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第2章

「こんなの?」

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 ルカは相当町の皆の人気者になってしまったのか、全然こっちには戻ってこず、色んな人に囲まれてずっと楽しそうに話していた。

 目をハートにしてるっぽい女の子達も、ルカを取り巻いている。

 オレはルカ以外の3人と話しながら、お酒とご飯を楽しんでいた。

「あー、美味しいねえ」

 しみじみ言ったオレのそのセリフに、あれ?という顔で皆がオレを見た。

「ソラ、それ2杯目だよね?」
「うん、そうだよ~?」

「なんか、呂律が……やばくねーか?」
「え、もしかしてソラ、すごく弱い?」

 リアとゴウがそんな風に言って、キースが苦笑いしてるのが見える。

 その時不意に降ってきた声。


「こら! そこまで。もう飲むな、ソラ」


 あ、この声は。
 ……自由すぎ勇者だ。


「あ、ルカ。この酒、超美味いよー?」

 あっはっは。
 楽しいなー。

 結婚式って、どこの世界でも、やっぱりめでたいよねー。
 なんか幸せなオーラに、こっちまで、幸せを貰える気がする。


 そこでこんなに美味しいお酒が飲めるなんて。
 あー楽しい。


「ルカも飲むなら注いであげるよー」
「……誰だ、ソラに飲ませたの」

 ジロ、とルカが、3人を睨む。皆、鼻歌でも歌いそうな顔で、そっぽ向いてる。

「昨夜のソラ、見てただろーが。絶対こいつ弱いんだから」
「弱くないし。取んないでよ、お酒」

 奪われたコップを、さっと取り返す。


「あ、こら、お前ふざけんな、もう飲むな」
「やだよう、何で取るんだよう」

 ひどいよーと思いながら、じっとルカを見つめると。

「――――……」

 ルカがぴた、と止まって、オレを見つめて。
 それから、はーーーと、ため息をついた。


「…………何でオレはこんなのが……」
「こんなの……こんなのってオレの事? オレが何なんだよー!」

 めちゃくちゃ不愉快な言い方しやがってー! 
 
 ルカが苦笑いでオレの頬に触れた。

「絡むな、酔っ払い。顔熱い。マジでこいつ、何杯飲んだ?」
「1杯ちょっと……じゃないかなあ……」

 リアが、嫌そうに答えてるのが聞こえる。

「はあ? 1杯? な訳ねえだろ」
「だってソラはミウを抱えてご飯あげながらだったし、自分で注いでないし。あたしがおかわり注いであげただけだと思うんだよね」

「で、まだ2杯目はこれくらい残ってるって事か?」
「うん、多分、そういう事……」

 ルカのため息が、すぐ近くで聞こえる。

「ソラ、1杯とちょっとでそんな酔うなよ」
「オレが1杯でそんな酔う訳ないじゃん、全然今平気だし、美味しいし」

 ルカから取り返してた酒を、少しまた飲んだら。


「お前それ以上飲んだら――――……」
「飲んだら…………??」

「……抱くから」

 言われた言葉に、目が点になってしまう。
 仲間の前でとんでもない事言っといて、ルカは平気な顔でオレを見つめ返す。

「えっ、何で?」
「めちゃくちゃ汗かかせて、体から吐き出させる」

「……うわーん、変態ー!!」

「はー?」

 ルカの頭上に、かっちーん!という音が見えた。
 あ。ちょっと怒ってる。


「つーか、お前はまだこれからどっか行くかもしれねーっつーのに、何でそんなご機嫌になって……」

 ぐい、と頬を包まれて、引き寄せられる。

「顔、あっついぞ、馬鹿ソラ!」
「熱くないもん、普通だし……っ」

「オレがどんだけ普通のお前触ってると思ってんだよ、熱いわ!」
「熱くないってばーー!!」


 オレとルカのやり取りを見ていた3人が、呆れたように笑い出した。


「ソラはアホだし、ルカは振り回されてるし、いちゃついてるようにしか見えねえな」

 ゴウがめちゃくちゃ笑いながらそう言ってくる。


「アホじゃないし!! いちゃついてなんかないし!」
「オレはこんなのに振り回されてなんか」

「あ、またこんなのって言ったし!!」
「……だってお前、こんなのって感じだろ」

「どんな感じだよっ!! もう!!  オレがこんなのだったら、何なんだよっ」
「――――……だから、何でオレは、こんなのが……」

「こんなのが、なんだよっ」

 そこで、ルカが、黙ってしまった。








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