる位に白い、光の中に。



 この光、知ってる。
 ――――……あの時だ。


 オレが、ルカの世界に飛んだ時に、テレビから出た、あの光。

 真っ白で眩しくて、オレを包み込んだ、光。

 何か――――……声が、する。



「だからこいつは、こっちじゃないって!!」
「え、どーいうこと?」

「こいつは向こうにそのまま居て、あいつが戻る筈だったんじゃん!」
「え? そうなの? それじゃバランスおかしいじゃん。こっちの世界に来る奴は誰だったんだよ」
「動物にしただろ!」
「あれ、そうだっけー?? あれでも、こいつ、動物の気配しねえ? ……あれ? 良く分かんなくなってきちゃった」
「あ、やっば! 勇者の攻撃、もう終わりそうじゃ――――……うわあ!」
「ああああ!!」


 変なやりとりの中。オレは、不意に、ひゅー、と落ちた。
 落ちてる間も。なんか、声が、かすかに、聞こえてくる。


「……落ちちゃったよ。どーする?」
「――――……あそこに出て、拾うのもおかしいし…… ちょっと整理して考えてからにしようぜ。しばらくなら大丈夫だろ」

「……あいつ戦いのど真ん中に落ちたけど……さすがに死んだらちょっと……」
「勇者居るし、大丈夫だろ」
「そっか」




 ――――……何だ。あの、声。
 声だけが、聞こえてたけど――――…… 消えた。



 いや、これ――――……今聞いた言葉じゃない。


 ああ……あれだ、白い光に包まれた時。
 ――――……聞こえてた言葉だ。


 今の今迄、すっかり、忘れてた。



 なんだろ、これ。 
 どういう意味なんだろう。全然、意味、分かんない。



 …… 夢――――…………かなあ……?
 うん。夢だな――――……。


 変な夢。

 何か、いやな夢。


 ここ、どこ――――……。
 ルカは……?


 こんな、白いとこ、居たくない。


 ルカは――――……?



 ルカは。

 ――――……ルカに、会いたい。






「……ル、カ――――……」


 声が、出たような気がした、瞬間。
 白い光がさあっと、消えた。




「…ラ。 ソラ……」


 あったかい手が頬に触れて、めちゃくちゃブニブニ摘ままれている。


「あっは、ソラ、ほっぺ柔らかすぎー。触らせてー」
「絶対ダメだ」

「なによう、いいじゃないほっぺくらい! ケチ!」
「ダメ」


 オレの頬はブニブニと摘ままれて、何ならそのまま持ち上げられそうな勢いで――――……。


「いったい、なー! もう!!」

 がば、と起き上がった瞬間。

 目の前にあったらしい、ルカの額に激突した。


「痛った!!!」
「……ってえ、この、石頭………」


 頬は離されたけど、そんなのよりおでこが痛すぎる。
 ルカの低い声も響いてて、ちょっと怖い。


「うううーー……」

 痛すぎて、頭を押さえて俯いてると。
 多分に苦笑いを含んだ声で、しょうがねえな、とルカが言う。

「ソラ見せろ」

 顎を掴まれて顔を上げさせられる。前髪を少し避けられて、押さえていた所を見られる。

「赤くなってるし」

 ぷ、と笑って、ルカが立ち上がる。

「キース、腫れてんの、どーにかしてやって」

 クックッと笑いながらキースを呼んで、ルカが少し退く。


「ルカ、石頭だよねえ。可哀想に」

 キースも苦笑いを浮かべながらそんな事を言って、オレの前に立つと。
 オレの額に、触れた。

 ズキズキしてた額から、すうっと痛みが消えていく。

「わー……キースありがとうー」
「どういたしまして」

 クスクスとキースが笑う。

「サンキュー、キース」

 言いながら、隣にルカが座ってくる。

 ……だから、何でルカがお礼を言うんだってば。


「ソラ、何の夢見てた?」
「え? 夢?」

「人の膝の上で、うーんうーんってすげえ唸りだして、すげえしかめっ面してるから、起こしてやったんだよ」

「? 夢なんか、見てないけど……?」

 全然何も覚えてないですが。


「じゃあ酔っ払ってうなされてただけか」
「ん」


 またくしゃくしゃと頭を撫でられる。
 優しい、触り方。



 何か。――――……夢は覚えてないけど。
 少し不安で目が覚めた気がする。



 なんだか、ルカの、その手に、安心する。





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